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清水中央執行委員長より「葉月に想う」

2020/08/31

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葉月に想う

8月末を迎え、短縮された学校の夏休みも終了し、今後、授業や行事などの教育活動、部活動、高校・大学の寮での生活など、子どもや若者を取り巻く感染リスクに対する様々な実情が懸念されます。
文科省の「教育相談体制の充実について」では、「学校に行くのを嫌がったり、登校前に体調不良を訴えたりする『登校しぶり』・・・夏休み明けは、子どもの気持ちが不安定になりやすく、『登校渋り』が起きやすいタイミングでもある」と指摘しています。新型コロナウイルス感染症の影響で、例年にない形で夏休みを過ごさざるを得なかった子どもたちの気持ちはいかばかりかと思います。「不登校になることを恐れ、どうしても行かせなければ、と保護者や教職員が焦ると、子どもにも伝わります。ときには休んでも大丈夫、と大きく構えてあげられると、子どもにとっても逃げ場を作ってあげることができる」と述べています。
九州大学が6月、新型コロナウイルス感染症による学生生活への影響について調査をしたところ、「孤独感や孤立感を感じる」と答えた学生が約40%に上りました。さらに、「この一カ月、友人と直接話をしたか」の問いに、「全くしない」と答えた学生が約15%もいました。5月から始まった前期の講義は原則オンラインで、学内への立ち入りやサークル活動なども制限され、多くの学生がキャンパスに通学できていませんでした。入学式も行われていない1年生の多くは、入学してから1回も大学に行っていない状況でした。約50%の学生が「体調不良がある」と答え、このうち、「疲れる、根気がない」が全体の約30%と最も多く、次いで「寝つきが悪い、眠りが浅い、よく眠れない」と続きました。同大学では、「キャンパスライフ・健康支援センター」がWeb相談を立ち上げ、対応しています。また、1年生には、「キャンパスに通学できる日」を設定したり、5~6人に担当のチューターを配置したりしています。
高校や大学で集団感染が発生したことに伴い、在学の高校生や学生がアルバイト先から不当な扱いを受けたとの報道がありました。また、教育実習先の学校から実習の中止を伝えられたり、事前に検査を受けることが課せられたり、との報道もありました。事実が報道の通りであったなら、極めて残念なことです。
新型コロナウイルス感染症に関わって、学校や地域、そして子どもたちの中にも、誤解や偏見による差別、誹謗中傷、いじめなどの言動が現れています。私たちは、「思いやりの気持ち」「支えている人たちへの敬意や感謝」「人々の優しさ」などを大切にするとともに、日教組人権教育指針にもとづき、差別やいじめをしない、許さない人権教育をすべての学校で継続的にとりくんでいく必要があります。
さて、今年の夏はいかが過ごされたでしょうか。本来なら東京オリンピックが終了し、今はパラリンピックの競技真っ最中のはずでした。今年は夏の甲子園大会も中止となり、春の選抜で試合ができなかった学校による「甲子園高校野球交流試合」が行われました。日本教職員組合の専門部の夏季全国研究集会なども中止となりました。被爆75周年の節目の広島・長崎の原水禁世界大会、敗戦の日の式典も例年にない形で開催されました。そして、7年8カ月もの連続在任期間で歴代最長となった安倍首相の辞任が表明され、長期政権に終止符が打たれた夏でした。9月には新しい首相が選ばれ、10月にも解散総選挙があるかもしれません。しかし、今、最も必要なことは、新型コロナウイルス感染症の早期収束や、直面する雇用・生活危機などくらしと経済を直撃する課題への万全の対策です。
立憲民主党と国民民主党は解党して「合流」し、社会保障を立て直す国民会議と無所属フォーラムの議員も加わって9月に新党が結党されます。新型コロナウイルス感染症拡大の深刻な危機にさらされ、日本の社会や経済の様々な脆弱さが露呈しました。私たちは、働く者・生活者の立場に立った、一人ひとりの命とくらしを守り抜くことを社会・経済・政治の基軸に据えて、ポストコロナ・ウィズコロナの社会像や基本理念を描いていくことが重要となります。そして、子どもたちのためのゆたかな教育が、社会の真ん中で語られることを期待したいです。
8月7日には、暦の上では「立秋」を迎えましたが、今年は、本当に猛暑の夏が続きました。マスクを着用する機会も多く、適切な熱中症対策が求められました。それでも、東京では朝晩、少しずつ過ごしやすくなりました。私の好きな藤原敏行の和歌があります。平安時代前期の「古今和歌集」の四季を収めた秋の部の巻頭歌に選ばれている和歌です。

秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる

秋が来たと、はっきりとは見えない、わからないけれど、爽やかな風の音や肌に感じる風で、秋の訪れに、はっと気付かされたことよ。
8月31日、東京にある「としまえん」が94年の歴史に幕を下ろしました。「流れるプール」は日本で初めての開設だったとのことです。短かった夏休みでしたが、密を避けながら、プールで、川で、海で、湖で、暑さ厳しい夏を乗り越えた子どもたちもいたことと思います。
来年は、花火も夏祭りも、帰省も旅行も、部活動の大会もコンクールも、日常がそのまま戻って子くることを祈ります。

水しぶき あがる河童の 笑い声

日本教職員組合
中央執行委員長  清水 秀行

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