国際比較でみる教職員の働き方

掲載日:2009/07/21

日本教職員組合では、国民教育文化総合研究所に依頼し、国際比較などの視点から教職員の労働の在り方に関する研究・調査を行い、その報告をまとめました。

調査対象国 日本、イギリス(イングランド・スコットランド)、フィンランドの3ヵ国
調査方法 自記入方式(調査票は別添資料、詳しくは研究委員会報告書参照)
調査対象 初等中等教育段階の公立学校に勤務しているフルタイムで働く教員
有効回収数 日本611名、イングランド529名、スコットランド596名、フィンランド458名
実施期間 2008年1月~5月

1.在学校時間・週あたり総労働時間が長い日本の教員

在学校時間(1日平均)

週あたり総労働時間

週あたり総労働時間=労働時間Ⅰ(始業~終業)+
授業開始前の時間+授業終了後の時間+家での作業時間

2.授業準備時間数が少ない日本の教員

授業準備

関連文書作成

月あたりの実施回数・合計

3.強い「繁忙感」「自信喪失感」、弱い「ストレスの自覚」(5点法での回答)

繁忙感

仕事への自信喪失

自覚症状の愁訴数

ストレス関連設問項目
体や生活リズム 夜中に目が覚める、頭や体が重い、めまいや動悸を感じる、食欲の低下や華燭気味、通勤途中にイライラする
コミュニケーション 生徒と話すことが面倒、保護者に連絡するのが面倒、学校行事の準備が面倒、教職員との会話が面倒
生徒との関係 生徒をしかりやすくなった、生徒との双方向による授業の減少、生徒の考えを聴く余裕がない、学級全体を掌握しにくい
職場の関係 同僚教員の仕事上の欠点が目につく、上司の考え方に批判的になっている。
注意力散漫 教員室の自分の机がちらかってきた、テストの採点ミスが増えた
その他 タバコやコーヒーの量の増加

4.教育活動全般における、高い「教員依存度」

「教員依存度」1位の件数

日本の「教員依存度」が4か国中最も高かった教育活動(全16項目中11項目)

生徒との関わり 休み時間などに子どもと遊ぶ・過ごす、児童会・生徒会活動など活動指導、部活動やクラブ活動に関する指導
生活習慣やマナー 食生活に関する指導
生徒との関係 生徒をしかりやすくなった、生徒との双方向による授業の減少、生徒の考えを聴く余裕がない、学級全体を掌握しにくい
学校行事の準備と指導 教育方針や行事予定などの情報提供、保護者との電話連絡・保護者会など学校行事に関する指導
地域との関わり 奉仕活動に関する指導
生徒の進路指導 キャリア教育、進路指導
その他 放課後などに補習をする

5.短い夏休み

2007年夏季連続休暇平均日数(土日込み)

参考:フィンランド教員の夏休みの過ごし方

「ほとんどの教員は、仕事の疲れを取るための休養と趣味に当てている。多くの教員は語学の勉強などを楽しんでいる。
また、 少なくない教員が大学のコースに出席したり、資格取得のための勉強をしている。これらは教員自身の自主的・自発的なもので ある。
フィンランドの夏季大学や放送大学がこれらを支援するプログラムを用意している。」(情報の提供:エリキ・アスプ氏、 ツルク大学名誉教授)

調査を踏まえての提言

  • まずは授業準備の時間と子どもと向き合える時間を確保すること。

  • そのためには正規の教職員を確保し、以下の施策により残業時間や持ち帰り仕事を減らすことが不可欠。
     (1)少人数学級の推進。
     (2)教員以外の専門的職員を充実する。
     (3)給食指導や部活動の指導を教員の任務から外す。

  • イングランドやスコットランドのように、授業準備時間を設ける対策が不可欠。

  • 長期休業中に自発的研修を多様な場所で行えるように、せめて2週間の長期休暇を確保すること。

  • 文部科学省、都道府県教育委員会、市区町村教育委員会、校長会などが主催する研究指定、研究会、研究事業、発表会等を厳選する。各種研修会も精選する。

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