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2025/06/30 全国の教職員組合情報

JTU弁護団コラム(第12回)~デートDV~

1.今の時代、「DV」(ドメスティック・バイオレンス)という言葉を知らない方はほとんどいないでしょう。では、「デートDV」はどうでしょう?これまで聞いたことがない、という方もいらっしゃるかもしれませんね。これは、DVのなかでも、交際相手から振るわれる暴力のことをいいます。

 

2.「DV」は、殴る、蹴るといった身体的暴力に限られません。心の暴力、性の暴力、経済的暴力なども、DVにあたります。例えば…

・バカ、無能などと暴言を吐く。

・行動を監視する

・即レスを強要する

・性行為を強要する

・裸の写真を無理やり撮影する

・避妊を拒否する

・無理やりAV動画などを見せる

・いつもデート費用を払わせられる

といった言動も、デートDVにあたる可能性が高いでしょう。

 

3.2020年に実施された内閣府の調査で、女性の約6人に1人、男性の約12人に1人が、デートDVの被害経験があることがわかりました。皆様の大切な生徒さんも、これから先、被害者・加害者となってしまうかもしれませんし、今、この瞬間にも苦しんでいるかもしれません。

 

4.このように、デートDVは深刻な社会問題となり、特にその防止(予防)教育の重要性が注目されるようになりました。「デートDVの出張授業をしてほしい」という、教育現場から弁護士会への要請も増えています。また、文部科学省も、子どもたちを性暴力の被害者、加害者、傍観者にしないための教育として2023年度から、「生命(いのち)の安全教育」を全国で推進することとしましたが、その教材・指導の手引きでは、デートDVも取り上げられています。

 

5.ここで、高校1年生のAさんの話をご紹介しましょう。Aさんは、1学年上の憧れの先輩Bから告白されました。周囲からも「Bは爽やかで優しそうな人だね」と祝福されながら、交際をスタートしたのですが…

 

①Bと一緒にいるとき、バイトの先輩からSNSが届きました。内容は仕事のことだったのに、Bは機嫌が悪くなり、「他の男とはSNSとかメールをしないでほしい。もし連絡が来ても返信しないでほしい。」と頼んできました。私は、Bはそれほど私のことが好きでいてくれるのだなと思い、いいよと答えました。

その後、Bからは、さらに男友だちや先輩などの連絡先を消去するように言われました。私は、さすがにヤキモチがひどいのではと思いながらも、Bに嫌われたくなくて、その場で消去しました。でも、後でまたデータを戻しました。

ある日、Bは私のスマホをチェックして、私が男友だちとSNSをしたことを知り、突然スマホを道路に投げ捨てて壊しました。Bは、「Aが約束を守って くれなくってショックだったんだ。ごめん。」と謝り、私も悪かったなと思い、Bを許してあげました。

 

②私は、週末に仲良しグループで遊びに行く計画を立てていました。Bにその話をすると、「その日は俺と一緒に過ごしてよ。断って。」と言われました。私が、約束だから無理と言うと、機嫌が悪くなりました。私はグループの約束を断りました。

 

私は、だんだん友達と疎遠になっていき、Bとばかりいるようになりました。

 

③Bは、付き合い始めは、「オマエはドジだから、オレが付いていないと心配だなあ」程度の軽口をたたく程度だったのですが、だんだん、「オマエはダメな奴」、「全部オレの言うとおりにしておけば間違いない」などと口調が変わってきました。私も、自分に自信がなくなり、Bに見捨てられないように、Bの言うとおりにしようと思いました。

 

④Bは、私のバイト中も、「心配だから1時間に1回は連絡しろ」と言い、私が連絡を忘れると、後で暴力を振るってきました。Bが何度も私に電話をしたのに私がそれに気付かなかったときも、また、Bに相談もしないで勝手に髪型を変えてしまったときも暴力を振るわれました。暴力は、はじめの頃は物に当たったり、体を小突く程度だったのですが、だんだんとエスカレートしてきて、蹴られたり、殴られたりするようになりました。ただ、殴るときは外から見えない場所を殴るので、周囲には気が付かれませんでした。暴力の後は、Bは涙を流しながら謝罪し、「Aが心配でおかしくなって」、「Aがいないと俺は生きていけない」、「もう二度としない」と言います。一生懸命私の怪我の看病をしてくれて、お詫びに私の好きな物を買ってくれたりしました。

 

⑤友だちには何度か相談しようとしたことがありますが、最近疎遠になっていたので相談しにくく、ぐずぐずと引き延ばしていました。暴力の後、思い切って相談したのですが、「あの優しそうなBが暴力を振るうなんて信じられない。Aがよっぽど傷つけたんじゃないの?」とか、「なんで別れないの。今からでもすぐに別れなよ。」と言われるだけで、どうしていいかわかりません。

 

Bが好き、嫌われたくない、本当は優しい人だという気持ちもありますし、同じ学校にいるので別れ話をすると暴力を振るわれるのではないかという恐怖もあります。

 

6.Aさんの話は、私がこれまで弁護士として経験した数々の事例をミックスして作ったものです。

出張授業では子どもたちに、こういった事例をもとに、

《DV加害者になりそうな人は、見てすぐわかる?》

・Bの言い分は正当?

・Bの言い分を聞いてAがどう感じたと思う?

・自分がAだったら、どうすればよかった?

・自分が友だちだったら、どういう言葉がけをする?

といった問いかけをして、一緒に考えてもらいます。

 

 

7.Aさんのようなケースは、④の時点で「暴力のサイクル」にはまっています。実際に、ここまでくると抜け出すのは非常に困難です。

まずは、被害者・加害者自身が、初期の段階で、「これは(デート)DVではないか」と気が付くことが大切で、その意味で子どもたちに対する防止・予防教育はとても重要です。

また、上記は高校生の例でしたが、中学生が被害に遭うこともあります。中・高生は親や担任に相談することを躊躇することが多く、周囲の大人の方で気付いてあげることも大切です。

教職員の皆様にも、これを機に、デートDVについて関心を持ち、理解を深めていただくとともに、被害・加害を発見した場合の対応策も職場で検討・共有していただければと思います。

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