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格差・不安定社会を越える
第6回 公正・連帯とディーセントワーク
小畑精武(『現代の理論』編集委員)

分断・支配されている現代の雇用構造のなかで、どのように「公正・連帯」を基本に格差社会を超えていくのか。

連合の評価委員会(03年)は、「就業形態が多様化するなかで、正社員の幻想となりつつある既得権にしがみ つこうとしても、組織を縮小させるばかりであり、自分の首を自分で絞めるようなものだ…多様性を包摂できない組織は滅ぶ運命にある」とした。これを受けて 連合は、07年から「非正規労働センター」を設置し、「賃金、労働条件の改善とネットワークづくり」にとりくんでいる。

日本の労働組合の組織率は18%。これに対しアメリカは13%と低い。だがオバマ氏が民主党大統領候補に選 出されたように、労働組合運動でも白人・男性中心の運動から多様なマイノリティ・女性が参画する運動へ変化がみられる。とくに無権利・低賃金の移民労働者 が元気だ。私は06年にデトロイト、シカゴを訪問し、今春にはサンフランシスコ、ロサンゼルスを訪問したが、こうした新しい息吹を感じることができた。 06年の5月1日には合衆国の主な都市で300万人のラテン系労働者が「人間の尊厳、社会正義」を掲げてデモ行進、メーデーの復活(*)といわれる高揚を つくりだした。ビジネス・ユニオニズムといわれた組合員の利益中心・既得権擁護の運動から、リビング・ウェィジ(生活賃金)条例運動のように、貧困をなく す課題にとりくむ社会運動ユニオニズムが展開されている。

自治労では地域公共サービス労働者の総結集を掲げ、「身分」にかかわらず「官・民・第3セクターの公共サー ビス労働者が対等な立場で参加する」新しい質の複合的産別組織をめざしている。これまでに約十万人の臨時・非常勤、委託、地場中小労働者が自治労に結集し ている。さらに、雇用や賃金格差に対する同1価値労働・同1賃金、均等待遇、雇用安定と生活できる賃金を確保する運動をすすめILO(国際労働機関)84 号条約(公契約における労働条項)の批准と公契約条例制定をめざしている。

10月7日、全世界でILOのディーセントワーク世界行動デーが展開された。この「ディーセントワーク」は 「公正・連帯」のキーワードになる。「ディーセントワーク」は「働き甲斐のある人間らしい仕事」とILOは定義づけている。非正規雇用の労働者はワーキン グ・プアの崖淵に立たされている。正規雇用も過労死、メンタル、不払い残業など労働の尊厳が壊され、世界的にも児童労働や労働組合権利の侵害、女性への差 別、そして貧困が広がるなか、「ディーセントワーク」の確立はグローバル化のもとで全世界労働者の共通課題になっている。正規も非正規雇用も、先進諸国も 発展途上国労働者も共に連帯してこの共通課題にとりくみ、運動展開することが「公正・連帯」の具体化ではなかろうか。

労働基準法の第一条にも「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなけ ればならない」と明記されている。だが今日の非正規雇用問題は「労働者を人間としてみなさない。人件費として扱わず物件費として扱う」ところにある。 ILOは有名な「労働は商品ではない」というフィラデルフィア宣言(1944年)を出しているが、今日あらためて「労働者は物ではない!奴隷ではない!い のちある人間として尊重せよ!」が格差問題の中で問われている。この問題は「労働の尊厳」に関する教育問題につながってゆく(次回は「労働教育につい て」)。

(*)
1886年5月1日にシカゴの労働者が8時間労働 制を求めて示威運動を展開し、警察の弾圧下で多数の死傷者が出た。その後第2インターナショナルによって5月1日は国際的労働者の連帯デーとなったが、ア メリカは参加せず9月の第1月曜日をレイバーデーとして祝日にしている。

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