点鐘 [連載コラム]

写真
点鐘(テンショウ)とは、航海者に30分毎に時を知らせる鐘の音のことです。帆船時代には4時間(八点鍾)単位に当直を組み、大海原へ乗り出しました。 この連載コラムでは、各界を代表する方々が、自由なテーマで時代の点鐘を鳴らします。

再生可能エネルギーのための市民出資

2013年02月01日
再生可能エネルギーのための市民出資
 伊藤宏一(千葉商科大学大学院教授)  2013年2月1日

リーマン・ショック後、再生可能エネルギーのための市民出資の仕事をお手伝いするようになった。「自然が神仏」という日本文化の伝統を自覚すればする程、この国は再生可能エネルギーにふさわしい国だとの想いを深くするようになった。長野県飯田市の太陽光発電や富山県滑川市の小水力発電の市民出資に関する仕事に微力ながら取組んだ。後者は、半分は環境省の補助金を得られた。残りの資金の一定額を金融機関から借入れようとしたが、前例がないということで断られた。頼みの綱は市民出資だ。何億円もの資金が集まるだろうか。案の定、当初はなかなか集まらなかった。そこに3・11が起こり、事態は大きく変わっていった。2011年11月、みごとに全額集まり、2012年4月から小水力発電は動き始めた。日本アルプスの清流が地域の人々の想いを乗せてクリーンな電気を作り、地域の雇用にも貢献する。持続可能な地域を切り開く大切な事業だ。地域のために人々はリスクをとって真っ当な投資をする。それはリーマン・ショック時のウォール街の「強欲」の対極にある投資だ。

今世紀の始め頃、柳田国男はこう言った。「私は現今のごとく貯蓄機関が中央集権の傾きのあるのには非常に反対であります。郵便貯金は元よりの事、地方の小都会にある貯蓄銀行でも金を集めれば、悉く中央に送ってしまうのです。かくのごとく貯蓄機関を中央集権的にしておけば、いつまで経っても農村の資金を潤沢にすることはできません。」そう、例えば、大きな企業のメガソーラーでは、お金は地域と関係のないところに行ってしまう。これではだめだ。

地域でお金を廻し、地域を開発(かいほつ)し、人々のきずなという社会資本(ソーシャル・キャピタル)を作ること、これが喫緊の課題だと思う。ちなみに開発(かいほつ)とは仏教用語で、自然や人の潜在的な能力を開花させることだ。国連が言う「人間開発」とはこの意味だ。福井市には開発町という地名がある。そして2012年秋、福井の人々がやってきて、再生可能エネルギーの市民出資をやりたいという。小田原や米沢、福島や徳島、そして熊本などでもこうした声が高まっている。これは日本の希望だと思う。北欧のサムソ島などで再生可能エネルギーのための投資をした多くの市民が示してくれたように、投資の概念を真っ当にすることにもなる。私も出来る限りのことをしてお役に立ちたいと思う。

pagetop