山下くに子のこの1枚

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元FM横浜アナウンサー。小学館ビッグコミック『CD探検隊』連載中の『山下くに子』がお薦めするバラエティに富んだ名盤の数々をご紹介します!

ウィーンに尺八が響く!? 先入観が無くなるアルバム

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ウィーンに尺八が響く!? 先入観が無くなるアルバム
藤原道山&シュトイデ弦楽四重奏団
「FESTA」
  発売日: 2011/11/2 品番:COCQ-84926 定価:2,940円
2014年6月1日

140601.jpg銘柄を隠してテイスティングしたり体験をする「ブラインドテスト」なるものがあります。例えば、薬の銘柄を隠し、患者には「頭痛薬」と言って消化薬を渡して反応を見る実験から、高級食材か、はたまた特売の食材かを見極めるお遊び的なものまで、先入観にとらわれず、客観的に判断しようというのがブラインドテストです。音楽関連でも、スピーカーなど比較試聴に、このテストが一役買っています。

その意味で、今回は尺八のCDなのですが、まずは、尺八を忘れてください。

そして、聴く。

私は、最初、それとは知らずにラジオから流れているのを聴いていて、力強いフルートだな…とぼんやり思っていたら、突然、かすれるようなビブラートが出てきて、椅子から転げ落ちそうになりました! 

尺八奏者の藤原道山が、ウィーン・フィルのコンサートマスターが率いる弦楽四重奏団と共演したアルバムがこちら。バッハの管弦楽組曲は、まさにフルートそっくりなのですが、フルート以上に弦楽器に合う尺八を感じることができます。他にも、バルトークのルーマニア民俗舞曲や、多くの人がイメージする尺八らしい古典の曲、藤原自身のオリジナル曲なども収録。「古典+弦楽」という字面だけを見ると「この組み合わせってどうなんだろ??」と思うものが、見事に融合しています。やはり、先入観は敵です。

尺八は、開けられた穴の数でいえば5つの音しか出ないのですが、あごの引き出しや首のゆらし、咽喉を鳴らすなどして、複雑な音を作り上げます。そして、かすれるような息の音も重要な要素。

普通に音楽を聴いていると、つい透明感のあるきれいな音を追求しがちなのですが、尺八の音色は、息のような、いわゆる雑音も取り込んで表現の幅を広げていく、懐の深さを感じます。

人は、客観的に物事を見ているつもりでも、たいていは、自分に都合のいい情報を無意識に集めてしまうものなんだそうです。結論は急がず、一回、ブラインドテストのように、自分の客観的な判断を確認してくださいね。

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