山下くに子のこの1枚

写真
元FM横浜アナウンサー。小学館ビッグコミック『CD探検隊』連載中の『山下くに子』がお薦めするバラエティに富んだ名盤の数々をご紹介します!

変化球のわらべうた

写真
変化球のわらべうた
ペルニカ・トリオ
「ブルガリアン・ワラベウタ」
  発売日: 2012/4/25 品番:SICP3410 税込:2,300円
2012年7月1日

yamashita1207.jpgこのところ、ラジオやテレビから、童謡や唱歌が流れるのをよく耳にするな、と思ったことはありませんか? はい、そうなんです。今、ブームです。最近目立つところだけでも、EXILEのATSUSHIが「ふるさと」をカバーし、上田正樹がアルバムに童謡を盛り込み、島谷ひとみが童謡カバーのアルバムをリリース。続々ですね。東日本大震災以降「絆」「ふるさと」「大切に思う心」に関心が集まっていますが、音楽アーティストにとって、それを象徴する楽曲のひとつが童謡であったことと、当時被災された方の多くが聞きたい…と思ったのが童謡のように歌い継がれる日本の歌だったということもあり、今、ひとつの原点回帰現象が起きているのです。

私はといえば、このテの曲はすぐに涙腺がゆるむため、不用意に聞いたり歌ったりできない要注意のジャンル。でも、大切に聞きたい曲だし、忘れたくないし…。きっと私と同じように、歌に思い入れが強い人は多いはずです。そこで、そんな方には、直球ではなく、変化球の童謡、いかがでしょう?

この「ブルガリアン・ワラベウタ」は、ブルガリアの童謡ではなく、「さくらさくら」「うみ」など日本の童謡をブルガリア人とセルビア人からなる3人の女性コーラスグループ、ペルニカ・トリオが歌ったもの。ペルニカ・トリオは、ロンドンを中心に活動するグループで、ブルガリアの伝承曲や教会の聖歌を歌っています。アルバムは、3人のコーラスのみの全編アカペラ。海外アーティストが歌う日本の歌ときくと、ちょっとたどたどしい日本語を思い浮かべますが、発音はほぼ完璧。最初に原曲どおり日本語で歌い、その後、独特の音階や変拍子などブルガリア伝統のアレンジを加え、ブルガリア語を交えて歌っていきます。このアレンジが感動的!「ずいずいずっころばし」は、ブルガリアの人にはこんなリズムに感じられるのかとか、「おかあさん」がこんなにポップな雰囲気になるなんて!と新発見の連続。まさに聞きどころです。

透明感、清涼感など、ブルガリアのコーラスと聞いてイメージする雰囲気はそのまま。加えて、神秘的。童謡のイメージが変わるとともに、歌い継がれる曲の根底に流れる人々の想いは、世界共通なんだなと思い知らされます。童謡ブームの理由のひとつには、最近、ヒット曲が年代ごとに細分化され、みんなで一緒に歌える歌がないことも挙げられます。年代を越えて、誰もが口ずさめる童謡。このアルバムなら、直球と変化球のアレンジで、新しさに驚きつつ、昔懐かしく、みんなで一緒に楽しめますよ。

pagetop