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心とからだの四方山話
第6回 校長先生のうつ病

2年ほど前の6月中旬頃一人の中年の男性が、沈みこんだ表情をして私の外来診察室に現れた。「2週間ほど前 より、体がだるく、食欲がなくなり、それから夜間眠れなくなりました。仕事がうまくいかなくなって、仕事をしている間いらいらして、その上一人でいると落 ち込んでしまって、なにもする気が起らなくなりました。また、家では、外へ出て行くのも大儀で、じっと自分の部屋に閉じこもっていることが多くなりまし た」。日常生活では、学校から帰宅するのは7時か、8時前後でそれほど遅い帰宅ではなさそうだが、手帳を見せてもらうと、驚いたことに土曜日、日曜日は何 かの集まりへの出席でほとんど空白は埋まっていた。勤務の過密さと有効な余暇が取れていないことから発症したうつ病と判断された。

直ちに、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬などで治療を開始したが、治療開始1カ月が経過しても症状にはあまり改 善傾向が見られず、むしろ「仕事に対する意欲がわかない、仕事全体に対する不安感が強い、新たに問題が起きると対応できない、やる気が出てこない」などの 訴えが続き、さらに両手、両下肢のしびれなどの身体症状も伴うようになり、私はしばらくの間勤務を休むよう勧めた。しかし、「立場上(小学校の校長先生) 仕事から離れたいが、離れられない」とのことで、なおしばらく勤務を続けることになったが、夏休みで生徒が学校に来なくなった7月下旬から自宅療養を始め ることになった。

自宅療養開始後は、症状も順調に回復し始め、治療開始2カ月半が経過した9月初旬には、食欲も良好となり、 沈み込みもなくなり、テレビや新聞にも興味を持てるようになり、気晴らしの農作業もできるようになった。そして、3カ月後の10月下旬には立派に復職を果 たし、治療開始1年5カ月後には薬物投与も中止したが、その後うつ病の再発は全く見られていない。

うつ病は再発しやすい病気ではあるが、時間をかけて十分な治療を行い、そして、治療後の日常生活、すなは ち、ライフスタイルを改善し、仕事上では残業などを極力ひかえ、また土曜日、日曜日には有効なゆったりした余暇を過ごすように心がければ、再発の頻度はか なり減少するものと考えられる。その後、校長先生が土曜日、日曜日のお誘いは全てお断りしていることは言うまでもない。

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