ゆみさんのメンタル・スケッチ

第4回 ポキッと折れない話

精神神経科医 労働衛生コンサルタント 牧由美子
2014年01月06日
第4回 ポキッと折れない話

先日、テレビの刑事ドラマを見ながら、ソファーでうとうとしていた時のことです。ドラマはいつの間にか最終場面になっていて、どういう展開であったのかはわかりませんが、年配の刑事が、仲間の刑事にどこかの屋上で語っている言葉に、はっと、反応し目が覚めました。

「なあ、○○。この仕事をしている限り、やりきれなくなるのは一度や二度じゃあない。(ポンと背を叩く)とにかく、目の前の事件は解決したんだから。」その俳優さんが遠くを見る目に哀愁が漂い、エンディングの音楽が流れる中、私はすぐにソファーの横のメモ用紙に、そのセリフを書き残していました。

ひねりのあるかっこいいセリフではないのですが、「ちょっと待って。これって、私に言ってくれている?」とぴんときたのです。教職員の方も、同じ気持ちになるのではないでしょうか。

私のような仕事(産業、労働の場面での精神衛生を扱う医者)をしていると、弱者に寄り添うという医師としての大前提ですら、薬物療法・個人の精神療法を主体に治療に臨んでいる時とは少し違います。個人の側にも組織の側にも残った傷ついた感情を、どう介入したら良かったのか、杓子定規にまとめようとしたことで傷つきは癒されていなかったのでは、とやりきれない思いが残ることが多いのです。

「感情労働」と言う言葉を最近耳にしますよね。医師や看護師、介護士等と、仕事現場は様々ながら、教職員の仕事はまさに、この、感情労働です。どんな仕事も、肉体・頭脳・感情を使うのは当然ですが、その割合には職業的な違いがあることを、自覚していかなければ、有効な仕事上の成長や、休息、プライベートの充実が無理になります。教職員は児童生徒、保護者、同僚、上司、いつも「人間相手」。相手のネガティブな感情が強かった時、それを受け止め、ポジティブにしていくのには、こちらの感情をコントロールして使わなくては始まらない、こういった仕事をする誰もが無意識に了解してきたことです。特に責任感が強く、ひたむきな気持ちでこういった「感情労働」に努めてきた方が、ここからここまでという線引きができない状況で、理解者も少ない状態が長く続くと、ポキッと心が折れてしまう、いわゆる「燃え尽き」が起きてしまいます。私の臨床経験では、教職員の燃え尽きと思われるうつ状態は、多いです。

では、どうすればよいのか。感情を押し殺すというネガティブな側面でなく、(倍返しはパワーが要りますのでさておきますが)感情的に疲れ切らずに、どこでどう表出していくかという議論も始まっています。こんなアプローチが出てきたことは心強いことです。

冒頭の刑事さんのように、やりきれない感情を、理解しあえる仲間がいる、というのも燃え尽きを予防する上で平凡ですが大切なことだと思います。「目の前のことがとりあえず解決できたなら、それを評価し一歩ずつ先へ進めばよい」、と言ってくれる仲間は本当にありがたいものですね。

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