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2025/06/30 教育関連記事

教職員の8割以上が「不当な要求等」を認識 日教組調査で明らかになった教育現場の現状

近年、さまざまな業種で働く人々を悩ませている「カスタマーハラスメント(カスハラ)」。日教組では、「カスハラ」という言葉を使わず、「不当な要求等」として取り扱うこととしています。一方、この問題は残念ながら教育現場においても、教職員を疲弊させている実態が、日本教職員組合が実施した調査の結果から明らかになりました。

 

今回は、そのデータと現場の生の声をお伝えすることで、問題の深刻さを共有し、教職員が安心して教育に専念できる環境整備に向けて、共に考えるきっかけにしたいと考えています。

 

「不当な要求等」は決して他人事ではない ― 調査データが語る学校現場の現状

 

まず、今回の調査で明らかになったのは、教育現場における「不当な要求等」がいかに広範囲に及んでいるかという点です。

 

調査に回答した4,548名の教職員のうち、不当な要求や暴言などを自身が「受けたことがある」と回答したのは2,492人と半数を超え、「見聞きしたことがある」という方を合わせると8割以上と、大多数の教職員が「不当な要求等」を身近な問題として認識している状況がうかがえます。

 

 

「不当な要求等」を受けた頻度についても見過ごせません。「ほぼ毎日」「週に数回」といった高い頻度で被害にあっている教職員が1割近くも存在し、精神的な負担が継続している様子が想像されます。また、4割近くの教職員が「年に数回」と回答していることから、一度きりの出来事ではなく、断続的に繰り返されるケースも多いようです。

 

「うちの子だけをみて」「担任を替えろ!」― 心えぐる言葉と理不尽な要求の数々

 

では、実際にどのような行為が「不当な要求等」として教職員を苦しめているのでしょうか。調査に寄せられた自由記述からは、耳を疑うような理不尽な要求や、心を深く傷つける暴言の数々が浮かび上がってきました。

 

例えば、「うちの子だけを特別扱いしてほしい」「テストの点数が悪いのは学校のせいだ。成績を上げろ」「深夜でも電話に出て対応しろ」「気に入らないから担任を替えろ」「プリントを毎日自宅まで届けに来い」といった、明らかに学校や教職員の責任範囲を超える一方的な要求。

 

さらには、「給料泥棒」「税金で食わせてもらっているくせに」「お前のような教師は辞めろ」といった人格を否定するような暴言や罵声。中には、何時間にもわたって電話で詰問されたり、学校に居座られたりするケースや、SNS上で事実無根の情報を流されるなどの悪質な事例も報告されました。

 

ある教職員は、「保護者の要求に応えようと努力しても、次から次へと新たな要求が出てきて際限がない。まるでサンドバッグのようだ」と、その疲弊感を吐露しています。また、別の教職員は「子どものためを思っての指導に対し、『虐待だ』『不公平だ』と一方的に決めつけられ、弁明の機会すら与えられないこともあった」と、教育者としての尊厳を傷つけられた経験を語っています。

 

これらの声は氷山の一角であり、多くの教職員が、教育的指導や正当な意見・要望と、理不尽な要求やハラスメントとの境界線で悩み、精神的に追い詰められている現状を物語っています。

 

すり減る心、奪われる教育への情熱 ― 「不当な要求等」がもたらす深刻な影響

 

こうした「不当な要求等」は、教職員の心身に深刻な影響を及ぼしています。「不当な要求等」を受けたことによる影響として、「仕事が滞る」「メンタルの不調」「モチベーションの低下」といったネガティブな影響を感じていることが分かりました。

 

また、「他の児童生徒への対応や教材研究など、本来の業務に支障が出ている」といった回答も多く、「不当な要求等」の対応に時間とエネルギーを奪われ、教育活動の質の低下を招きかねない状況も懸念されます。中には、「教職を辞めたいと思った」「実際に休職や退職に至った同僚がいる」といった、より深刻なケースも見受けられました。

 

「不当な要求等」は、被害を受けた教職員個人だけの問題ではありません。同僚が心無い言葉を浴びせられているのを見聞きすることで、職場の雰囲気は悪化し、他の教職員の精神的な負担も増大します。そして何より、教職員が疲弊し、安心して子どもたちと向き合えない状況は、最終的に子どもたちの学びや成長の機会を奪うことにも繋がりかねません。

 

教職員を孤立させないために ― 今こそ求められる組織的な対応と支援

 

教職員を「不当な要求等」から守り、安心して教育活動に専念できる環境を整えるには、個々の努力に頼らない組織的な対応と支援が不可欠です。日本教職員組合の調査では、被害時に教職員が最も必要だと感じているのは「学校・教育委員会としての組織的な対応」でした。

 

 

具体的には、一人の教職員が対応するのではなく、管理職や複数の教職員でチームとして対応する仕組みの構築、クレームや要望を総合的に受け付ける専門窓口の設置、そして対応マニュアルの作成と全教職員への周知徹底が求められています。

 

さらに、弁護士やスクールロイヤーといった法律の専門家が相談できる体制の整備や、悪質なケースでは警察への相談や法的措置も辞さない毅然とした対応が必要です。保護者や地域住民に対しては、学校の役割や教職員の業務範囲、ハラスメントに当たる行為について理解を促す啓発活動も重要です。

 

これらの現場の声は、もはや個々の教職員の努力や我慢だけでは対応しきれない状況を示しています。学校設置者である教育委員会や国は、今回の調査結果を真摯に受け止め、具体的かつ実効性のある対策を早急に講じる責任があります。

 

教職員が安心して教育に専念できる環境が整ってこそ、子どもたちは質の高い学びと成長の機会を得ることができます。教職員個人にとどまらず、社会全体でとりくむべき喫緊の課題です。

 

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