談話

広島朝鮮学園「無償化」裁判の広島高裁判決に対する書記長談話

日本教職員組合書記長 瀧本 司
2020年10月23日

10月16日、広島高裁(三木裁判長)は、広島朝鮮学園と卒業生109人が提訴した「無償化」裁判に対して、一審判決を追認し、控訴を棄却する不当判決を行った。
 
広島高裁は、「公安調査庁の資料や報道をもって、朝鮮学校の教育内容などが在日朝鮮人総聯合会の影響を受けており、適切な運営がなされているかに疑念が残るとして、無償化の対象から外した当時の文部科学大臣の判断は不合理とは言えず、裁量の逸脱は認められない」とし、「憲法13条、14条及び26条並びに平等権を保障した国際人権法に基づく権利を侵害するものとは言えない」としている。

高校無償化法の適用によって支給される就学支援金は、「学校」に対してではなく、生徒「個人」に支払われるものである。学校はあくまでも受給権者である生徒に代わって支援金を受領する「代理受領」を行っているにすぎない。どこで学ぶかによって支給の可否が問われるべきではない。朝鮮学校の生徒を高校無償化制度から排除することは、「法の下の平等」を謳った憲法14条、人種によって教育上差別することを禁止している教育基本法4条に厳に反しており、人権侵害、民族差別である。また、朝鮮学校の指定根拠となる規定を削除したことは、国による「教育を受ける権利(憲法26条)」の侵害であるにもかかわらず広島高裁は審理すら行っていない。「朝鮮学校の教育内容が朝鮮総連の影響を受けている」ということを口実に無償化の指定対象から排除することは、民族教育を否定するものであり、学習権の侵害といえ、社会的正義を守るべき司法の判断とはいえない。
高校の授業料無償化から朝鮮学校だけを排除した国の判断に対して、これまで再三国連「子どもの権利委員会」から適用基準の見直しを求める勧告を出されている。さらに国連人種差別撤廃委員会、国連社会権規約委員会からも同様の指摘をされており、当然司法は国際的な見解をふまえ判断を行うべきである。

日教組は、今回の広島高裁判決に強く抗議するとともに、引き続きすべての子どもに教育の機会を保障するために、平和フォーラム等とともにとりくみをすすめていく。

                                  以上

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