小畑精武(『現代の理論』編集委員)日教組といえば学校の教職員、自治労といえば県市町村の地方公務員の組合と思われている。だが組合の大半を しめる正規公務員は年々縮小し、未組織状態にある臨時職員、非常勤職員や民間委託労働者が拡大して、組合組織率は低下している。皮肉なことにスト権がある 民間委託労働者の方が賃金・労働条件は劣悪だ。有期雇用の雇い止め、競争入札による解雇の不安、賃金は臨時職員平均月額が11万6000円、ホームヘル パーは19万円に届かず、公立病院医療事務では年収200万円以下が80%ともいわれ、大きな格差が公共サービスの場に横たわっている。
この格差を放置するとどういうことが起こってくるのだろうか?
第一に、同じ仕事をしているのに不当に大きな賃金格差があれば、それは「不公平」ではないか。教育を含めて、本来社会的正義を貫くべき公共の場で「社会的不公平」がまかりとおることになると世の中はどうなるのか。
第二に、いつ解雇されるかわからない雇用不安、経験を積んだころに“雇い止め”。結婚できない、家族生活が できない貧困賃金。人材の流出、入れ替わりの激しい職場、経験不足…。すでに介護労働は社会問題化している。介護だけではない、保育、図書館と公共サービ スが崩れる危険が迫っている。
安心して働くことができない、経験が生かされない職場でよいサービスは期待できないし、よりよいサービスを 強要することはできない。公共サービスの質の低下が問題になってくる。その責任は自治体が取らねばならない。2年前に痛ましいプール死亡事故があった埼玉 県ふじみ野市では委託を出す側である自治体の責任が問われ、元市教委体育課長と係長に禁固刑の有罪判決が出された。
第三に、職場が雇用形態によって分断され仲間意識の形成が困難になっている。複数職員がかかわる仕事では チームワークがポイントになるが、雇用格差を抱えたまま良いチームワークは期待できない。本来対等な横の関係であるべきなのに、「身分」による上下関係に 転化している。発言をしたくても「身分をわきまえる」と発言できない。保育園でも担任まで持たされているのに、職員会議に出席できないところもある。
第四に、正規公務員の「身分意識」がこうした格差に目をつぶり、格差を支え拡大している壁となっている。 「非正規雇用」の労働者とは「身分」が違うと思っている正規公務員は少なくない。「臨時職員は臨時雇用だから雇い止めにあっても仕方ない」と、見ないふり をするか、あきらめている。非正規雇用は正規雇用の調整弁となってきた。都合のいい時に雇用し、不要なときには簡単に首を切られ、生身の人間として評価さ れず、道具のように使い捨てられていく。日雇い派遣はその象徴である。
こうしたところから、非正規雇用の労働者には社会への反感が蓄積される。秋葉原で起きた殺人事件の背景にも 指摘されている。結局、雇用の格差問題の根は1つだと思う。グローバル化と競争時代に新しい衣を被ってはいるが「分断・差別」という古くからの“支配原則 ”は今も生き続けている。これに対して「公正・連帯」を対置することができるだろうか。
(私は1969年から東京・江戸川区で地区労オルグ、84年には地域のパートはじめ誰でも入れるコミュニティユニオン・江戸川ユニオンを結成し、92年からは自治労オルグとして民間委託労働者の組合づくりをすすめ、官民の組合運動を経験してきた。)
|
|
|






















