弁護団コラム

JTU弁護団コラム(第4回) 校則について考える

2021年07月07日

<司会者>
新聞等でブラック校則の記事が取り上げられることが多くなっています。そこで、今日は、校則の見直しというテーマで、教員、生徒、保護者、弁護士の方々に対談していただきたいと思います。早速ですが、なぜ今、校則の問題が指摘されているのでしょうか。

<教員>
生徒の下着の色、靴下の色や長さ、あるいは髪の毛の色など、かつて学校が荒れていた時代に管理のため事細かに作った校則が時代遅れになったからではないでしょうか。

<司会者>
時代遅れとはどういうことですか。

<教員>
生徒や保護者の多様なライフスタイルに合わないという意味です。だから生徒や保護者からクレームが出て、報道でも取り上げられました。

<司会者>
そうすると、現代のライフスタイルに合うように、例えば、公立の高等学校の学校内で生徒がスマートフォンを何時でも自由に使うことも認めることになりますか。

<教員>
いいえ。それを許したら、授業中にスマートフォンを使う生徒が出て、授業が成り立たなくなります。授業中のスマートフォンの使用は校則で禁止すべきです。

<司会者>
では、下着の色、靴下の色や長さの指定については、どう思いますか。

<生徒>
下着の色、靴下の色や長さは個人が本来自由に決めるべきことですし、高校生であれば自主的な判断ができるはずですから、下着の色、靴下の色や長さを学校が指定するのは行き過ぎだと思います。

<弁護士>
校則には生徒の権利や自由を制限する性質があることを考えると、校則を定めることが許されるのは、①「児童生徒が健全な学校生活を営み、より良く成長・発達していく」という教育目的を達成するために必要で、かつ②その内容・程度が合理的な範囲を超えない場合に限られます。
例えば、下着の色、靴下の色や長さの違いで、高等学校の授業や諸活動に支障が生じることは普通ありませんから、校則を作る必要性はなく、校則で決めることは不適切と言えるのではないでしょうか。
また、授業中のスマートフォン使用を禁止する校則は、授業に支障が生じさせないという教育目的を達成するために必要とはいえますが、学校外も含めて使用を一切禁止する校則は、学校教育とは無関係の学校外での使用まで禁止しているので合理的な範囲を超えており不適切です。

<司会者>
では、今度は保護者の方にお聞きしますが、学校へのスマートフォンの持ち込みを禁止する校則はどうでしょうか。

<保護者>
スマートフォンを家族との連絡手段に使っている子どもがいますので、持ち込み禁止は不合理ではないでしょうか。

<司会者>
それなら持ち込みは認めて、学校内での使用をすべて禁止することはどうでしょうか。

<保護者>
学校の授業や諸活動への支障を考えると、授業中の使用だけを禁止すればいいようにも思いますが。

<教員>
高校生の場合、授業時間外のスマートフォン使用の判断を生徒に委ねることは、生徒の自律性の涵養という大切な教育目的にもつながる利点もあります。しかし、例えば、小学校のことを考えると、学校内での使用を原則禁止にしておかないと、つい授業と休み時間の区別なく使ってしまう子どもがいるかもしれません。そうすると、子どもの学習に影響が出てしまいます。ですから、自律的な判断ができる子どもの年齢かどうかで区別してもいいと思います。

<弁護士>
そうですね。校則の必要性や合理性は、子どもの成熟度に従い、小学校、中学校、高等学校という教育段階によっても変わるはずです。また、国公立学校と私立学校を比較すると、私立学校は、建学の精神に基づく独自の校風や教育方針などが重視され、生徒も私学の校風や教育方針を理解し希望して入学していると言えるため、校則の必要性・合理性の範囲が広く認められる傾向にあります。髪の毛に関する校則は、かつての丸刈り訴訟や最近の髪黒染め指導訴訟などの事例を通じて生徒の側からの問題提起が続いていますので、これまでお話しした視点を踏まえた見直しの議論が必要だと思います。

<保護者>
最近でも、おかしな校則ができているのはどうしてなのでしょうか。

<生徒>
校則を作るときに、私たち生徒の意見を聞いていないからではないでしょうか。意見を聞かれれば、生徒は不合理な校則には反対すると思います。学校の授業で子どもの権利条約が取り上げられたときに、子どもには意見表明権があると教えてもらったことが印象に残っています。

<弁護士>
子どもの意見表明権は、「自己の意見を形成する能力のある子どもは、その子どもに影響を及ぼす全ての事項について自由に自己の意見を表明する権利がある」(子どもの権利条約12条)という内容です。校則の作成や見直しでは、生徒や保護者の意見を取り入れながら、学校での教育目的を達成するために必要かつ合理的な範囲内の内容になっているかを検討することが大切です。校則は子どもたちの学校での学びを保障するための必要最小限のルールですから、校則の在り方の議論を通じて、子どもたちが校則の意義を理解することが最も重要だと思います。

<司会者>
今までのお話を聞いて、①校則には生徒の自由や権利を制限する性格があること、②校則は学校教育に必要かつ合理的な範囲内でなければならないこと、③校則の必要性や合理性は、小学校・中学校・高等学校という教育段階や国公立学校・私立学校という設置主体の違いにより異なること、④校則の作成や見直しに際しては、生徒や保護者の意見を取り入れることが重要であることなどがわかりました。みなさんありがとうございました。

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