山下くに子のこの1枚

写真
元FM横浜アナウンサー。小学館ビッグコミック『CD探検隊』連載中の『山下くに子』がお薦めするバラエティに富んだ名盤の数々をご紹介します!

不思議、壮大、オーケストリオン

写真
不思議、壮大、オーケストリオン
パット・メセニー
「オーケストリオン・プロジェクト」
  発売日: 2012/12/26 品番:WPBR90721/2 税込:5,000円
2013年4月1日

yamashita1304.jpg昔のSF映画に出てくる謎の研究室とか、子どもの頃の秘密基地とか、そんな感じです。

ジャズ・ギタリストのパット・メセニーが、2010年にリリースしたソロアルバム「オーケストリオン」を映像化したのが、この2枚組DVD「オーケストリオン・プロジェクト」。オーケストリオンとは、19世紀末から20世紀初頭に実在したもので、オーケストラの複数の楽器を同時に演奏させる機械のこと。そのコンセプトでエンジニアらとともにパットが自作したのが、ジャケットに写っている装置です。2年前にアルバムが出たときには、いったい何がどんな風になって音が出てるの?実際のライブに行って確認せねば!というファンが多数出現しました。そして、やっとその様子がDVDに…。これがまた、映像で見てもスゴイです。

現代のテクノロジーなら、PCを駆使して楽にコントロールできそうですが、これはオーケストリオンという伝統楽器の再生。ゆえに、空気力学や、電気エネルギーを機械的な直線運動に転換するソレノイド・スイッチを使って、それぞれのパーツに、楽器の音を出す指令を流しています。マリンバの鍵盤ひとつひとつに対応しているマレット(ばち)がからくりのように動く様子、勝手に上下運動するシンバル、水量を変えてチューニングされた空き瓶楽器など、画面に映りこむすべてが驚きの世界。音も、これ何の音?という不思議な音色が含まれています。どれも手作り感に溢れていて、工学系の方は、演奏よりも配線やシステムが気になるかもしれません。

ジャズだと、楽器同士のドラマチックな掛け合いや微妙なニュアンスが大きな魅力ですが、この装置、例えばパットがギターを弾きながら、ギターから指令を流すことが可能ということで、アドリブも可!目を閉じて聴いていれば、普通にセッションしているように聞こえます。そして、目を開けてみると…!

これを作り上げるパットの情熱と、それをひとつの形にする行動力・実行力が、映像から感じとれます。パットの壮大な道楽とも言われていますが、好きなものに囲まれ、ワクワクしたいのは、誰も同じ。それが、また次へのエネルギーになります。それに「自動演奏」というところが、単純に不思議で好奇心を刺激されますよね。このところ、仕事の要領は良くなったけど、いつの間にか、興味や情熱が消えてしまっている…と感じている方、この桁外れにスケールの大きな道楽に触れてみてください。きっと小さい頃の夢や感動を思い出しますよ。

pagetop