点鐘 [連載コラム]

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点鐘(テンショウ)とは、航海者に30分毎に時を知らせる鐘の音のことです。帆船時代には4時間(八点鍾)単位に当直を組み、大海原へ乗り出しました。 この連載コラムでは、各界を代表する方々が、自由なテーマで時代の点鐘を鳴らします。

自然エネルギーに満ちた日本

2011年06月01日
自然エネルギーに満ちた日本
 伊藤宏一(千葉商科大学大学院教授)  2011年6月1日

3・11後重要なニュースが2つあった。4月15日ワールドウォッチ研究所は、「福島以降の世界の核エネルギー」というレポートを出した。それは、2010年は世界の累計発電設備容量として、風力や太陽光・バイオマスなどの再生可能エネルギーが3億8100万kWに達し、原子力の3億7500万kWを史上初めて上回ったと伝えた。これは20世紀の化石燃料+原子力の時代が終わり、21世紀の自然エネルギー時代が本格的に始まったことを示している。

4月7日アースポリシー研究所は、地熱・風力・太陽エネルギーの可能性を見直せば、日本国内の再生可能エネルギー資源は世界第三位の経済大国の電力を容易に賄えると報告した。日本は約200の火山と2万8000の温泉のある世界で最も地熱の豊富な国の一つだ。従来の技術でも地熱は8000万kW以上の発電容量を供給でき、日本の電力需要の半分を満たす。膨大な風力の潜在力もほとんど利用されていない。2010年末日本は230万kWの風力発電容量を設置したが、米国科学アカデミーによれば、日本の陸上風力資源は日本の電力の半分を供給でき、利用可能な海上風力資源を含めると、風力の潜在能力は現在の電力需要を遙かに上回る。また太陽光発電は、2010年に推定90万kWが電力網に接続され全発電容量では350万kW以上となった。日本は2030年までに5300万kWという目標をめざしており、この数値は日本の1800万世帯に電力を供給するのに十分だ。

ではなぜこれらが活用されないのか。問題は国際動向に背く政府の政策と企業の姿勢にある。例えば地熱は2002年以降、政府から研究開発資金を受けず風力は年間約1000万ドルの補助なのに対し、原子力は年間23億ドル(約1912億円)も得ている。地熱発電による供給は日本の電力の1%に満たないが、驚くべきことに日本の3つの会社―富士電機、東芝、三菱重工―が世界の地熱タービンの2/3を製造している。自然エネルギーへの転換は、放射性物質に汚染された空気・水・作物という将来の危険回避に加え、輸入化石燃料にかかる年間数兆円もの費用を節約でき、強大な再生可能エネルギー製造業を促進するだろう、とレポートは述べている。

私たちは「日本は資源に乏しい」と教育され、その口実の下でエネルギーや食料の自給率を低下させてきた。しかし事実は異なり、こうした希望を持つことができることをかみしめたい。ハイリスク・高コストで人を恐怖に陥れ、自然と人体を汚染し最終処理不可能な核燃料を止め、自然エネルギーを軸に政策と企業活動の歴史的転換を行うべき時が来たと思う。

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