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第6回 アルコール依存はどこにでもいる |
飲酒運転撲滅運動のさなか、警察官が、飲酒運転及びひき逃げの容疑で逮捕された。呼気のアルコール検査を拒否し、大分時間が経ってからの検査だったが、それでも血中には高濃度のアルコールが残っていた。
こういうニュースには、たいていの人が、けしからん、警官にあるまじきこと、と反応する。だが、アルコール依存は100万人を越えると推定されている。しかもその予備軍が数倍から10倍もいて、アルコール依存への道をひた走っている現状だ。警察官の中にアルコール依存がいても、少しも不思議ではない。むしろ、必ずいると考えて、上のものは対策を考えるべきだ。現実に、ぼくは何人かの警察官のアルコール依存を治療してきた。
もちろん教員も例外ではない。教頭、校長といった人たちも、ぼくの患者には含まれていた。アルコール依存は日本の大臣にもいたし、ブッシュ前大統領も現在断酒中だが、アルコール依存だ。だれでも罹る可能性がある。しかもなる人の中には、有能な人がけっこういる。アルコール依存にならないのは、酒を受け付けない遺伝子を持った人たちぐらいだ。
セクハラで訴えられ、新聞テレビでニュースになる人も、「あいつは酔っ払うと、だれにでも抱きついてキッスしたがる悪い癖があるからな」と職場で噂されていた人だったりする。
大切なのは、アルコール依存もたくさんの病気の1つで、特別の病気ではないということだ。ただ、断酒が必要で、これが1人ではなかなか難しい。断酒会やAA※のような自助組織の仲間と一緒にやめるのがいい。こっそり1人で、だれにも知られずに治療するというわけにはいかない。警察官の中にアルコール依存がいる、ということがスキャンダルになるような世の中では、職場が病気を隠し、結局は事件になって、世間に現れるということになる。テレビの画面には、毎日何10コマのビールなどアルコール飲料の宣伝が流される。そこでは有名俳優たちが、いかにもうまそうに飲む演技の競争をしている。ほんとうにうまそうに飲む。それを見るたびに、このコマーシャルで、また何人がアルコール依存になったか、と思う。
警官の飲酒ひき逃げ事件のニュースで、飲酒運転者に追突され、過去に子どもを失った母親が、「どう思うか」と意見を聞かれ、「困ったことだが、ただ厳罰で、なくなるとは思えない」と答えていたのが印象的だった。
この警官は、おそらくアルコール依存だ。職場が、それに気がついて、治療を受けさればよかったのだ。そうすれば、事件は防げた。かれの上司が家族を訪ね、本人に酒をやめさせるように、といったそうだ。だが、家族にちょっといわれたぐらいで、酒をやめられるようだったら病気ではない。それくらい分かりそうだと思うが、無理だろうか。
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