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2025/10/03 教育関連記事

【教育と多様性③】「SOGI」と「カミングアウト・アウティング」~教職員が知っておきたい子どもの声と配慮の鉄則~

すべての人に関わるSOGIと多様な性

性のあり方は、「男性か女性か」という二元論で割り切れるものではありません。一人ひとりの性が持つ個性と多様性を理解するために、まず性を4つの要素(軸)で整理してみましょう。

 

以前の記事【教育と多様性①】では、性的マイノリティを指す言葉として、レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)などの頭文字をとった「LGBTQ+」について解説しました。

 

しかし、この4つの軸で整理すると、性の多様性を理解する上でいくつかの課題が見えてきます。

 

LGBは、主に「性的指向」による分類です。しかし、T(トランスジェンダー)は、主に「性自認」による分類です。このように、一括りにされがちな「LGBT」という言葉は、本来異なる性の要素に基づいています。

 

そこで近年、性が持つ多様性をより包括的に表現するために、性的指向(Sexual Orientation)と性自認(Gender Identity)の頭文字をとった「SOGI(ソジ)」という言葉が、急速に受け入れられています。

 

 

SOGIという概念の特長は、多数派・少数派といった区別をなくす点にあります。異性を好きになり(性的指向)、生まれた時に割り当てられた性と性自認が一致している人(シスジェンダー)も、多様なSOGIの中の一つのあり方に過ぎません。このため、「性的マイノリティの子どものこと」としてではなく、「すべての子どもたちの性のあり方」としてSOGIを捉えることが、インクルーシブな環境づくりの土台となります。

 

自覚は「小学6年生から高校1年生」に集中

しかし、この「SOGI」のあり方が多数派と異なる子どもたちは、自分の性について深く悩むことになります。特に、自分の性のあり方を自覚し始める学齢期は、その「もやもや」や「つらさ」を誰にも打ち明けられずに孤立してしまうことが少なくありません。では、子どもたちはいつ頃、自身のSOGIに違和感を抱き始めるのでしょうか。

 

 

 

ある調査によると、LGBTQ+であるかもしれないと自覚する時期は、小学6年生から高校1年生の間が最も多いと報告されています。

特にトランスジェンダー(性自認が生まれた時に割り当てられた性と異なる人)の多くは、小学校入学以前から自身の性別に違和感を抱き始める傾向があります。学校生活で男女別の列に並ぶ、男女別のトイレを使用するといった「性別二元論」に基づく場面に直面することで、その違和感が顕在化するのです。この「もやもや」や「つらさ」が、不登校といった問題につながってしまうケースも少なくありません。

 

生徒指導上の課題として、性の多様性に関する配慮はもはや必須であり、教職員一人ひとりが正しい知識と心構えを持つことが急務となっています。

 

カミングアウトは「最大の信頼のサイン」

カミングアウトとは、「本人が、選んだ人に直接自分のSOGIを伝えること」です。自覚したSOGIを人に伝える行為は、本人にとって極めて勇気のいることです。なぜなら、その一言で、その後の学校生活や人間関係が大きく左右されてしまうからです。

カミングアウトする相手は、圧倒的に同級生が多い(約7割)というデータがあります。一方で、教職員や家族などのおとなに打ち明けるのは、非異性愛者(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルなど)では約1割にとどまります。トランスジェンダーの場合は、学校生活で制服やトイレなどの具体的な配慮が必要になるため、おとなに伝える割合は2~3割と高まりますが、それでも少数派です。

 

注目すべきは、彼らが必ずしも担任や両親を選ぶわけではなく、「話しやすいおとな」に打ち明けている、という点です。これは、日頃から生徒と築いている信頼関係が、カミングアウトという重い決断の背中を押していることを意味しています。教職員としてカミングアウトを受けることは、「あなたが安心できる人だ」と子どもに認められた、最大の信頼の証なのです。

伝えられた時にすべき「傾聴と確認」の鉄則

カミングアウトされた教職員に求められるのは、「最初の反応」です。この最初の反応が生徒の安心感を深め、その後の支援体制構築の成否を分けます。

 

1.とにかく、相手の話をよく聞く

まずは「話してくれてありがとう」と、カミングアウトという行動をねぎらう。「驚き」や「戸惑い」を表情に出さず、淡々と受け止める姿勢が重要。

2. 状況と要望を丁寧に尋ねる

「何か困っていることはある?」「どうしてもらいたい?」と、具体的な要望を確認。子どもが具体的な助けを求めていない場合も。SOGIに関する突っ込んだ質問や、プライベートな詮索は避ける。

3.情報共有の範囲を必ず確認する

「このことを、誰にも話さずに二人だけの秘密にしておく?」「もし誰かに相談するとしたら、誰まで話していい?」と、子ども本人の承諾を必ず取る。

  • ある子どもは、担任にカミングアウトした際、「俺はAB型だけど、LGBTのお前と(世の中の)生まれてくる確率は一緒だからな」と言われ、家に帰って号泣したというエピソードがあります。こうしたさりげなくも心に響く言葉、特別なこととして扱わず一人の人間として受け止める態度が、子どもたちには何よりの救いになります。
  • 絶対に避けなければならない「アウティング」
  • カミングアウトされた教職員が気をつけなければならない行為が「アウティング」です。アウティングとは、「第三者が、本人の意図に反して勝手に他者に伝えてしまうこと」です。直接の会話だけでなく、LINEやメールでのやり取りも、本人の確認を取っていなければすべてアウティングとなります。
  • アウティングは、人権侵害であり、場合によってはいじめやハラスメントにつながる、非常に危険な行為です。アウティングを苦に当事者が自死してしまうという痛ましい事件も起きています。「あの人ゲイなの?」「レズらしいよ」といったたった一つのうわさ話が、人の命を奪いかねないことを認識する必要があります。
  • 善意のアウティングの危険性
  • さらに難しいのが「善意のアウティング」です。「この子のためになると思って」「お母さんなら理解してくれると思って」と良かれと思い、当事者に断りなく、保護者や他の教職員、学校医などにSOGIを伝えてしまうケースがあります。これも明確にアウティングにあたります。
  • なぜなら、
  • 1.カミングアウトの範囲は本人が決める権利がある

    当事者があなたに伝えていても、他の全員に伝えているとは限りません。特に保護者に拒絶されることを恐れて、秘密にしているケースは少なくありません。

    2.善意が必ずしも好意的に受け止められるとは限らない

    あなたが「味方」だと思っても、伝えられた人がセクシュアル・マイノリティへの理解者であるとは限らず、かえって当事者を危険な状況に追い込む可能性があります。

  • 例えば、生徒本人が担任にカミングアウトしていても保護者には伝えていない場合、教職員が保護者に「この子は〜で困っている」と伝えることは、善意からであってもアウティングとなります。
  • 学校組織で情報共有する際の鉄則

  • カミングアウトされた内容を、担任一人で抱え込むのは危険です。学校として組織的な支援を行うためには、必ず情報を共有する必要があります。その際の鉄則は以下の通りです。
  • 1.必ず本人に相談する

    「あなたを支援するために、校長と養護教諭には話す必要があるけれど、いいかな?」と情報共有の必要性を説明し、誰に、どこまで話していいのかを本人の意思で決めてもらいましょう。

    2.最小限の範囲で共有し、秘密を厳守する

    本人の同意を得た上で、支援に必要な最小限のメンバー(サポートチーム)でのみ情報を共有し、そのチーム内での秘密厳守を徹底しましょう。

    3.情報漏洩の危険性を常に意識する

    書類やデータでの取り扱いはもちろん、廊下での立ち話や職員室内での会話など、ふとした瞬間に情報が漏れる危険性を常に意識し、細心の注意を払ってください。

  • 「アライ」として、安心できる学校づくりを

  • カミングアウトは、子どもにとって自己理解の重要な一歩ですが、同時に新たな苦悩の始まりでもあります。なぜなら、残念ながら約7割の当事者が「カミングアウトしやすい環境にはなっていない」と感じている現状があるからです。保護者から拒絶されてしまう人も少なくありません。
  • ここで重要になるのが「アライ(Ally)」という存在です。アライとは、性的マイノリティではない人が、理解者、支援者として積極的に連帯しようとする人を意味します。
  • 子どもを支えるアライになりえる教職員に求められるのは、SOGIに関する知識を持つことだけではありません。
  • ●無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)に基づく「男の子なんだから」「女子はこれ」といった無意識の言葉や、男女別の名簿・整列といった慣習を絶えず見直すこと。

  • ●SOGIハラスメントを絶対に放置しない学級の規範をつくること。

  • ●カミングアウトという「心のSOS」を真正面から受け止め、アウティングの危険性を深く理解し、子どもの安全と尊厳を最優先で守ること。

  • 学校は、すべての子どもたちにとって、最も安心・安全であるべき居場所です。教職員のみなさんの「話しやすいおとな」としての存在と、学校の組織的なとりくみが、未来を担う子どもたちの命と自己肯定感を守る支えになります。

 

≪出典:『図解でわかる14歳からのLGBTQ+』(太田出版)≫

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