山下くに子のこの1枚

写真
元FM横浜アナウンサー。小学館ビッグコミック『CD探検隊』連載中の『山下くに子』がお薦めするバラエティに富んだ名盤の数々をご紹介します!

世界で唯一のアラビック・ジャズ・トランペッター

写真
世界で唯一のアラビック・ジャズ・トランペッター
イブラヒム・マーロフ
ダイアグノスティック
  発売日: 2012/6/24 品番:VITO-265 税込:2,520円
2013年11月1日

yamashita1311RGB.jpg紅葉した木々がいつもの道を明るく照らしているのに、肌に感じる風は冷たく、枯れ葉のカサコソ舞う音が寂しさを誘う…。こういう季節には、ジャズが似合いますよね。特に管楽器の音が、澄んだ空気にきれいに響く季節です。

イブラヒム・マーロフは、パリに住むベイルート生まれのトランペット奏者。人生のほとんどをフランスで過ごしているのですが、レバノン人としての誇りを大切にしており、父親から「長く音楽を勉強してきたのに、自分のルーツであるアラブ音楽をまともに演奏できないのか」と言われて一念発起。同じくトランペット奏者である父とともに、アラブ音階が吹けるトランペットを自身で開発した人です。私たちが使っている音階は「ド」「レ」「ミ」の全音の間に「ドの#」「ミの♭」などの半音がありますが、その半音の中にまた半音があるのがアラブ音階。つまり全音の中に1/4の音、微分音が存在するんですね。

そのトランペットを使っての彼の演奏は、アラブとジャズの融合と言われていますが、エキゾチックな音というわけではありません。ただ、ジャズは微妙な音のうねりが魅力のひとつですが、そのうねりの音を、トランペットの奏でるひとつの音としてキャッチできるというのが、ちょっとした楽しみ。日本人にはわかりずらいと言われるグルーブ感という感覚も、あ、このズレた感じかな…など、あれこれ学習もできます(笑)

この「ダイアグノスティック」は昨年のアルバムで、彼の日本デビュー作。ロックでもオペラでも吹きこなせるという守備範囲の広さが推測できるアルバムです。

音楽は世界共通とは言いますが、ある音階にずっと親しんでいると、普段と違う音階、特に異国の民族音楽のような音階を聞くと、人間は「あれ? ヘンな音」と不快に感じるもので、いろいろな音を普段から聞いておくことが音楽全般を楽しむことの要素になるんだそうです。

仕事にしても日常にしても、ひとつのことに慣れ過ぎると良くない、と言われますよね。時には、新しい環境に身を投じて。きっと、あなた自身の新しい音が聞こえてきます。

pagetop