点鐘 [連載コラム]

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点鐘(テンショウ)とは、航海者に30分毎に時を知らせる鐘の音のことです。帆船時代には4時間(八点鍾)単位に当直を組み、大海原へ乗り出しました。 この連載コラムでは、各界を代表する方々が、自由なテーマで時代の点鐘を鳴らします。

突き進んでよいのか?

2012年03月01日
突き進んでよいのか?
 奥井禮喜(月刊ライフビジョン発行人)  2012年3月1日

半世紀後わが国の人口が八六七四万人になる。現在から四一三二万人減少する―、という国立社会保障・人口問題研究所の予測が発表された。大新聞はえらいこっちゃという社説である。目下世界人口は七〇億人。とりわけアジアの人口増加が著しいが、わが国は正反対になっている。ところで明治時代の入り口ではわが国は三三三〇万人だったから、一四四年間にざっと四倍に増加した。狭い国土にひしめき合う事情を考えればだいぶゆったりして具合がよくなるのではなかろうか。

世界人口は西暦一年に一億人、一〇〇〇年に二億人、二〇世紀入り口で一五億人だった。一九七一年・四〇億人、一九八七年・五〇億人、二〇一一年・七〇億人ときて二〇五〇年には一〇〇億人と予測される。二〇世紀の人口爆発がまだ続く。いま一〇億人が飢餓状態、四億人が肥満だ。グローバルと吠えるのが好きなわが国だからわが国の人口減少に目を三角にするだけでなく全球的に考えるのも大事ではないか。

食べなければ生きられない。世界耕地面積は一五億ヘクタールだが横ばいで推移し、農業の生産性向上もほぼ限界というのが通説である。窒素肥料をしこたま使い収穫量を増やしてきたが、土壌がおおいに疲弊している。土壌中に蓄積した窒素は酸化して海へ流れ赤潮や富栄養化の原因になる。漁業資源が減少している。農業に投入したエネルギーは産出エネルギーを上回る。農業が水資源を利用する割合は七〇%、もともと淡水資源は少なく、世界中で水位低下や枯渇が騒がれる。二〇二五年には世界の三分の二が水不足に見舞われるという国連の予測もある。年中さまざまの野菜を食べられるが生産に投入される熱量は摂取カロリーの数倍から数十倍にもなる。

人類は一二〇〇〇年前に農業を発明して以来、人口爆発を吸収してきたけれど、資源・エネルギーをじゃんじゃん使い、膨大な廃棄物を出し続ける生活が子子孫孫まで持続するものだろうか。食糧生産増加が人口増加を上回るという単純楽観的発想をしていて大丈夫なんだろうか。人間は地球上にしか住めない生物の一種に過ぎない。ひたすら効率、生産性向上、経済成長率上昇のみで突き進むべきだろうか。人口減少ではなく人口爆発のほうが脅威だと考えるべきである。

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