点鐘 [連載コラム]

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点鐘(テンショウ)とは、航海者に30分毎に時を知らせる鐘の音のことです。帆船時代には4時間(八点鍾)単位に当直を組み、大海原へ乗り出しました。 この連載コラムでは、各界を代表する方々が、自由なテーマで時代の点鐘を鳴らします。

《新たな連帯》の模索

2015年03月01日
《新たな連帯》の模索
 
 奥井禮喜(月刊ライフビジョン発行人)  2015年3月1日

あるホテル労働組合の組合員一〇〇人にインタビューした。一人一時間・一〇〇人一〇〇時間である。関心は、①日々、何を考え、いかに働いているか。②いかなる職業人生を刻んできたか。③これからいかなる人生を創造したいか??である。一問一答ではなく、できるだけモノローグ調になるように心掛けて対話した。どこかの馬の骨が対座したにもかかわらず皆さまは自由闊達に気持ちを表現された。

もちろん問題がないことは有り得ないが、自由なモノローグが成立したこと自体、組織文化が健康的だという証明である。仕事に対する認識をLabor(生活の糧)、Work(個性発揮)、Action(社会参加)と区分して考えると、全員がActionであった。これにはいささか驚いた。ホテルマンだから、おもてなし精神でインタビュアー(私)をもてなされたのではないかと考えてみたが、決してそうではなかった。「これは私の仕事だ」という誇り・自負が披歴された。聞く私も心地よかったが、話すほうも気分がよかったらしい。経営者がレポートを読めば涙して喜ぶのじゃないかと思うほどである。愚痴るのはダメだ、不満があれば言葉にして出すべきだと大方の皆さまが言う。そうした気持ちの核心は「自分が成長したい」という一点に集約できる。個人の成長が組織の成長の原点だという仮説が証明されたと思う。成長とは??主体が、自立で自己を再生産することだ。社会学でいう「自己組織性」が浮かび上がった。

そして、いま空腹ではない。しかし、衣食足りて何かモノ足りない。自分の人生をかけて、判断し実践するところのモノ(something)、人生の意味がほしいのだが、そのモノの手応えがないという認識が示された。だから「これから、いかなる人生を創造したいか」という課題については、どなたもオツムを抱えてしまう。ただし、人生の意味なんて考えても仕方がない、と投げ出す人はいなかった。

それゆえ私は期待するのである。??「いかに生きるべきか」を自問自答しつつ生きる人々によって《新たな連帯》を模索し創造する運動体を労働組合が志向するとき、民主主義に毅然として立脚した組合運動モデルが再建されるのではないだろうか。

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