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【識者の視点②前編】不登校の子どもの学習支援は待ったなし―不登校を巡る真の実態に迫る
黒田 恭史(くろだ・やすふみ 京都教育大学 教育学部教授)
京都教育大学教育学部数学科教授。小学校教員時代に行った豚を飼う実践が2008年に「ブタがいた教室」として映画化。16年より学生らとともに不登校の子どもや外国人の子どものための多言語に対応した算数・数学動画コンテンツ制作を開始し、専用ホームページで無償公開している。著書に「本当は大切だけど,誰も教えてくれない算数授業50のこと」、「動画でわかる算数の教え方」(明治図書)などがある。
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前編では、日本における不登校児童生徒数のこの間の推移と、その特徴について解説し、問題の所在を明確化します。その上で、後編では、不登校児童生徒の学習支援、とりわけ算数・数学支援のあり方について解説し、具体的な支援のためのチャンネル(方策)について提案します。
不登校児童生徒数と長期欠席児童生徒数に潜むギャップ
不登校の子どもの数はここ数年急増しており、文部科学省が毎年10月頃に開示するデータから、学校現場での深刻さがひしひしと伝わってきます。下記の表は、2020年度~2023年度の小学校と中学校の不登校の児童生徒数の推移を示したものです。

令和5年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸問題に関する調査」、文部科学省初等中等教育局児童生徒課(令和6年10月)より黒田が作成
2023年度において、小学校では約13万人、中学校では約21万6千人、合計約34万6千人と過去最高を記録しています。特に小学校では、2020年度から2023年度の3年間で2倍以上の不登校児童の増加となっており、小学校現場における最大の教育課題となっています。これを単純に全国の在籍児童生徒数と比較すると、小学校は約47人に1人、中学校は約15人に1人が不登校という計算となり、小学校では3クラスに約2人の不登校児童、中学校では1クラスに約2人の不登校生徒が在籍していることになります。
しかし、この数値を学校の先生方にお話しすると、クラスにはもっと多くの不登校児童生徒数がいるとの返答をされることが少なくありません。
そこで、もう一つの指標である長期欠席児童生徒数で見てみることにします。長期欠席児童生徒数とは、不登校児童生徒数に加えて、病気欠席、経済的な理由、コロナ禍の影響、その他を含んだ数のことです。

同上資料より黒田が作成
小学校では、不登校児童数が約13万人であったのに対して、長期欠席児童数が約21万8千人と約1.67倍もの小学生が、実際には欠席している計算となります。これを先ほどと同様に全国の在籍児童生徒数と比較すると、小学校は約28人に1人、中学校は約12人に1人が長期欠席という計算となり、小学校では1クラスに約1人の長期欠席児童、中学校では1クラスに約3人の長期欠席生徒が在籍していることになります。
このように、各種報道で毎年のように取り上げられている「不登校児童生徒数」は、長期欠席児童生徒数の一部を取り上げたものであり、学校の実態とは少し離れたものであることがわかるかと思います。
都道府県別不登校児童生徒数に潜むギャップ
下記のグラフは、小・中学校を合わせた都道府県別の1,000人当たりの不登校児童生徒数と長期欠席児童生徒数を示したものです。例をあげると、北海道では不登校児童生徒数が約41.6人、長期欠席児童生徒数がそれに約15.5人を加えて約57.1人となります。
青色横線が不登校児童生徒数の平均、赤色横線が長期欠席児童生徒数の平均ですので、沖縄県や宮城県のように、不登校児童生徒数と長期欠席児童生徒数のいずれもが平均より多い県、茨城県や奈良県のように、不登校児童生徒数はほぼ平均だが長期欠席児童生徒数は平均より多い県、岡山県や高知県のように、不登校児童生徒数は平均以下だが長期欠席児童生徒数は平均より多い県のように、都道府県による違いが見られます。
すなわち、両者の分類基準が都道府県の教育委員会によって異なっている可能性があることから、全国の正確な実態を把握することは容易ではないことがわかります。

同上資料より黒田が作成
長期化する不登校児童生徒の実態
データを分析すると、もう一つの厳しい現実が見えてきます。不登校が長期化する傾向に年々拍車がかかっているという事実です。また、小学校低学年でその傾向が顕著である点にも、私たちはしっかりと目を向けていかなくてはなりません。
下記の表は、2021年度~2023年度までの、前年度から不登校が継続する児童生徒数の推移です。したがって、小学校1年生のデータはありません。ここで増加率が顕著なのが、小学校2年生と3年生(黄色個所)で、不登校の課題が、まさに小学校低学年に重点が移行しつつあることが読み取れます。

同上資料より黒田が作成
不登校の子どもたちの低年齢化は、学習面にも大きな影響を及ぼします。小学校低学年段階での基本となる学力が身についていないと、日常生活や将来の進路選択などにおいて不利益となることが少なくありません。加えて、それらの学力を後の学年で挽回することは容易ではありませんし、学力差は確実に開く傾向に向かうと予想されます。個々の先生方やご家庭の努力だけでなく、全国の不登校の子どもたちの学力を支えるための学習支援システムが、今まさに希求されているといえます。
後編では、学習支援システムのあり方について紹介したいと思います。
