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清水中央執行委員長より「文月に想う」

2020/07/31

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「文月に想う」
7月31日になって、ようやく九州・四国・中国地方に続き、近畿地方まで梅雨明けが発表されました。
7月は、熊本県をはじめ九州各県から岐阜県・長野県・山形県など、全国各地で豪雨による河川の氾濫や土砂災害などが発生し、尊い命が失われました。謹んで哀悼の意を表するとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
全国を対象に発令されていた緊急事態宣言は5月に全面解除され、6月には都道府県をまたぐ移動自粛要請も緩和されましたが、7月下旬に至り新型コロナウイルス感染症拡大の危機は再び全国に急迫しています。感染拡大抑止を最優先に、働く者や生活者の立場から、すべての仲間の力を結集して、未曽有の難局を乗り越えていくことが必要です。

例年なら夏空の暑い日差しの中、学校や子どもたちにとって夏休みを迎える時季ですが、今年は8月に入っても全国各地で様々な形で、感染予防に加えて暑さ対策にも気を配りながら、多くの学校で授業が行われています。文科省調査では、全国1,811の教育委員会のうち、小中学校を所掌する教育委員会では約95%、高校を所掌する教育委員では約93%が夏休みの短縮を回答しています。小・中・高・特別支援学校とも、例年なら25~46日間だった夏休みが、今年は16日間や23日間程度とする自治体が多くなっています。小中学校で見ると、最も短いところは9日間ですが、土日祝日も含んでいるので、平日は4日間だけです。高校で見ると、最も短いところは4日間です。大阪府立高校では例年42日間の夏休みを、今年は10日間とし、32日間の短縮を行います。私立学校も短縮する学校が多く、最も短い例はお盆の4日間ですが、50日近くとする学校もあり、まちまちです。
休校中の学習の遅れを取り戻すため、学習時間・授業日数の確保が必要ということもあるでしょう。一方で、2018年には、命に係わるほどの記録的な猛暑で、教育活動中に熱中症で子どもが亡くなった痛ましい事件があったことを忘れてはなりません。その年の補正予算も含めて、各自治体で学校の教室や体育館などへのエアコン設置がすすめられていますが、猛暑の中のマスクをしての授業や登下校などは、熱中症のリスクを高めます。また、クーラーをかけても同時に窓を開けての換気も必要です。また、給食の実施は小中学校で95%、特別支援学校で92%となっており、食材の管理や食中毒への対応などに注意して、献立や調理方法の検討・工夫が行われていますが、もともと想定していない夏の給食実施にかかわる調理員の熱中症対策も大きな課題となっています。さらに、学校再開に伴って部活動も順次、実施される自治体が増えていますが、その分、感染拡大や熱中症のリスクが心配されます。
そもそも子どもたちが楽しみにしていた夏休み。旅行に行ったり、祖父母など親戚の家に帰省したり、お祭りや花火大会があったり、海やプールに友人と出かけたり、部活動を頑張る子どももいるでしょう。高校生や大学生などではアルバイトに励む人もいるでしょう。子どもの健康にとっても、ゆとりある生活や休養は大切です。学校での学び以外の体験をしたり、自分の好きなことに打ち込んだりする時間が必要です。ともかく授業を詰め込めば良いという話ではないと考えます。また、教職員が研修したり、自ら研鑽を積むことのできる時間を確保したりすることも必要です。

日本と欧米の教育には根本的な違いがあるとよく言われます。英語の教育は「education」。語源はラテン語で「e(外へ)」「ducere(導く)」という二つを意味しています。欧米の教育は「教えること」ではなく「可能性を外に導き出すこと」が重視されます。また、日本でも個性の尊重が言われていますが、欧米では個性尊重は当たり前で、大切なのは個性を「伸ばす」こと。型にはめるのではなく、個性に合わせて個々の才能を伸ばし、自主性を重んじることです。みんな一緒ではなく、その子の能力に合わせた教育を行います。日本では「4掛ける6は何」と聞き、答えは「24」に特定されます。英国では「掛けて24になるのは何」という聞き方。答えは唯一ではなく、異なる答えを考え出そうとする力を重んじます。日本では勉強は「覚えるもの」。欧米では記憶力を問うテストはほとんどなく、自分が得た知識を活用することや考えることが問われます。知識や技能・技術を教えるだけの「インストラクター」で終わることなく、子どもの持っているものを引き出す人、そんな「エデュケーター」としての教職員をめざしてほしいと思います。
欧米では、学校は学問を、教会では道徳や倫理を学び、野外活動やボランティアは地域で行い、躾は家庭でと言われています。その「しつけ」も、日本では「悪いことを叱る」。欧米では「良いことを褒める」で、子どもを萎縮した中で怯えさせないことだとされています。
新型コロナウイルス感染症による休業の影響で、子どもの学習保障の観点から、夏休みが短縮され、学習時間・授業時数の確保が必要とされていますが、九九の暗記だけで終わることなく、「掛けて24になるのは何」、そんな訊き方の授業も大切にしたいと思います。

私は、4月の誕生日で61歳になりました。3月の年度末が退職年齢で同期の仲間が第一線を退きました。「校長として学校を一つ任せてもらう」というのが私の新採の時に抱いた夢でしたが、ともに勤めた多くの仲間が代りにその夢を叶えてくれました。今は、卒業生4クラス、学級担任だった2クラス、国語を教えたりしてともに過ごした学年の4千人余りの子どもたち、剣道・柔道・ソフトテニス・サッカー部の顧問で関わった子どもたち、そして、19年間ともに働いた同僚のことを想い出します。
源頼朝の重鎮であった千葉氏の居館跡が現在、千葉市の亥鼻公園となっていますが、そこに、千葉県教職員組合の初代中央執行委員長で、千葉県議会議員から参議院議員(5期24年)、参議院副議長を務めた加瀬完先生の詠まれた和歌の碑があります。その和歌を紹介いたします。

教師とは悲しきものか老いつつも ひとりひとりの児ら忘られず  加瀬 完

日本教職員組合
中央執行委員長  清水 秀行

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