点鐘 [連載コラム]

写真
点鐘(テンショウ)とは、航海者に30分毎に時を知らせる鐘の音のことです。帆船時代には4時間(八点鍾)単位に当直を組み、大海原へ乗り出しました。 この連載コラムでは、各界を代表する方々が、自由なテーマで時代の点鐘を鳴らします。

東北再生と明治150年

2016年02月01日
東北再生と明治150年
 
 伊藤宏一(千葉商科大学人間社会学部教授)  2016年2月1日

1995年 阪神淡路大震災にボランティアに行った。そして仮設住宅を訪れ住民の話をじっくり聴いたことがあった。5年後住宅問題は解決し、被災地の仮設住宅は撤去された。…2013年、1923年関東大震災後に建てられた同潤会上野下アパートメントを取り壊される前に見に行った。このアパートは一種のコミュニティで、耐震性も強く、約90年後の2011年東日本大震災でも大丈夫だった。後藤新平が推進した関東大震災後の帝都復興計画は、震災前への現状復帰ではなく、防災や緑化そして交通網や橋などを配慮した上で、近代的市民のコミュニティを作る構想だった。小学校に小公園を配置し、地域コミュニティの軸にするプランが中核的な重要性を持っていた。7年後の1930年、縮小されたものの計画は完成し帝都復興完成記念式典が開催された。

さて、東日本大震災は2016年3月で5年経つ。だが災害公営住宅の整備の遅れなど住宅不足が続く被災地の市町村では、供与期間を一律1年延長し6年間とすることになった。復興庁は当初5年間を集中復興期間、その後5年を復興・創生期間としているが、震災前への復帰を意味する復興は道半ばだ。創生ビジョンに「新しい東北の創造」が掲げられているが抽象的で、関東大震災後の復興計画のような具体的な構想が伝わってこない。たとえ震災前の状態に復帰しても、復興庁が言うように「被災地は日本全国の地域社会が抱える課題(人口減少、高齢化、産業の空洞化等)が顕著」だ。

問題はもっと根本的・歴史的だと思う。2018年に150年を迎える明治維新に始まる、東京一極集中の中央集権型資本主義化・近代化を見直し、ドイツのような分散ネットワーク型の経済・社会構造へ変革することが時代の要請だ。例えば福島県は猪苗代湖や只見川・阿賀川水系で約500万kw(県内必要電力150万kw)の発電力があり原子力に頼らないエネルギー自立は可能だ。実力のある地方都市に企業の本社が分散し、集権型の原発依存を止めて市民エネルギー協同組合が地方に分散して再生可能エネルギーを作り、インダストリー4.0で全国にIOT(Internet of Things)網を作り、ゆったりと暮らし仕事をしながら、生産性は一極集中の日本の1.5倍以上というドイツの経済・社会構造から学ぶことは大きい。東北の再生は、江戸時代のバージョンアップでもある分散ネットワーク型社会へ変革していく試金石となる問題なのだ。

pagetop