談話
2024年度 文科省「全国学力・学習状況調査」の結果公表に対する書記長談話
2024年07月30日
日本教職員組合書記長 山木 正博
昨日、文科省は、2024年度「全国学力・学習状況調査(以下、全国学力調査)」(4月18日実施)に関する調査結果および分析データを公表した。文科省は「調査結果については、令和6年度調査実施要領に基づき、適切に取り扱っていただく必要があります」としているが、具体的な手立てが講じられない中、今年度も「都道府県別の平均正答数・正答率」が公表された。新聞等で順位が大きく報道されることにより、ますます競争・序列化に拍車がかけられている。
文科省は全国学力調査の目的は平均正答率を上げることではないとしつつも、教委や管理職は学力調査の「目標値」を設定し、春休みの宿題を過去問題にした例や、新学期の貴重な授業を事前対策にせざるを得ない実態がある。今年度の日教組調査では、未だに管理職等から事前対策の働きかけがあったほか、自校採点や同一問題の再テストを行う指示が出されているなどの報告がある。また、近年増え続けている日本語を母語としない子どもには、問題を読むこと自体への支援や、障害のある子どもへの合理的配慮も不十分なままの実施だったといえる。
今年度は、本体調査のほかに経年変化分析調査も行われ、指定された学校ではタブレット端末の使用(Computer-based Testing以下CBT)で行われた。これは昨年全国で指摘されたネットワーク回線の処理速度などが改善されないままの実施だったほか、保護者調査ではプライバシーを軽視した質問を行った。このような様々な課題が指摘されているにもかかわらず、課題解決への具体策が示されないまま、CBTへの全面移行を決めていることは大きな問題である。
文科省によると25年度の中学校理科、26年度の中学校英語をCBTで行い、27年度からは小学校でもMEXCBT(デジタル学習のシステム)を導入し、小中学校すべての学力学習状況調査をCBTに移行するとしている。このCBT化はIRT理論(Item Response Theory項目反応理論。異なる時点、異なる問題から算出されたスコア)を使用することで、全国一斉ではない実施日と、一人ひとり違う問題により単純に比較できないなど、日教組がこれまで求めてきた内容が一部反映されている。一方で一層のDX化が学びの本質を変え、子どもたちをより分断することが危惧される。今求められるのは、子どもたちが主体的に学ぶことができ、子どもと教職員の多忙化を解消することができる教育環境を整えることである。
日教組は、引き続き悉皆調査廃止や調査の目的・方法・内容等の抜本的見直しを求めてとりくんでいく。また、各自治体に対しては、公表された結果の適切な取り扱いとともに、子どもたちのゆたかな学びの保障につながる教育条件整備を強く求める。
以上