山下くに子のこの1枚

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元FM横浜アナウンサー。小学館ビッグコミック『CD探検隊』連載中の『山下くに子』がお薦めするバラエティに富んだ名盤の数々をご紹介します!

「手紙」につながるセレンデピティ

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タイトル
樋口了一
「ベストコレクション~あの頃の僕がいるなら~」
  発売日: 2006/11/15 品番:TOCT-26139  税込:2500円
2009年10月1日

yamashita10.jpg樋口了一、といってもすぐにピンと来ないかもしれませんが、介護される親の気持ちを歌って、今話題の人…と言えば、「あ!」と思い当たるかもしれません。ある日メールで舞い込んだ作者不詳のポルトガル語の詩に共感し、メロディーをつけたという「手紙~親愛なる子供たちへ~」。感動が感動を呼び、すでに10万枚を越えるヒットになっているそうです。

この名曲のせいで話題が「手紙」に集中しがちなのですが、彼は、他にもいい歌をたくさん書いている人です。デビューは93年、多くのアーティストに楽曲提供しながら自身の音楽活動を続けていますが、「生きる」「笑う」「明日」をテーマにしたものが多く、じんわり心に響く名作が少なくありません。石川さゆりがカバーしている「朝花」もそのひとつ。人間の生を感じさせます。

自然科学には、セレンデピティという、偶然のひらめきを指す言葉があるのですが、これは「たまたまひらめく」のではなく、いつも意識を向けているから、ちょっとした違いやきっかけに気づくことができる、という意味に使われています。研究者などが大発見をしたとき「たまたまですよ…」と笑うのは、日ごろの緻密な意識やベースとなる努力があるから、ひらめくことができる、そういうことなんです。

彼が1通の外国語メールに共感して歌にしたのは、やはり日ごろ「生きる」ことを歌という手法で伝える姿勢があるからこそだと感じるのです。その姿勢はベストアルバムにも感じることができます。

話題の手紙は収録されていませんが、十分、前向きな力をもらえますよ。

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