弁護団コラム

弁護団コラム(第16回)~公務災害4(最終回)~

2023年10月31日
Q: 公務災害について、前回までは、通勤中のけが(被災)を中心に説明していただきました。今回
  は、学校での被災についてお尋ねしたいと思います。例えば、勤務先の学校で転んでけがをしたような場合、すべて公務災害として補償してもらえるのでしょうか。
A: 残念ながら、そうではありません。公務上の災害として補償されるためには、①公務遂行中に災
  害が発生したこと(公務遂行性)②公務と負傷又は疾病との間に相当因果関係があること(公務起因性)の、2つの要件を満たす必要があります。これらの要件を満たさなければ、学校内での被災であっても補償はしてもらえません。
Q: となると、休憩時間中にけがをしたような場合は、①の公務遂行性が認められない、ということ
  になるのでしょうか?
A: 休憩時間中は職務から解放されて自由な行動が許されているので、原則として公務遂行性が認
  められません。ただ、例えば、体育祭に向けて生徒と練習をしているときや、次の授業の準備や後片付けをしているときにけがをしたのであれば、公務遂行中の被災と評価される可能性が高いでしょう。
Q: 休憩時間にトイレに行く途中、階段から落ちてけがをした場合はどうでしょう?
A: 生理的行為は職務遂行に不可欠ですよね。休憩時間中であっても、原則として、公務遂行性が認
  められます。
Q: 生徒と一緒に給食を食べている際に食中毒に遭った場合は、公務災害の対象となりますか?
A: 学級担任は、学級指導としての給食指導を職務の一つに含むことができます。この場合、給食指
  導中も勤務時間の扱いにされていれば、公務遂行中の事故となります。
Q: これまでの質問は、①の公務遂行性についてのものでしたが、②の公務起因性は、どのような場
  合に問題となるのでしょう?
A: 例えば、公務上の災害で左足を骨折して自宅療養中、その治療のため通院中に 事故に遭って右
  足を骨折してしまった、というような二次災害の場合ですね。

この場合、最初の公務上の災害がなければ、通院をする必要もなく、事故に遭って右足を骨折することはなかったとはいえます(「あれなければこれなし」。これを「条件関係」とか「事実的因果関係」といいます)。

ただ、後の事故による骨折を公務上の災害というためには、最初の公務上の災害から後の事故による骨折が生じることが、社会通念上相当(その行為から、通常その結果が生じる)と評価されないといけません(相当因果関係)。相当因果関係が認められるかはケースによって異なり、裁判でもよく争点になっています。

例えば、右足骨折の歩行練習中に転倒して左足を骨折した場合であれば、相当因果関係があるとして公務起因性が認められる可能性がありますが、通院中に交通事故に遭うことは通常とは言い難く、公務起因性は否定される可能性が高いでしょう。

Q: なるほど。こういった、線引きが難しいケースについては、どうしたらよいのでしょう?
A: 自己判断で諦めるのではなく、勤務先の公務災害担当者に相談しながら申請してみてはいかが
  でしょうか。組合や弁護士にも気軽に相談してくださいね。

 

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