点鐘 [連載コラム]

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点鐘(テンショウ)とは、航海者に30分毎に時を知らせる鐘の音のことです。帆船時代には4時間(八点鍾)単位に当直を組み、大海原へ乗り出しました。 この連載コラムでは、各界を代表する方々が、自由なテーマで時代の点鐘を鳴らします。

あいのこ人

2008年12月25日
あいのこ人
なだ いなだ(作家) 
2008年12月25日

ぼくの妻はフランス人で、ぼくの子どもは「あいのこ」である。混血だとか、ハーフだとか、いろいろな表現が
あるが、発音してみると「愛の子」というイメージがわくので、ぼくはこの表現を使う。蔑称だから避けろという人もいるが、ぼくは、よい意味に使っているう
ちには、悪い印象もなくなるだろうと考えている。

ぼくの娘たちは、子どものころ、近所のガキどもに「やあい、フランス人」とはやされて「あたしは、日本人じゃないの」とぼくに聞きにきた。そこで「日本人でもある。フランス人でもある。そのあいのこだ」と答えると外に行って「あたしはあいのこ人だぞ」と怒鳴り返した。

アメリカにオバマ大統領が登場する。かれは最初のアフリカ系黒人大統領という呼ばれ方をするが、なぜそう呼
ばれるのだろう。なぜ、かれはアメリカ人とケニヤ人とのあいのこだ、といわれないのだろう。ぼくの娘たちは、黄色人と白人との混血とも、あいのことも呼ば
れなかった。しかも、オバマ氏はあいのことさえ呼ばれない。ただ黒人である。まるで純白でなければ白人とはいえないかのようだ。この呼び方は、まだまだ黒
人に対する人種差別の意識が残されていることを証明するものだと思う。

だが、20世紀を通して見ると、人種差別の解消がよくここまできたという感想の方が強い。それにはオバマ氏
に至るまで、世界での黒人の活躍があった。国連のコフィ・アナン事務総長、アメリカのパウエル国務長官、ライス国務長官などの姿を、国際ニュースで毎日の
ように見てきたから、アメリカの大統領にバラク・オバマ氏が選ばれても、なんの違和感も抱かないのだろう。こころの準備ができていた。

国連総会でのアナン事務総長の演説と、その後のブッシュ大統領の演説を聞いて比較した者は、前者の美しい英語表現に驚いたはずだ。パウエル元国務長官は、
大統領選挙に出れば、当選間違いなしといわれていた。だが、妻が、暗殺を心配して反対したので、立候補を断念した。その代わり、アメリカ初の、黒人国務長
官になった。ブッシュ政権の中で、国際社会から信用を得られた唯一の常識人であった。こうした流れを見ていると、日本社会の意識は、大分遅れているように
思う。在日の2世や外国からの移民が、議員に選ばれ、首相になる日はいつ来るのだろう。

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