点鐘 [連載コラム]

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点鐘(テンショウ)とは、航海者に30分毎に時を知らせる鐘の音のことです。帆船時代には4時間(八点鍾)単位に当直を組み、大海原へ乗り出しました。 この連載コラムでは、各界を代表する方々が、自由なテーマで時代の点鐘を鳴らします。

復旧へのアクセルを踏もう

2011年08月01日
復旧へのアクセルを踏もう
 奥井禮喜(月刊ライフビジョン発行人)  2011年8月1日

復旧活動が遅いという批判が絶えない。少し冷静にみると、たとえば膨大な瓦礫の処理は不明者捜索のために早々重機を投入できなかったり、梅雨入りで危険な河川の堤防・防波堤の応急復旧を先行した面もある。仮設住宅工事がずさんだという一部報道もあったが、突貫工事で踏ん張った事情を考えれば失敗はゼロにはなるまい。義捐金がなかなか届けられなかったのは罹災証明発給作業の人手が圧倒的に不足したこともあるが、少々のリスク覚悟で、早急にお届けする方針を決定しなかったことによる。概して被災者は現場で日々奮闘する第一線の関係者に対しては評価が高い。

報道はどうしても事件・事故性が優先している。全体の流れを考えつつ、事実・事情を丁寧に分析して、問題の核心に迫る工夫が大切である。そうでないと、ネガティブ情報が無気力な気風を生み出す温床になりかねない。危機管理を用意周到に構築していても、巨大な被災などでは次々に厄介な問題が発生する。批判は重要だが、建設的提言をするという気骨を第一に確立したいのである。

被災者は巨大な喪失感に耐えて日々の生活再建に立ち向かっておられる。外から「がんばろう」と励まさなくてもがんばっているのである。営々と積み重ねてきた家やモノが流出しただけではなく、その生き方自体が流されたのである。つまり「復興」とは、新たに日常生活を取り戻すだけではなく、人生観の再構築を迫られているわけである。

ヘドロは東北四県で一六〇〇万トンある。仮にすべて手仕事でやれば一人一日二トン程度の泥出し。八〇〇万人応援なら一日だが、現実の応援は五〇〇〇人以下だから、三二〇〇日必要になる。ヘドロだけみてもかくも巨大な厄介であるが、応援を増員すればどんどん復旧が加速していくのである。これはすべての厄介への対抗措置である。

被災から遠のくにしたがって、人は状況に対して不感症になる。感情的だから辛い状況を忘れたくなる。しかし、復旧はこれからアクセルを踏まねばならない。連合、日本教職員組合の皆さまが被災地で連日活動しておられる。連合の応援活動は被災者にとってなによりの励ましである。われわれがエートスを発揮するのはこれからだ。

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