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給特法等の改正を受けた文部科学省の2026年度概算要求
給特法等の一部改正法案は、国会審議の過程で立憲民主党を中心とする野党が与党に働きかけ、条文追加の修正をはかり2025年6月に成立しました。文部科学省が2025年8月29日に公表した2026年度予算の概算要求において、この修正がどのように反映されているかを見ていきます。
給特法等の一部改正法案の修正の主な内容
給特法等の一部改正法案の修正の主な内容は、教員の労働環境改善にむけた具体的なとりくみを国に義務づけるものです。
1.1カ月時間外在校等時間の削減に関する措置の新設
政府は、2029年度までに、教員の1か月の時間外在校等時間を平均30時間程度に削減することを目標とし、次の措置を講ずるものとすることとなりました。
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●教員1人当たりの担当する授業時数を削減する。
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●教育課程の編成の在り方について検討を行う。
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●義務標準法に規定する教職員定数の標準を改定する。
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●教員以外の学校の教育活動を支援する人材を増員する。
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●不当な要求等を行う保護者等への対応について支援を行う。
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●部活動の地域展開等を円滑にすすめるための財政的な援助を行う。
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●上記のほか、教員の業務の量の削減のために必要な措置。
2.中学校における35人学級の実現に関する措置の新設
中学校の学級編制の標準について、2026年度から35人に引き下げるよう、法制上の措置その他の必要な措置を講ずるものとすることとなりました。
条文修正の概算要求への反映
今回の概算要求では、上記条文修正の内容をふまえ教職員の定数改善とスタッフの拡充が盛り込まれています。
1.教職員定数の改善:「新たな『定数改善計画』」
条文にある「義務標準法に規定する教職員定数の標準を改定する」ことや「中学校の学級編制標準について、2026年度から35人に引き下げる」ことを反映し、2026年度から2028年度までの3年間で教職員を29,621人改善する「新たな『定数改善計画』」が策定されました(一部、2025年度の既改善分を含む)。2026年度は9,214人の改善が要求されています。

《中学校の35人学級》
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●基礎定数。3年間で17,400人、2026年度5,800人を要求。
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●2026年度の実施学年は検討中(1年生から実施し、3年間かけて学年進行で実施すると想定される)。
《小学校教科担任制の推進》
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●加配定数。3年間で2,970人、2026年度990人を要求。
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●教員の持ち授業時数の軽減を図るため、小学校4年生の教科担任制の拡大と新規採用教員支援。
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●2025年度からの4年間の計画的改善の2年目。
《⼩学校の⽣徒指導担当教員の配置充実》
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●加配定数。3年間で2,478人、2026年度826人を要求。
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●18学級以上の学校数×1/2に1人加配。
《中学校の生徒指導担当教員の配置充実》
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●加配定数。3年間で1,640人、2026年度550人を要求。
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●2025年度からの4年間の計画的改善の2年目。
《学びの多様化学校への教員配置》
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●基礎定数。3年間で300人、2026度100人を要求。
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●学びの多様化学校1校に2人ずつ教員配置。
《夜間中学校への教員配置》
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●基礎定数。3年間で134人、2026年度45人を要求。
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●夜間中学校1校に2人ずつ教員配置(教頭でも可)。
《学校統合⽀援のための定数措置の新設》
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●基礎定数。3年間で750人、2026年度250人を要求。
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●統合後3年間、統合後の学校に1人教員配置。
《養護教諭の配置充実》
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●基礎定数。3年間で1,264人、2026年度421人を要求。
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●現在未配置となっている3学級未満の学校(小学校、中学校)全校に配置(487人)。
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●複数配置の基準を小学校で児童数851人以上、中学校で生徒数801人以上から、小学校で児童数751以上、中学校で生徒数701人以上と引き下げて、2人配置の学校を増やす(777人)。
《栄養教諭、栄養職員の配置改善》
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●基礎定数。3年間で30人、2026年度10人を要求。
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●⼤規模共同調理場(10,001⾷以上)に対して、現⾏の3⼈配置から4⼈配置に。
《事務職員の配置改善》
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●基礎定数。3年間で665人、2026年度は222人を要求。
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●地教⾏法に規定する共同学校事務室の機能強化。複数の共同学校事務室を統括する事務職員定数を新設。
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●複数の共同学校事務室を置く市町村への事務職員の加算として、2以上の共同学校事務室(共同実施は含まない)がある市町村に、自動的に1人の事務職員を措置。
《定年引上げに伴う教職員の特例定員措置》
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●加配定数。2026年度3,345人を要求。
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●2年に1歳ずつの定年延長により、隔年毎に退職者が生じず (2025年度末の定年退職者は生じない)、新規採用者数の平準化に支障をきたすことから実施される特例的な上乗せ措置。
2. 教職員以外の支援人材の増員
条文にある「教員以外の学校の教育活動を支援する人材を増員する」ことを反映し、スタッフ職の拡充が要求されています。
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●「教員業務支援員」の積算人数を、28,100人から2026年度は30,900人に増員。
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●「副校長・教頭マネジメント支援員」は1,300人から2026年度は1,600人に増員。
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●学習指導員等の配置は2026年度も今年度と同様の9,200人。
3. 部活動の地域展開等を円滑にすすめるための財政援助
条文にある「部活動の地域展開等を円滑にすすめるための財政的な援助を行う」ことを反映し、地域展開事業への支援と部活動指導員の配置支援が要求されています。
《部活動の地域展開等の要求》
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●休日は、2026年度から6年間の改革実行期間内に、原則として全ての部活動で地域展開の実現をめざす。
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●地域クラブの活動費等の支援(指導者謝金、事務局人件費等)、経済的困窮世帯の生徒への支援(参加費・保険料)、推進体制の整備(コーディネーターの配置、人材バンクの設置・運用等)等について、2026年度要求・要望額 は44億円+事項要求(前年度予算額37億円)。
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●「事項要求」は、現時点で事柄だけを要求し、年末までの予算編成過程で金額等を確定していくもの。
《中学校の「部活動指導員」の配置支援》
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●2025年度は16,251人(運動部:13,178人、文化部:3,073人)を配置。
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●2026年度の要求は17,680人(運動部:13,620人、文化部:4,060人)と1,429人の増員。
4.不当な要求等を行う保護者等への対応支援
条文にある「不当な要求等を行う保護者等への対応について支援を行う」ことを反映し、ハラスメントなど学校だけでは解決が難しい事案への行政による支援体制の構築が要求されています。「保護者や地域からの過剰な苦情や不当な要求など学校だけでは解決が難しい事案」に対し、経験豊かな学校管理職経験者等の活用も含め、様々な専門家と連携した行政による支援が必要であるとして、「市区町村における学校問題解決の支援体制の構築」や「都道府県における広域的な支援体制の構築」の事業を行うとしています。
26年度概算要求の課題
過去に実施された義務教育諸学校の教職員の定数改善計画は、2001年度~2005年度まで5年間かけて実施された第7次改善計画(改善総数26,900人)が最後です。
2026年度の概算要求で、「新たな『定数改善計画』」として、2026年度~2028年度までの3年間で教職員を29,621人(一部、2025年度の既改善分を含む)改善するとしたことは、長らく途絶えていた教職員定数改善計画の再開として歓迎すべき動きです。
特に、これまで加配定数での改善に留まっていたものが、自治体が見通しをもって定数配置ができる基礎定数による改善を含んでいる点も評価できます。年末までの政府予算案決定過程において、財務省もこれを認めるべきでしょう。
ただし、教員の1カ月の時間外在校等時間を平均30時間程度に削減するという目標を達成するためには、教員の持ち授業時数を軽減するための定数改善などが不十分と言わざるを得ません。給特法等の一部改正法案の修正の中で、「教育課程の編成の在り方について検討を行う」ことが含まれており、中央教育審議会で検討されている学習指導要領の見直しの中で「年間授業時数」そのものを縮減することも強く求めるものです。
また、養護教諭、栄養教職員、事務職員についても、今回の改善にとどまらず、さらなる定数改善が必要不可欠です。特に事務職員については、2024年8月の中教審答申にも書かれている、共同学校事務室への加配を原則とすることや複数配置基準の引下げなどを行う必要があります。
教員業務支援員などのスタッフ職についても、処遇の改善を含め、さらなる人員増が求められます。さらに、学校現業職員の配置を拡充するための地方財政措置上の積算予算の改善も必要です。
高校の教職員定数改善計画も2001年度~2005年度まで実施された第6次改善計画が最後です。高校の教職員定数予算は地方財政措置ですが、過去に実施された定数改善計画は、義務教育段階と高校段階で同時並行して実施されてきた経緯があります。今後、私学の無償化によって生徒の確保が難しくなる公立高校への支援策が検討されることになっていますが、35人学級の実施を含めた高校の教職員定数改善計画の策定が強く求められます。
部活動の地域移行に関する予算については、「事項要求」とされた部分があり、全容が不透明です。中学校は部活動が大きな超勤要因となっていることから、全国的に地域部活動がしっかりとすすむような予算措置、事業推進が強く望まれます。
《出典:文部科学省「教師を取り巻く環境整備について(学校における働き方改革、指導・運営体制の充実、教師の処遇改善)(アーカイブ)」》
