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なださんのメンタル・スケッチ
第12回 銀でもいいじゃない

今回の冬季オリンピックでは、日本選手は結局金メダルなしだった。それにくらべ韓国の選手の活躍が目立った。なんと金メダルの数は、中国も追い抜いて6個。銀も6個。

昔だったら、オリンピックは国威発揚の場だったから、中国や韓国の成績と比較して、日本選手のバッシングがおきただろう。だが、今回の反応はそれとは違っていた。

日本選手のなかで、一番金メダルに近いと思われていたのは女子フィギュアスケートの浅田真央選手だが、彼女が結局銀に終わっても、大方の反応は「立派よ。よくやった。銀でもいいじゃない」だった。

以前なら、日本選手はだらしがない、全員、坊主になれ、根性が足らないぞ、などという政治家が出てきただろう。だが、そんな声は全然聞こえてこなかった。

それにメダルにとどかなかった選手も「やれるだけのことをやりました。残念ですが、十分にオリンピックを楽しみました」と実に明るい顔で、テレビカメラに答えていた。

東京オリンピックでマラソン銅メダル、次のオリンピックに金をめざすと宣言したものの、体調を崩しその夢が絶望的になると、有名な「おいしゅうございました」を繰り返す遺書を残して自殺した円谷幸吉の時代など、もう今の人たちには想像できないだろう。次の金メダルのため、上官から「結婚などしている場合か」といわれ、結局は婚約も破棄になり、婚約者が他の男と結婚したことが自殺の原因だという説もある。金メダルがそういうものだった時代もある。

オリンピックの金メダルは、人生で耐えることの多かった多くの日本人にとって、気持ちの解放につながる高揚感を与えてくれた。それが分かっているから、選手に大きなプレッシャーがかかった。メダルを取れないと、まるで罪びとのように、申し訳ないと、わびる気持ちを起こさせた。

だが、大部分の日本人は、今や、自由に自分の人生を生きられるようになった。その結果、オリンピックの金メダルや、日の丸や君が代を必要とするような、アイデンティティー上の問題を抱えなくなった。そして、選手を、責めるよりは逆に慰められるようになったのだ。「銀でいいじゃない」と。

それを見て、日本人も成長したな、と思った。これは、今年の流行語になるのではないか。

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