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格差・不安定社会を越える
第7回 労働の尊厳と労働教育
小畑精武(『現代の理論』編集委員)

先生の研修が盛んらしい。この夏テレビで若い小学校の先生むけに「株式」の研修を民間会社がやっていた。ハイリスク、ハイリターンというが、どれだけハイリスクが教えられているか疑問だ。今秋の大恐慌の再来ともいえる事態をどう説明するのか…。

もう2〜30年も前の話だが、私が地区労オルグの時、郵便局を社会科見学していた小学生の一団に出くわし た。その時私は全逓の組合事務室の前にいたのだが、先生に引率された一団はそのまま通り過ぎて行った。小学生は郵便物の集配、貯金、保険という郵便局の機 能について学んだのだろう。だが、先生は組合事務所の前で労働組合について教えることはなかった。

NHK調査によると労働組合をつくること(団結権)が憲法で定められた国民の権利であることを理解している 人の割合は1973年には39.3%あった。だが2003年は20.3%とほぼ半減している。雇用形態別で調べた別の調査では、団結権に関する認知が平均 30.1%に対してパート・アルバイトは10.1%にすぎなかった。

これまで学校教育でどれだけ「労働の尊厳」「労働者」「労働組合」が、大半は労働者になるはずの、一部は労 働者を使う経営者にもなるはずの生徒たちに教えられてきたか? 最近の若者に聞くと「労働基準法を習ったことはありません」と返ってくる。だから平気で割 増賃金も払わずに残業を命じる経営者、唯々諾々と従う労働者が生まれてくる。労働者を生身の人間としてではなく、利益を生み出すモノとしてしか見ないモラ ルなき経営者が生まれてくる。格差拡大、二極化が深刻化するなかで、ようやくマスコミは「偽装請負」「名ばかり管理職」「ワーキングプア」など「労働」を 取り上げるようになった。

今年3月、国民生活審議会総合企画部会は「我が国における労働関係法令遵守水準の低さの大きな原因の1つと して、学校教育段階で働くことの意味を始め働くことに関する的確な教育が行われていないことが指摘されているところであり、働くことの権利と義務など働く ことに関する教育の充実を通じて若年者の職業意識の形成が重要であると考えられる」と指摘した。厚生労働省は9月に「今後の労働関係法制度をめぐる教育の 在り方に関する研究会」を設け、学校教育、労使団体、国、地方自治体などの場での実効的な教育のあり方について09年1月に報告を出すことになった。

労働に関する教育の重要性が国のレベルにおいてもようやく認識されるようになった。すでに大学や高校で労働 組合との連携による労働教育の試みも始まっている。北海道では道が作成した「働く若者ルールブック」を高校、専門学校に配布した。労働の尊厳を守り、人間 らしい労働の視点に立つ労働教育をどうすすめるのか、学校教育はじめ家庭、地域社会含め実践の場において真剣かつ具体的なとりくみが課題になっている。

日本国憲法の第1条は「天皇」であるが、同じ敗戦国でもイタリア共和国の憲法第1条は「労働に基礎を置く民 主共和国である」と明記されている。「職業に貴賎なし」 一人ひとりの労働をかけがいのないものとし、職業を貴賎なく尊ぶことがあらためて教育の場におい て追求されること、そのことが労働を人間の条件とするうえで必要不可欠に思う。

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