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私たちのとりくみと考え
政策制度要求と提言
1-2. 教育をめぐる情勢
教育をめぐる情勢
1. 構造改革路線下ですすむ政財界主導の「教育改革」
(1)市場原理・競争と成果主義の教育政策の問題点

今日の行政がすすめる「教育改革」の源流は、71年の中教審答申と84年からの中曽根「教育臨調」にある。その後の小渕〜森内閣下の「教育改革国民会議」を経て、この流れが急速に勢いを増したのが小泉内閣の「経済財政諮問会議」主導の構造改革路線の下での「教育改革」である。
規制改革・民間開放推進会議は、「学校選択の普及促進」「教員評価・学校評価制度の確立」「教育バウチャー構想の実現」などを求めてきた。また、財政制度等審議会は、教育予算について「教育の質の向上を見極めた効率化とメリハリの徹底」を謳い、教員賃金の2.76%縮減や学校統廃合の推進などを求めてきた。そして、「骨太2007」(07年6月19日閣議決定)では、公務員人件費の、「骨太方針2006」で示された歳出削減を上回る削減をめざすとされた。
小泉内閣以降の8年間に及ぶ、競争と成果を第一とした新自由主義による構造改革路線下での教育政策は、公教育に市場原理を導入し、学校へ競争、効率、即効性、数値目標、評価等を求め、子どもたちそして教職員に「競い合わせる」施策に終始している。「規制緩和」「地方分権」を標榜するこの改革は、教育を「官製市場」と位置づけ、「官」から「民」への流れを、学校現場にも加速させている。
構造改革特区では、定通教育を中心に教育産業が参入し、学校設置会社(株式会社)による高校の設立が続き、08年で23校(小1・中1・高校21)、大学も6大学に至っている。「学力低下論」を背景に競争中心の教育に商機を見出した教育産業が進出してきている。受験指導やキャリア教育を請け負ったり、高額な授業料の株式会社立の学校やリポート作成・指導などを行うサポート校(塾産業)が広がっている。96年時点でバブル期と比べて収益を3割近くも落として存続の危機に直面していた受験産業は、「学力低下」をめぐる社会論争の中で復活し、06年には史上最大の収益をあげている。
学校現場では、現業職員や栄養職員の民間委託の動きが急である。また、学校給食の民間委託も各地でおきている。文科省は、08年度から約50億円を投入した「学校支援地域本部」事業で、教職員の負担軽減など教育活動の支援を目的にした学校・家庭・地域の連携活動をめざすとしている。しかし、杉並区「夜スぺ」に代表されるように、教育産業の公教育参入の場となっている状況もある。
教育論より財政論が優先し、効率・即効性を求める民間委託・民営化は、営利や利潤の世界と一線を画すべき公教育のあり方に反するものである。公教育とは、教育の機会均等の理念のもとに、どの地域、場所においても、子どもたちの学びを平等に保障するものでなければならない。
(2)教育再生会議による官邸主導の「教育改革」の流れ
06年10月、安倍内閣のもと「教育再生」と称して設置された「教育再生会議」は、「選択と集中」を謳い文句に、公教育に市場原理・競争主義を持ち込む報告を二度にわたって行ってきた。報告では、「ゆとり教育」の見直しなどをはじめ、「出席停止制度」の活用による厳罰化、教員免許更新制の導入、外部機関による学校評価などを示した。「教育再生会議」は福田内閣に引き継がれ、第三次及び最終報告では、小中一貫校の制度化や飛び級・飛び入学など「6-3-3-4制」の弾力化を示した。
08年2月、「教育再生会議」は、「教育再生懇談会」に衣替えして5月には、英語教育の強化などを盛り込んだ第1次報告を示した。08年11月、麻生内閣は、「教育再生懇談会」の廃止を示したが、政治的な思惑等から継続の必要性を強調し存続するとし、第2次報告をまとめている。
このような「官邸主導」の「教育改革」は、公教育を「機能不全」と決めつけ、官邸側が躍起になって、「具体策」「実現性」を重視した報告に仕上げ、教育関連三法など、文科省の教育施策に大きな影響を与えている。
(3)文科省の義務教育構造改革の流れ
06年文科省は、05年10月の中教審答申「義務教育の構造改革」を受け、「義務教育の充実に国家戦略として取り組む」とし具体的なスケジュールを示した。
インプット(目標設定、基盤整備)としての、学習指導要領、教員養成、財源保障など義務教育の基盤整備は、国の責任であることを示した。そして、プロセスは、市区町村、学校の裁量・自由度を高める分権改革(人事や学級編制に関する権限を市区町村への移譲など)をすすめるとした。アウトカム(教育の結果の検証)は国の責任であるとして、「学力調査などの結果の検証をし、質を保証する」とした。そのため、国と地方の負担により義務教育費が保障される国庫負担制度は堅持し、地方の裁量を広げるとした。
具体的な構造改革としては、義務教育の目標の明確化と制度の弾力化(9年制の義務教育学校の設置、カリキュラム区分の弾力化など)、学習指導要領改訂、全国的な学力調査の実施、幼稚園教育要領の改訂、特別支援教育の推進、教員養成・免許制度の改革、教員評価の改善・充実、多様な人材の学校教育への登用、教育委員会制度改革などを挙げた。
しかし、これらの構造改革は教育現場の実態や山積する教育課題を反映した教育改革とは言えず、教育予算削減の中、教育現場により一層の管理強化、競争主義をもたらしている。
2. 06教育基本法の具体化をめぐる動き
(1)矢継ぎ早な教育関連三法等の「改正」

07年、安倍政権のもと第166回通常国会で教育関連三法等が強行可決され成立した。学習指導要領改訂、教員免許更新制、「新しい職」の導入、教育振興基本計画など教育基本法「改正」、教育関連三法「改正」を受けた具体的な施策が次々と打ち出された。
教育職員免許法では、教員免許更新制を導入し、10年ごとに認定講習を義務化した。附帯決議で更新講習のあり方・講習内容・認定基準・費用負担・研修との関係等、条件整備の必要性が盛り込まれたが、十分な制度検証もされず、08年度の試行に至っている。試行では、多くの問題点があがっており、制度の実施にむけた試行となっていない。更新制度が免許を保有するすべての教職員はもちろん、今後教職にかかわる人材確保の問題も含めて、学校現場に大きな影響を及ぼしている。
地教行法の改正では、教育委員会の責任体制の明確化・国の責任の果たし方について検討され、教育委員会の点検・評価、教育委員の研修・保護者選任の義務化や文科大臣の是正要求・指示、私立学校への助言・援助が盛り込まれた。このことは、上意下達の体制強化につながりかねず、地方分権の流れに逆行するものである。
学校教育法の改正によって、08年4月から「新しい職」が設置され、副校長・主幹教諭・指導教諭制度が導入された。各都道府県・政令市においては、任意設置とされたものの定数や処遇、任用基準については重要な課題である。「新しい職」は、学校現場の管理強化のためではなく、「教員の子どもとむき合う時間の拡充」を目的として設置されたものの管理強化を危惧することは拭えない。5原則(提言30参照)をもとに、協力・協働の学校運営組織の確立にむけて慎重な対応を求めていく必要がある。
(2)「ゆとり教育」見直し論から学習指導要領改訂へ
08年3月、改訂学習指導要領が告示された。今回の改訂では、「ゆとり教育」を象徴した「自ら考える力」が消え、基礎的・基本的な知識・技能の確実な定着、課題の解決に必要な思考力・判断力・表現力を重視したいわゆる「ゆとり教育」見直しへと動いている。総授業時数が増加されるとともに、選択教科や「総合的な学習の時間」を削減し、一部の教科の授業時数が増加された。そして、移行措置として、09年度より小学校の総授業時数が1時間増になることをはじめ、補助教材を準備した上で、算数・数学、理科が前倒しで実施される。小学校では、外国語活動も導入される。
また、06教育基本法第2条「教育の目標」の伝統や文化の尊重、我が国と郷土を愛する態度などが、道徳教育や社会科、音楽、特別活動といった教科等で具体化されている。道徳教育では教科化は見送られたが、道徳の時間が「要」として位置づけられ、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛し」の文言が付加された。音楽では、「『君が代』を歌えるよう指導すること」の『歌えるよう』の文言が追加された。背景には、教育基本法等の「改正」をもとに伝統・文化、公共の精神、規範意識等が、学習指導要領に具体的な形として示され、拘束する方向へと強化されたことがうかがえる。
「総合的な学習の時間」は、既存の教科の枠組みを超えて平和・人権・共生など、現実と切り結んでいくようなテーマを追究し、学ぶことの意味や価値が問い直されていく学習であり、主権者を育てる大切な場として位置づけてきた。学習指導要領(98年版)はそのための「ゆとり」を子どもたちに保障したものである。しかし、この間、十分な検証もされず、充実のための条件整備、支援策も講じられていない。単に授業時数を増やすことは、実効性のあるものとはならず、ますます子どもたちの「ゆとり」は奪われることになり、課題追究型の学習は展開しにくい状況になる。教職員の定数増等により、子どもとむき合える時間の確保、主体的な教材研究ができる条件整備などは、喫緊の課題である。
子どもたちにとっての「学び」は、市民社会の中で多くの人々とともに生き、一人ひとりが社会を主体的に築いていく力となる。公教育が担う役割は重要であり、教育内容が「価値の一元化」「国家主義」的なものへと公教育を根本から変えるものであってはならない。子どもたちのゆたかな学び、教職員が主体的に子ども・地域の実態に即したカリキュラムづくりができるよう保障され、それらの条件・環境整備など学校現場の支援こそ、教育行政が責任を持ってすすめなければならない。
(3)「全国学力・学習状況調査」の実施をめぐって
文科省は、「学力低下」「ゆとり教育批判」を受け、07年・08年と「全国学力・学習状況調査」を実施した。その背景には、PISA調査の国際順位の低下や「学力低下」「ゆとり教育批判」を受けたことが、大きな理由としてあげられる。また、経済のグローバル化に連動した国際競争力の激化に伴う教育への期待や市場原理・競争主義による施策を教育現場に持ち込み、競争を煽ることによって「学力向上」を期待する動きもある。文科省は、序列・競争を煽るものではなく、教育条件整備・改善につなげるものであるとしているが、教育課程の変更、事前対策等の問題が生じるなど、学校現場に混乱をもたらした。また、調査結果の開示をめぐって、自治体では教育委員会の主体性や独立性を揺るがし、序列・競争をさらに煽ることが懸念されるような事態が生じている。
(4)削減される教育予算
「義務教育は、これを無償とする」(憲法26条)は、教育の土台である義務教育段階での格差はあってはならないということを意味しており、その重要な一端を担ってきたのが義務教育費国庫負担制度である。この制度は、地方自治体の財政状態に左右されずに、教職員を安定的に確保し、全国的な教育条件や水準維持につながる、まさに、義務教育の根幹ともいえるものである。しかし、小泉内閣の「三位一体」改革のあおりをうけ、国の負担が2分の1から3分の1へ変更された。これにより、地方自治体の負担が2分の1から3分の2に変わり、その財源は自治体毎の税収と地方交付税で賄われている。税収額が都会と地方で大きな差がある実態、そして、地方交付税が減少傾向にあることから、この制度の根幹維持と2分の1への復元は喫緊の課題である。地方の財政状態如何で、地方間での教育格差はあってはならず、教育の機会均等と平等は保障されなければならない。
日本の公教育支出の、対GDP比、一般政府総支出比はいずれもOECD平均を大きく下回り、教育費の保護者負担は増加している。日教組の学級担任アンケートによれば、家庭の経済力の格差が子どもの学力格差や進路に影響を及ぼしていると「思う」教職員は、全体の8割以上にのぼっている。
家庭の所得格差が、子どもたちの学力まで影響していることから、教育の機会均等と水準維持のために、就学援助の一層の拡充が必要である。学校間格差、地域間格差の解消のためにも、義務教育費国庫負担制度の維持と2分の1負担の復元、高校・大学での奨学金制度の充実と拡充が喫緊の課題である。
また、国連社会権規約委員会のいう「中等教育・高等教育の漸進的な無償化」を文科省・政府に迫っていくことも必要である。97%にも及ぶ高校進学率、50%を超えた大学進学率と大学全入時代(全大学の定員数と受験者数が同数となる)を間近に控えているにもかかわらず、受験競争は相変わらず過熱しており、塾や予備校に、或いは早い段階から私立学校へと、常に「カネ」がつきまとっている。その一方で、学級費や給食費の捻出まで困難な家庭や、就学援助、高校授業料の減免措置も急増している。また、経済的影響から全世帯数の18.6%、474万人が国民健康保険滞納者となっており、その結果、中学生以下の子どもの「無保険」が33,000人にものぼっている。さらに、金融経済危機の影響による保護者の雇用不安は子どもの生活や就学にも大きく影響し、「子どもの貧困」は深刻な課題である。一方で政府の「教育改革」予算の多くは、小学校から大学にいたるまで学校間格差を助長させている。大学における「21世紀COEプログラム」に象徴される競争的資金配分の施策が、今や高校・義務教育段階まで降りてきている。
また、「教育は未来への先行投資」であることを踏まえ、国・地方を合わせた教育に対する公費支出の数値目標をGDPの6%以上とする(先進諸国の5〜7%に対して日本は3.5%)等、教育予算の根本的な改善をするとともに、教育支出に占める私費負担は是正されなければならない。
08年4月、文科省が公表した「教育振興基本計画」原案には、5年間で25,000人の教員増、10年後までにGDP比5%をめざした教育投資の数値目標が盛り込まれた。しかし、行革推進法の壁、財務省の強い抵抗もあり、7月に閣議決定された「教育振興基本計画」は、財政的保障も数値目標もない本来の「基本計画」とはいえないものとなった。
教育行政の最大の責務は、教育条件の整備にある。子どもたちとじっくり対応できる現場の体制が確保されているのか、子どもたちが受験学力ではなく学ぶ意欲を喚起させるゆとりと豊かさの教育環境を提供しているのか、そのための教育予算の拡充と改善策が求められている。
(5)学校選択制の見直しの動き、適正規模・適正配置を理由にした学校統廃合
学校選択の自由と通学区の拡大・全県1学区が、全国的な広がりをみせてきた。全国での学校選択の導入は、小学校で14.2%、中学校では13.9%(06年文科省調査)である。これらを推しすすめる側に共通するのは、行きたい学校にいける「教育の機会均等と平等の保障」のためという論である。学校は「特色化競争」を強いられ、学校統廃合が加速化し、学校間格差、地域間格差がますます拡大することが問題となっている。しかし、一方で、学校選択制は、「地域と学校や子どもたちとのつながりが薄れる」「通学時の安全確保」など、これまでの学校選択制を見直す自治体の動きがある。
また、地方自治体では、少子化や過疎化で小規模校が急増し、かつてない規模で、公立小学校の統廃合がすすんでいる。教育予算の節減と抑制が背景にあるが、小規模校では教育効果はあがらないという理由を前面に押し出している。地域の唯一の中学校を隣の自治体の中学校に統合し、委託を決めた自治体もある。一方で、小中一貫校は増加の傾向にある。統廃合は、大都市圏も例外ではなく、5年〜15年計画で統廃合にかかわる計画を検討しているところもある。保護者からは、「学校は地域のよりどころだから残してほしい」との声があがっている。
中教審は、08年6月、「学校の適正規模・適正配置のあり方、学校選択制」などについて、09年夏を目途に答申にまとめる方向で検討を始めている。背景には、「教育再生会議」報告の「教育効果を高めるためには、国が望ましい学校規模を示す」「国は統廃合する市町村を支援する」と盛り込まれたことや財政的な効率化をすすめようとする動きがある。
私たちは、学校が地域コミュニティの拠点として存在するよう追求するとともに、町づくりのなかで学校と地域の接点のあり方を模索していくことが必要である。そのためには、地域の実情と子どもたちの実態が反映される学校運営と教育内容が保障されるよう、本来の意味での教育における規制緩和と地方分権の体制が必要である。広がる「学校選択の自由」へのはどめ、検討されている教育バウチャー制度の導入を許さないとりくみ等が必要である。
3. 子ども・教職員をめぐる状況
(1)子どもをめぐる状況
文科省は、07年度の「児童生徒の問題行動等指導上の諸問題に関する調査」を発表した。暴力行為の発生件数は約53,000件と小・中・高校すべての学校種で過去最多の件数、いじめの認知件数は、前年度から約24,000件減ったものの、101,427件と依然として多い。高校での不登校、中途退学者数、児童生徒の自殺者数については減少傾向との報告内容である。しかし、パソコンや携帯電話のメールなどを使った「ネットいじめ」は約1,000件増え、5,899件で全体の6%を占めており、年齢が上がるにつれて広がっている。また、いじめが原因と指摘された「自死」も深刻な問題である。文科省の聞き取り調査では、「感情をコントロールできない」「規範意識が低い」「コミュニケーション能力が足りない」「家庭の教育力の問題」などが挙がっている。
昨今の青少年の犯罪を主な理由に、07年、08年と少年法の一部が「改正」された。「改正」をめぐっては、触法少年(14歳未満)への警察の強制捜査や被害者等審判傍聴規定の新設など、少年法の目的である青少年の立ち直り支援に逆行するものであるとの批判が起こっている。また、「ネットいじめ」や交流サイトをめぐる犯罪などが子どもに与える影響が大きいことから、学校内で携帯電話の持込や使用を禁止する動きもある。
人権を尊重したリテラシー教育こそ喫緊の課題である。規範意識の高揚、徳目教育の徹底、ゼロトレランス方式(寛容性のない方式)で生徒指導上の問題が解決するのか、また、進路指導の充実等で高校中退やフリーター、ニートの問題が解消するのか疑問である。
今日の教育制度、教育内容が子ども・青年たちを追い込んではいないかの根源的な問いなしに、対処療法的な施策のみが先行している現実がある。学校は社会の有りようと無関係ではない。例えば、子どもたちの人間関係の希薄化やコミュニケーション能力の欠如は、今の大人社会の反映ではないのか。市場原理下の競争社会での「勝ち組」「負け組」の構造が、教育の世界にも及んではいないのか。格差社会のなかで、子どもたちは二極化している。「競い合い」を標榜する教育施策と、受験競争が支配的な教育環境の下で、子どもたちは追い込まれ、追い立てられている。
(2)教職員をめぐる状況
今、教育現場では、市場原理・競争主義、効率主義、数値目標、民間委託・民営化等の動きが急であり、公教育のあり方が根本から問われている。私たちがめざしてきた「ゆとりと豊かさ」の教育の危機である。こうした状況下、教職員はますます多忙化し、心身の健康被害がさらに悪化している。精神的な問題を抱えて休職する教職員は増え続け、1997年には1,609人だったが、06年には4,675人に上っている。(文科省調査)08年4月の改正労働安全衛生法の完全実施で、すべての学校において面接指導等の実施を義務付けられたことから、メンタルヘルス対策を含めた労働安全衛生体制の整備とともに、超勤・過重労働の解消をすすめることが必要である。
公務員バッシング、教職員攻撃が続く中、教職員の身分・賃金に対する「狙い撃ち」が顕著である。とりわけ、「官から民へ」の大合唱は、現業職員等の少数職種がその対象になっている傾向が顕著である。学校は教職員の協力・協働によって成り立つものであり、それぞれの専門性が尊重されるとりくみを運動の基調に据えていかなければならない。
また、深刻化する地方財政の逼迫を理由に自治体の一方的な独自賃金カットが実施されている。今後、急速な景気の落ち込みや国際金融危機に伴う大幅な地方交付税の減額なども危惧される。地方財政確立にむけたとりくみとともに、労使が十分な交渉・協議を通じて、自立的に勤務労働条件を決定するしくみを強く求めていかなければならない。
08年6月、国家公務員制度改革基本法が可決・成立した。その内容に「自律的労使関係の措置」が盛り込まれた。労働者代表、使用者代表、学識経験者による「労使関係制度検討委員会」が発足し、地方公務員を含むすべての公務員の労働基本権のあり方について検討がすすめられている。労働協約締結権が実現すれば、人事院勧告によって決まってきた公務員の給与などの勤務労働条件が労使交渉の対象となる。
08年11月、CEART(ILO/ユネスコ教職員勧告適用合同専門家委員会)は、文科省と教育委員会が関連のある事項について、問題に応じた協議と交渉をより強力に行えるしくみを制度化する措置をすすめるべきとする報告・勧告を行った。協約締結権の付与を中心とする団体交渉制度と教育政策全般に関わる労使協議制の構築が急務である。
また、私たちは、受験学力に矮小化されない一人ひとりの子どもの「ゆたかな学び」を保障するため、豊富な教育実践とその蓄積を持つ私たちの側からの教育改革案を発信していく必要がある。そのために、平和・人権・環境・共生の教育を基本とした教育現場の実態に則したカリキュラムづくり、協力・協働を基本とした学校運営組織の見直し等を組織的に検討し、その課題と成果を共有していく体制の確立が必要である。
| 政策制度要求と提言(2009・2010年度): PDF形式 / 4.3MB / A4・74ページ |
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