HOME
私たちのとりくみと考え
政策制度要求と提言
2-3. 後期中等教育・高等教育の改革と政策
3. 後期中等教育・高等教育の改革と政策

高校入試・学区・中高一貫教育など高校改革

「規制緩和」などの名目で高校通学区規定が削除された結果、「学校選択の拡大」などを理由に03年の東京都・和歌山県に始まった学区の撤廃は08年現在20都県に及んでいる。学区撤廃は学校間の競争を助長し、効率重視の「適正規模」などを理由に、競争を通した高校再編が長期的な計画もなくすすむとともに、全県1学区入試により選抜が強化され受験生の多数集まる高校と、そうでない高校の二極化とともに「特色化・個性化」の名のもとに高校の種別化がすすんでいる。地方においては地元から通える高校がなくなり、遠隔地の高校への通学にともなう定期代など保護者負担が増加する傾向にある。子どもたちが高校教育を受ける権利が、保護者の経済力によって左右されるようになってきている。
一方、高校統廃合に対峙して、地域にねざし、子どもたちが地域で高校教育を受ける権利を保障し「地域を育てる人間」を育む地域合同総合制の理念にもとづく高校づくりの実践もすすんでいる。とりわけ、97%を超える子どもたちが高校進学をする時代に、連携型中高一貫教育なども活用した、実質的に高校入試のない、ともに学ぶインクルーシブな高校づくりが求められる。また、高校教育の無償化がはかられるべきである。
改訂される高校学習指導要領に対して日教組は、高校教育の内実として学校教育法にも定める「健全な批判力を養う」という高校教育の目標実現のため、また民主社会の主権者育成という観点から、市民教育として共通に学ぶ「普通職業教育」を、高校カリキュラム改革研究委員会の中間報告『競争から関係へ〜社会をつくりかえる主権者教育〜』で提起した。連合のすすめる労働者の権利を学ぶ「労働教育」のとりくみと連携し、具体的実践をすすめる必要がある。
今日、競争中心の教育の矛盾は定時制・通信制教育に集中してきている。ひきこもりや不登校だった子ども、心身の不調を抱える子どもたちの居場所としての役割を果たしている。また外国にルーツをもつ子どもたちにとっても学びの場となっている。このような大きな課題を有する定通教育が三位一体改革の影響を受け、夜食費・教科書給与費・修学奨励費が交付税化され、各県ごとの措置とされた結果、措置が打ち切られるなど、定時制・通信制での学びを保障するための条件整備が揺らいでおり大きな課題である。
職業教育
厚生労働省は、『労働経済白書−働きがいのある社会の実現に向けて−』(08年7月)の中で、「非正規労働者が労働者の仕事の満足感を長期的に低下させている」「成果主義が一部意欲を高める反面、処遇賃金に満足できない者も出ている」とし、労働市場の流動化に対して一石を投じたことは注目に値する。また国民生活審議会は「生活安心プロジェクト」(08年3月)で「学校教育段階で働くことの意味を始め働くことに関する的確な教育が行われていない」とし、「内閣府、厚生労働省、経済産業省、文部科学省等関係府省庁の連携の下に、学校教育段階から、社会に出てからの教育を含め、働くことの意味や労働関係法令、働くことの権利と義務など働くことに関する教育の充実等のためのとりくみをすすめることが必要である。」と指摘した。これらを受け、厚労省は、「今後の労働関係法制度をめぐる教育の在り方に関する研究会」を08年8月に発足、実効的教育の提示にとりくんでいる。
一方で文科省は、経済財政諮問会議(07年11月)の要請にもとづき、「若年者雇用対策」に関する評価書を公表した(08年10月)。その中で「学校教育を中心に、若者が適切な勤労観、職業観や職業に関する知識・技能を身に付け、明確な目的意識を持って就職できる資質をはぐくむことが重要な課題」であるとしている。このため「各学校段階を通じた体系的なキャリア教育・職業教育の推進」「社会科や特別活動など教育活動全体を通じて必要な指導が行われるよう」「中学校における職場体験の実施や専門高校におけるものづくり分野等の専門的職業人の育成」などの職業技術教育にとりくんでいくとしているが、働くことの権利教育に関しては各省庁との合意にむけてとりくんでいるとは言い難い。
労働者の権利については、神奈川高教組の『もっと素敵にWork&Life』(公人社93年5月:神奈川高教組WORK&LIFE編集委員会)のとりくみや、各県教組の働きかけなどによる行政からの啓発「働く若者のハンドブック」(大阪府毎年10月)や、「これから社会へ羽ばたく若者のための働くルールブック」(三重県08年1月)のとりくみがある。
日教組は高校カリキュラム改革研究委員会において、生活者・労働者として、「社会をつくりかえていく力」を育み、民主社会の主権者としての市民を育む「普通職業教育」を提唱する中間報告『競争から関係へ−社会をつくりかえる主権者教育−』を発表した(08年3 月)。
ものづくり教育
「ものづくり」は、誰もが等しくもっている想像力を養う意味でも、大きな可能性を持つ。また、障害の有無にかかわず誰もが参加できるものづくり教育を通して社会参画・社会認識を深めることは、すべての子どもにとって職業観・労働観を身につけさせる面でも意義がある。
日教組は、「ものづくり教育」に関わる指導要領の分析や、全国教育研究集会で発表された教育実践の掘り起こしを通して、カリキュラム開発にも力を入れてきた。その具体化として、連合・JAM等とも連携して定期的に協議の場を持ち、教育面での共闘など議論と実践を深めている。「ものづくり教育シンポジウム」東大阪市(04年2月)につづき川崎市でシンポジウム?(08年2月)を共催してきた。これらの報告集を活用し、さらに実践を深めていく必要がある。
高等教育改革
国立大学も競争的改革がすすめられた。「骨太方針2002」では、大学改革の目的は大学教職員を競争的環境に置くことで能力主義を徹底し、大学の国際競争力を高めることが「人間力戦略」の人材育成と述べている。04年には国立大学は法人化され、国立大学運営の基礎である運営費交付金は、04年の法人化後、毎年効率化係数として1%、病院部門の経営改善係数として2%削減が打ち出され、この4年間で計602億円が削減された。一方で競争的資金や外部資金を集められる大学とそうでない大学との格差が生じ、地域社会の知識・文化の拠点としての役割を担っている地方国立大学は存立を危うくされかねない。
多くの大学では、教職員の退職不補充など人件費の抑制も進行する中で教育及び研究の基盤的経費にも事欠いており、そのため教育・研究の水準維持すら困難となっているとの報告もあらわれている。また各大学では不足分を授業料収入に依存することが危惧され、保護者の教育費負担の増大が進行しかねない。
日本における高等教育への公費支出がGDP比でOECD加盟国の最低水準にあることは周知の事実であり、私学への依存が大きいことも含め私費負担の比率はOECD諸国では下から二番目となっている。さらなる運営費交付金の減額はそのまま教育及び研究の質の低下に繋がりかねない。基盤的経費である運営費交付金の充実が必要である。
私学教育の振興
私立学校に通学する生徒は、全高校生の約3割に達しており、公教育を担う私立高校に対する国の責任は極めて重い。高校への進学率が全入に近い現状にもかかわらず、例えば、私立高校の授業料は公立高校の2.9倍となっており、公私格差の是正、保護者負担の軽減は、急務である。高等教育に学ぶ学生の73.7%を担う私立大学にあっては、学生1人当たりの国の教育費負担は、国立大学の9分の1であることを見ても、国の助成拡充は優先的に講じられなければならない施策である。国会では、私学に対する国庫補助及び交付税による財源措置の拡充について、1975年7月1 日に参議院文教委員会の「私立学校振興助成法案」審議で、「私立大学に対する国の補助は2分の1以内となっているが、できるだけ速やかに2分の1とするよう務めること」との附帯決議が付された。しかし、未だに実現に到っていない。
私立学校には、教職員定数改善計画のような教育計画が存在しない。そのため、専任率は、国公立に比べ全国平均で32%下回っている。専任率の低さは、教職員の肉体的、精神的な疾患を生み出している。学校の施設・設備の拡充、教職員定数の確保や教育内容の充実など「ゆたかな私学教育」の実施のため、公教育を担う私学に対する国の責任を法的に整備することが必要である。

| 政策制度要求と提言(2009・2010年度): PDF形式 / 4.3MB / A4・74ページ |
![]()
![]() |
![]() |
![]() |



































