弁護団コラム

JTU弁護団コラム(第5回) 給食費の徴収について

2021年09月15日

<Q>
小学校で、経済的に困窮している様子はないのに給食費を払わない保護者がいます。このような場合、学校としてはどのように対処すべきでしょうか。

今回は、A教諭とB弁護士の対話形式でお答えします。

<A教諭>
私も、給食費の集金や督促などに、毎年多くの時間を取られてきました。この相談者の悩みは人ごとではありません。

<B弁護士>
なるほど。
文部科学省は、数年に1度、学校給食費の徴収状況を調査してきました。2016年度の調査結果(2018年7月に報告)を見ると、学校給食費の徴収・管理業務を主に学校が行っていることや、未納の保護者への督促を行っている者は、学級担任 46.0%、副校長・教頭 41.0%であったことがわかります。

平成28年度の「学校給食費の徴収状況」の調査結果について」(2018.7.27文科省)

でも、学校給食費の徴収や取立ては、本来は学校や教職員の業務ではないですし、特に、本事例のように、困ったタイプの保護者に教職員が対応することは、時間的にも精神的にも負担が大きいですよね。

<A>
そのとおりです。その分を、授業の準備や生徒と向き合うための時間に充てられたらどんなにいいか・・・

<B>
そうですよね。ところで、教員の業務負担の軽減等を目的として、2019年7月に「学校給食費徴収・管理に関するガイドライン」が作成されたことは、ご存じですか。

<A>
いいえ、知りませんでした。

<B>
このガイドラインは、その年の1月に中央教育審議会でまとめられた答申で、学校における働き方改革の具体的な方策の1つとして、「学校給食費については公会計化及び地方公共団体による徴収を基本とすべき」とされたことを受け、作成されたものです。
ガイドラインには、地方公共団体における学校給食費の公会計化(学校給食費を地方公共団体の会計に組み入れること)を促進することや、保護者からの学校給食費の徴収・管理業務を、学校や教員ではなく、地方公共団体の業務として行うべきこと及びその方法等(口座振替での納付、コンビニエンスストア等への徴収委託、etc)が記載されています。詳しくは読んでみてくださいね。

学校給食費徴収・管理に関するガイドライン

<A>
はい!でも、ガイドラインが出ても、うちの学校では何も変わっていないのですが。

<B>
そうですね。2021年11月に、文部科学省が各都道府県・指定都市の教育委員会等に宛てた「事務連絡」によると、学校給食費の公会計化等が実現している自治体はわずか26.0%に過ぎないことがわかりました。これを見る限り、残念ながら、学校から地方公共団体への移管はあまり進んでいないようです。

学校給食費等の徴収に関する公会計化等の促進について

そのようなことから、「事務連絡」は教育委員会等に対し、「学校給食費の公会計化等の推進に一層取り組んでいただくようお願い」しています。
なお、教育扶助として支出される学校給食費等について、徴収・ 管理を行う地方公共団体等に代理納付できるようになりましたので、それに伴い、ガイドラインも改正されました。

<A>
では、相談者に対する回答はどうなるでしょう。

<B>
対処法としては、学校が保護者を説得して取立て等をするのではなく、学校から教育委員会に、学校給食費の公会計化等を働きかけることになりますね。まずは、教育委員会に相談しましょう。

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