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2025/09/01 教育関連記事

【識者の視点④前編】外国につながる子どもの学習支援は子どものもつ母語の力を活かして― 日本に在住する外国につながる子どもの実態と打開策

黒田 恭史(くろだ・やすふみ 京都教育大学 教育学部教授)

京都教育大学教育学部数学科教授。小学校教員時代に行った豚を飼う実践が2008年に「ブタがいた教室」として映画化。16年より学生らとともに不登校の子どもや外国につながる子どものための多言語に対応した算数・数学動画コンテンツ制作を開始し、専用ホームページで無償公開している。著書に「本当は大切だけど,誰も教えてくれない算数授業50のこと」、「動画でわかる算数の教え方」(明治図書)などがある。

 


前編では、日本語指導が必要な外国につながる子どもの推移について概観し、これまで制作・公開してきた多言語対応版算数・数学動画教材について解説します。その上で、後編では、多言語対応版算数・数学動画教材の効果と限界について触れるとともに、日本語で授業を行っている通常学級におけるリアルタイム多言語翻訳システムを用いた外国につながる子どもの学習支援について解説します。

 

日本に在住する外国人の実態

出入国在留管理庁によると、日本に在住する外国人の人口は2024年末で376万8977人となりました。これは、都道府県別人口と比較すると、9位の北海道(約504万人)と10位の静岡県(約352万人)の間に位置します。また、10年前(2014年末:212万1831人)と比較すると、その人口は約1.78倍まで増加しています。さらに、2013年末から2014年末の増加率が約3ポイントであるのに対して、2023年末から2024年末の増加率が約10ポイントと、コロナ禍で一旦停滞したものの近年の増加率は上昇傾向にあります。

 

国籍別の割合で見てみると、中国(1位:23.2%)、ベトナム(2位:16.8%)、韓国(3位:10.9%)の3つの国で、約半分(50.9%)を占めています。その後、フィリピン(4位:9.1%)、ネパール(5位:6.2%)、ブラジル(6位:5.6%)インドネシア(7位:5.3%)、ミャンマー(8位:3.6%)、台湾(9位:1.9%)、米国(10位:1.8%)と続きます。

 

年代別の割合で見てみると、20~29歳(1位:33.1%)、30~39歳(2位:22.8%)の2つの年代で、半数以上(55.9%)を占めています。その後、40~49歳(3位:13.3%)、50~59歳(4位:9.5%)、10~19歳(5位:6.3%)、0~9歳(6位:5.6%)と続きます。こうした年齢構成を見る限り、今後は0~9歳の年代の大幅な増加が見込まれます。

 

日本に在住する若い世代の外国人の人口はさらに増加することが予想され、多文化共生に向けた、経済、生活、医療、教育、文化の面でのとりくみが重要となってきます。

 

出典:出入国在留管理庁「令和6年末現在における在留外国人数について」2025年3月14日報道発表資料、e-Stat統計で見る日本「国別・地域別 年齢(5歳階級)・性別 在留外国人 2024年12月」より

 

日本に在住する外国につながる子どもの実態

日本に在住する外国人人口の増加に伴い、日本語指導が必要な外国につながる子どもも増加しています。文部科学省によると、公立学校における日本語指導が必要な児童生徒数は2023年度(2023年5月1日)で6万9123人(外国籍と日本国籍の合計)となりました。9年前(2014年:3万3184人)と比較すると、その人口は約2.08倍まで増加するなど、外国人全体の増加割合よりも高くなっています。

 

 

これを言語別の割合で見てみると、中国語(1位:19.9%)、ブラジルポルトガル語(2位:18.2%)、フィリピノ語(3位:16.1%)、日本語(4位:8.9%)、英語(5位:7.1%)、スペイン語(6位:5.9%)、ベトナム語(7位:5.8%)、韓国・朝鮮語(8位:1.0%)となります。外国人全体の人口割合と比較すると、ブラジルポルトガル語、英語、スペイン語の割合が高くなっています。加えて注目すべきことは、その他の言語(26.1%)の割合の多さです。つまり多言語化が全国的に進行していることを、これらのデータは物語っています。

 

出典:文部科学省:「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(令和5年度)」の結果について(令和6年8月)より

 

教員養成大学における外国につながる子どもへの対応

 私の勤務する京都教育大学では、外国につながる子どもの教育を学ぶためのいくつかの科目を開講し、学習や生活の支援に向けた基礎知識の習得をめざしています。

 

具体的には「帰国/外国籍児童・生徒教育の研究」、「児童・生徒のための日本語教育論」、「日本語学習支援・実地研究」、「国際教育論」などの科目群です。これらの科目群では、外国につながる子どもたちに対する教育の内容や方法を知るだけでなく、日本の子どもたちへの教育についても学びます。日本の子どもたちが外国につながる子どもと共に学ぶことでグローバル社会や共生社会の一員として必要な力を身に付けられるようにするにはどうすればよいのかという観点も重要だからです。

 

また、大学必修科目の「教職論」の中で、1コマ、外国につながる子どもについて学びます。これからは、すべての学校教員が外国につながる子どもについて最低限の知識を身に付けて教壇に立つことが求められています。

 

多言語版算数・数学動画教材の制作と公開

2016年から不登校の子どもを対象として小学校算数から高等学校数学までの動画教材の制作を開始しました。【識者の視点②後編】参照

 

 

当時、私の研究室には韓国からの教員留学生が在籍しており、パワーポイントで制作した日本語版の音声入りアニメーションスライドを、韓国語に翻訳することはできるかを尋ねると、翌日には完璧に翻訳された韓国語の音声入りアニメーションスライドを制作してくれました。

 

当時、京都府八幡市内の小学校と算数科の共同研究をしていたのですが、その小学校には多数の外国につながる子どもが在籍していて、何とか母語での学習が可能にならないかと感じていたところでした。早速、プロジェクトを立ち上げ、各種補助金を受けながら、全国の大学の留学生に翻訳を依頼することにしました。

 

これらは、文部科学省のホームページ内にある「きみの好き応援サイト たのしくまなび隊」の「外国とつながりのある方向けコンテンツ」において、「多言語翻訳算数・数学サイト (京都教育大学 黒田研究室)」として紹介されており、全国で活用されています。

 

後編では、多言語対応版算数・数学動画教材の効果と限界、そしてリアルタイム多言語翻訳システムについて紹介したいと思います。

 

 

 

 

 

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