談話

国連「子どもの権利条約」批准30年に関する書記長談話

2024年11月20日

日本教職員組合書記長 山木 正博

 

 11月20日は国連が定める「世界子どもの日」となっている。今年は国連が子どもの権利条約を採択し35年、日本が条約を批准して30年となった。

 子どもの権利条約は世界で最も広く受け入れられている人権条約であり、多くの成果が得られているが、一方で未だに武力紛争や軍事侵攻が行われ、多くの市民や子どもたちが犠牲となっている。また、地球温暖化などによる気候変動により避難生活を余儀なくされる子どもたちも多い。世界各国では年間500万人以上の子どもが5歳を迎えられずに亡くなるほか、1億6,000万人が児童労働に従事している。これらの状況も含め、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に掲げられた2030年までの目標達成にとっても喫緊の課題となっている。

 

 国内では、22年度に児童相談所が扱った虐待の件数が22万件(速報値)にせまり、最多となった。また、「子どもの貧困解消に向けた対策推進法」が整備されるなど、施策がすすめられてはいるが、相対的貧困率も深刻な状況のままである。子どもが多くの時間を過ごす学校現場では、「カリキュラム・オーバーロード」と呼ばれる肥大化した学習内容と授業時数、過度な競争を強いられる社会的なプレッシャー、不合理な規則やルール、同調圧力などのストレスから、不登校やいじめなどが社会現象となっており、子どもの幸福度も低い。学校においても子どもの人権を尊重した教育の実現にむけて、今こそ詰込み学習を見直し、柔軟でゆとりのある教育を実現するため、教職員を増やしたり一学級当たりの子どもの数を減らしたりするなど具体的な施策が必要である。

 

 子どもの権利条約では、子どもの命や健康を守り、子どもの最善の利益を図る、差別なく権利の主体として意見を表明し参加するなどの原則が示されている。こども家庭庁が設置され「こども基本法」が施行されたが、実現できていない課題がある。子どもの意見を行政に反映させることや、子どもオンブズマン/子どもコミッショナー制度をつくるなど、条約の理念を実現させる施策が必要である。そして、子どもが権利の主体として自らの意見や権利を発信するためには、子どもの権利の啓発をはじめ、子どものサインや発信を受けとめる社会全体が人権条約の理念を理解することが重要である。また、子どもに子どもの権利を知らせ、学校現場における子どもの権利条約の理念の実現も欠かすことができない。

 

 日教組は子どもの権利条約をはじめとする人権宣言・条約を実現させるため、今後も関係団体や市民、各国の教職員と協力してとりくむ。

以上

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