ゆみさんのメンタル・スケッチ

第39回 ポップコーン

精神神経科医 労働衛生コンサルタント 牧由美子
2016年12月01日
第39回 ポップコーン

文化祭の季節も過ぎようとしています。

先日、近所の幼稚園の文化祭を覗きに行くと、小さな子ども達の「美味しいポップコーンいかがですかあー?」と小鳥の様な澄んだ声が耳に入りました。

「一つ下さいな。偉いわねー、みんなでお手伝いしたの?」

「火を使うから、お母さん、お父さんが作ったの。でも、私たちが袋に詰めたんだよ。」

「そう、ありがとう。」

そう言いながら、後ろに並んでいらしたお母さまお父さまに軽く会釈し、落ち葉の散り始めた園庭をあとに、そっと一つ口にしました。

誰かのおばあちゃまと思われたのに違いない、そんな歳になりました。けれど、ちょっぴりしょっぱいポップコーンの味がまるでおととい見たばかりの夢の様に口の中に広がりました。

あの日は、娘の幼稚園のバザーのため、近所の保護者のグループでポップコーンを作ることになり、あるお母さまのお宅に数人が集まりました。

土曜日でしたが、朝の仕事を切り上げ、息せき切ってそのお宅に駆けつけましたが、3分くらい遅刻。すでにぽつぽつとまめ(コーン)のはじけはじめた鍋の前に皆さんが集まっていました。「遅くなってごめんなさい。」

するとリーダー格のお母さんがいいました。「あら皆さん、この豆はじけすぎですよね。あちこちにはじけて自由に好き勝手に飛んでしまって!牧さんみたいね。」

周りの方々も顔を見合わせクスクス笑いました。

「…」

確かに、その時は幼い娘を連れて外国の大学から戻って間もない頃、仕事も忙しくしていた頃でした。一瞬にして、何を言いたいのか、わからない訳はない口調でしたが、つとめて明るく言いました。

「本当にそうですね。ポップコーンは軽やかに跳ねるところが、元気を貰えそうで、皆好きなのですよね。そう例えて下さって光栄です。嬉しいです。いつもありがとうございます。」

皆さんがどういうお顔をされたのか今となっては思い出せないのですが、次の日のバザーでは、売れ行き好調。

何事もなかったかのようにそれから時も経ち、娘は「いーつのことーだかぁ、おもいだしてごーらん。♪あんなことぉこんなこと♪」と無邪気に皆と歌いながら無事卒園しました。私があそこでしょげて見せなかった故に、「娘がいじめられるのでは」という心配を、実は少なからずしていたのに、人の気も知らないで

精神神経科医 労働衛生コンサルタント  牧由美子

pagetop