点鐘 [連載コラム]

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点鐘(テンショウ)とは、航海者に30分毎に時を知らせる鐘の音のことです。帆船時代には4時間(八点鍾)単位に当直を組み、大海原へ乗り出しました。 この連載コラムでは、各界を代表する方々が、自由なテーマで時代の点鐘を鳴らします。

気候変動と戦う

2014年09月01日
気候変動と戦う
 
伊藤宏一(千葉商科大学人間社会学部教授)   2014年9月1日

昨年8月ホワイトハウスにソーラーバネルが設置された( 画像を参照 )。今年5月、オバマ大統領は、カリフォルニア州シリコンバレーのウォルマートでCO2を減らすための大統領命令への署名を発表し、ウォルマートの再生可能エネルギー使用増加を評価した。同命令では3億8000万トンのCO2を減らす計画で、この量は8000万台の乗用車が1年間に排出する排気ガスに相当する。また、ビジネスのエネルギー費用を260億ドル節約する。これに続いて6月、米環境保護庁は初めて国内の発電所からCO2排出量を2030年までに30%(2005年比)削減することを目標とする「クリーンパワー計画」を発表した。これには州ごとの削減目標が設定されている。

アメリカが気候変動と正面から戦おうとしているのは、気候変動の影響が深刻だからだ。カリフォルニアは歴史的な干ばつに襲われている。サンフランシスコ近郊のフォルサム湖も、ラスベガス近くのミード湖も湖底が見えるほどで、農業用水が大幅に不足している。州はこの7月に、芝生への水やりや洗車に、最高500ドルの罰金を課すことを決めた( ニュースを参照 )。

一般に、気温が1度上がるごとに、大気の保水力が7%上昇するという。これにより水の分布が大きく変わり、降水の強度は上がるが、持続時間や頻度は下がる。その結果、洪水が頻発する一方で、干ばつの期間が長くなる。カリフォルニア州の干ばつと、日本の台風の強大化による豪雨は、温暖化による気候変動リスクの顕在化が原因だ。

国連は9月23日に気候変動サミットをニューヨークで開催する。その2日前には大規模なピープルズ・クライメート・マーチが同地で展開される。しかし日本にはそうした姿勢が見えない。日本の気象報道は豪雨等の現況と対応を語るが、原因への言及はなく、マスメディアでは「気候変動」という言葉が聞かれない。昨年発表された日本のCO2削減目標は1990年比3・1%増の排出増加で、世界を落胆させた。来2015年12月のCOP21気候変動条約パリ会議を目指して、欧米各国や中国は来年前半に新たなCO2削減計画を発表する予定だが、世界第5位のCO2排出国である日本だけが発表しそうにない。

21世紀、地球というグローバル・コモンズに生きる私たちの根本的課題は、工業化以前に比べて平均気温上昇を2度以内に抑えることだ。残された時間は30年足らずと言う。日本が気候変動リスクに対し大胆な行動を取ることが、今求められている。

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