竹信 三恵子(朝日新聞編集委員)子どもたちが格差・不安定社会を生き抜くには、労働法の知識だけでは足りない、知識を生かすために、一緒に権利を行使できる仲間を探し出す「連帯の技術」を身につけることが必要−
。前回はそう書いた。だが、取材を通して学校という世界を垣間見る限り、教職員自身。こうした技術を極めて身につけにくい環境に置かれているように見える。
なぜ「先生の世界」では、連帯の技術が身につきにくいのか。ひとつは、先生たちの多くは学歴社会の勝者であ り、かつ、その勝者になるよう子どもたちを教育することを強く期待されているから、ということがあるかもしれない。こうした競争的な目標設定に、専門職と して学級を任される個人営業主的なありようが拍車をかける。加えて、文部科学省の締め付けに成果主義とくれば、「連帯の技術を」などという方が無理という ものだ。
そんな状態で、「みんなで助け合いましょう」と子どもたちに呼びかけても、いまひとつ実感がない。連帯のノウハウもないのでスローガン倒れになり、鋭い子どもたちに足元を見透かされることにもなりかねない。
こんな状況を打ち破る最初の一歩としては、労組が恒常的な悩みホットラインを設け、働く側から教職員の悩み を支えることが考えられる。管理する側からでなく、同じ目線の人たちに言い分を聞いてもらうだけでも元気が出るが、ましてや解決までこぎつければ、相談者 は「支え合う価値」を実感できる。こうした成功体験は、助け合って権利を守る行動への自身を養う。
労組からしても、働き手が今何に悩んでいるかをすばやくつかむための最高の道具になる。パートや派遣、女 性、若者のユニオンに電話相談を常設していることが多いのは、これらの働き手がばらばらにされていて見えにくく、労組の中で座っているだけでは何が起きて いるかわからなくなってしまうからだ。
もっと個人的な打開策としては、身の回りに施設のアドバイザーグループをつくることがある。子どもへの性教 育に取り組むある医師は、同じ問題に関心のある教員や、自治体職員、カウンセラーなど地域の人々を探し出し、定期的に勉強会を開くことで、異分野の相談相 手を確保していた。こうした場を日常的に持っていることで、行き詰ったとき、勉強会のメンバーに電話一本で意見を聞き助力を得ることができる。協力して、 ベストの解決方法をひねり出せることも多い、と医師は話していた。
こうした場合は、複合的な問題に悩むことの多い教職員にこそ必要だ。そんな場を組織していくことで、支えあいと連帯を声高に叫ぶ前に、こうした身近でささやかな連携づくりにトライしてみることも必要だ。
そうして身につけた知恵で、格差社会に行き惑う子どもたちに、向き合ってやってほしい。
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