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ゆみさんのメンタル・スケッチ
第34回 前に戻るって?
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第34回 前に戻るって? |
産業医として、メンタル疾患で休職されていた方の相談や面談を受けることがあります。が、これはどちらかというと個人的な知り合いに相談されたときの話です。「先生、かれこれ休職してから2年近くたってしまいました。先月くらいから主治医に復職したい旨を話すと『意欲が大分戻ってきているしもう復職して大丈夫でしょう。』と言われました。それで復職の職場での足慣らしというか職場リハビリが始まったのですが。これがどうも2年前の自分のレベルで働く感じに戻れていないんで、まだ治りきってなかったかとおもうんです。」
「○○さん、ほかの症状は?」
「ええ、食欲は申し訳ないくらい戻りましたし。考えすぎて眠れないようなのはもうすっかりなくなったんです。うつ病の診断基準にあるような『深い落胆、絶望空虚』などは今はすっかり消えて久しいです。あの頃はまことに、メランコリーに正座してましたからね。今考えると不思議な気がします。」
「あら、○○さん詩人でいらっしゃるのですね。でも2年もたって2年前の自分と同じようにできないことを嘆くのはどうかしら。何にもないように時間がたっているときでさえ、いい年になってからは、人は2年も経つと、スポーツ選手に引退の時があるように、前と同じようにはできなくなることは増える。けど、もちろん生涯発達してるところだってあるしね。休職していなくてもしていても同じようでいられないのは同じですよねえ。第一たった2日前の自分にだって戻れないけれど。2日前の自分には戻れなくても理の当然と気にはしなくていられても、2年前の自分に戻れないのは嘆いてしまうのもまた、人間だものねー。あっごめんなさい、説教臭かったですね。実は私も、エネルギーに満ちて何足ものわらじを履きつつ頑張っていたあの頃と、どうしてこんなに今の私は違うのかしら、と考えては、我に返ることもありますもの。でも成長という便利な言葉をつぶやくと、我に返っても浦島太郎ではないから不思議ですよー。あ、私今日しゃべりすぎました。」
精神神経科医 労働衛生コンサルタント 牧由美子