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東日本大震災・東電福島第一原発事故から7年 被災地からの報告③【福島】

2018/03/13

写真 戻れなくなった福島県教組双葉支部(双葉教育会館)右側道路の向こうは期間困難区域 バリケードで立ち入りができないようにされている  

写真 二本松市の旧下川崎小学校校舎(廃校)に臨時移転している浪江小・津島小 当面この臨時移転校舎は存続しますが、子どもがいなくなった時点で休校・廃校となることでしょう。浪江町には、浪江東中学校校舎を改修して、18年4月より「なみえ創生小・中学校」が新設される

福島8回目の春 被災地の学校・子どもたちの現状

福島県教職員組合

原発災害から8回目の春を迎えました。昨年春に「帰還困難区域」を除く多くの地域の避難指示が解除されました。それに伴って自治体の復旧・復興作業が進められています。また、学校も復帰の準備が進められてきました。この春に、5町村の学校が地元で再開します。「学校」という「機関」は戻っても、「教育の機能」の復帰はきわめて厳しい状況にあります。まずは、子どもたちが戻るのかということです。

1.「避難指示解除」に伴う自治体の復興と学校の帰還
福島県の避難者数は50,566人(県外34,095人)(2018年2月13日時点 復興庁)、18歳未満の子どもの避難者数は18,054人(県外7,974人)(2017年10月1日時点 福島県こども・青少年政策課)となっています。避難指示が解除されても、住民はすぐに帰還できるわけではありません。昨年4月に避難指示解除が行われた被災自治体の帰還住民の居住率は2割弱で約半数を高齢者が占めています。子育て世代の住民帰還が進まない中では、子どもたちの帰還も進みません。
2017年4月には、南相馬市小高区の4小学校と1中学校が帰還しました。4つの小学校は小高小学校の校舎にまとまって帰還し、それぞれ独立した小学校となっています。実際には合同での教育活動が行われています。楢葉町の2小学校と1中学校も帰還しました。3校は、楢葉中学校の校舎に入っています。ここも、それぞれ独立した小学校・中学校となっています。
この2つの地区の学校帰還に共通することは、ほとんどの子どもたちが、避難先から、スクールバスで通学しているということです。学校が戻っても、子どもたちが地元に戻って来たのではありません。さらに、それまでの臨時移転校に通っていた子どもの一部が、避難先から遠くなり、通学が不可能となって、近くの学校に転校しなければならなくなったということです。そのため、前年度よりも、人数が減ってのスタートとなりました。
毎日新聞社は、18年4月に地元で再開する飯舘村、浪江町、葛尾村、富岡町の4町村の子どもの帰還状況を報道しています。(2018年2月28日付)報道によれば、4月からの地元通学は4%にとどまるということです。17年度4月に帰還した小高地区および楢葉町の学校と同様に、地元に戻った学校に通う子どもたちの多くは、スクールバス等で避難先から通う子どもがほとんどで、地元自治体に住むのはごくわずかです。これまでの臨時移転校への通学よりも時間がかかる子どもも増え、通学の負担がより大きくなります。一方で、通学が不可能となり、避難先の学校へ転校(学区外通学として)する子どももいます。どの学校も今年度よりも子どもの数が減る中でのスタートとなります。

2.18年4月に地元で再開する学校の特徴
子どもたちの戻らない自治体の将来は展望が開けません。学校が元に戻って再開しても、戻る子どもが少ない中では、小学校・中学校それぞれ単独の校舎での学校再開とはなりません。一つの校舎にまとまって入ることになります。
それぞれの自治体は、再開の明るい話題として、「少人数でのきめ細かな教育」「小中一貫の教育システム」などと、特色のある学校づくりを打ち出しています。

※浪江町は、全町一学区新設校として、「なみえ創生小・中学校」を新設校として再開します。
・当面、浪江小・津島小・浪江中は、避難先の二本松市の臨時移転校で授業が継続して行われます。
・18年度は、離れた2つの学校で授業が行われます。教職員数は、二つの学校に別れ、それぞれの学校の配置数が減ります。中学校で  は、教科の関係で、週の何日かは臨時移転校で勤務し、何日かは、新設校での勤務となります。学校では、18年度の時間割編成をどうやったらよいかなど、新たな問題に頭を抱えています。
・現在も臨時休業が続いている小学校4校と中学校2校は、当面臨時休業が継続します。(臨時休業中は教職員が配置され、「兼務」として 他の学校での勤務を行っています)今後廃校となれば、教職員の「兼務」が解かれ、人事異動が行われることとなります。それによって、様々な問題が新たに生じることが予想されます。
※富岡町は、富岡一中の校舎に「富岡小中学校富岡校」が開設されます。現在の避難先の臨時移転校は、「富岡小中三春校」として2021年度末まで継続されます。
※大熊町は、大部分が、まだ避難指示が解除されていませんが、今後、2022年度を目途に幼少中一貫校を新たに新築する方針が示されています。そこに向けて、2019年度をめどに大野小・熊町小を統合する方針も示されています。
※双葉町も、大部分が、まだ避難指示が解除されていません。現在、小学校2校と中学校1校がいわき市内の臨時移転校で授業を行っています。地元での学校再開につては、現段階では未定となっています。

3.被災地の高校の状況
原発震災前、相馬・双葉郡内には8校の県立高校がありました。2016年度までは、県内外にサテライト校を設置し、授業を行っていましたが、今年度(17年度)より、5校が休校となりました。南相馬市にある小高商業と小高工業は今年度(17年度)に統合し、小高産業技術高校としてスタートしました。飯舘村にあった相馬農業高校飯舘校は、現在も福島市内の県立の農業高校でサテライト校を開設していますが、次年度(18年度)からは生徒募集を停止します。その後は、飯舘村に村立高校としての継続が検討されています。
2015年に、現在休校となった5校の伝統を受け継ぐ形で、「ふたば未来学園高等学校」が開校しました。この学校は、中高一貫校として開設され、現在は、双葉郡内の中学校11校(2校は臨時休業中)と入試などで協力する「連携型」一貫校となっています。しかし、17年度の入試では、定数内不合格者が出ました。地元高校の受け皿のはずが、定数内不合格が出たことに中学校の教職員は大きなショックを受けました。「ふたば未来学園」は、「ふたば未来学園中」(仮称)を2019年度に開設し、全県一区の県立中高一貫校としてスタートすることとなっています。新設中学校の定員は60人で、県内一円を学区とする一般選抜と、全国が対象のスポーツ選抜を行う方針です。一般選抜には双葉8町村を対象とする「双葉郡枠」を設けるとされています。教育の内容としては、「グローバル教育」「主体的・対話的で深い学び」「シチズンシップ教育」を3本柱とした「未来創造学」を実践するとしています。
双葉郡内の中学校に通う子どもたちにとって、安心して学べる環境がまだまだ不十分なうえ、将来への第一歩となる高校入試は厳しい選択となってきます。

4.教職員の勤務環境の改善が必要
各自治体の復旧・復興作業にあたる自治体職員及び労働者の多くは、避難先から遠距離通勤をしています。
地元の学校への復帰は、教職員の通勤にきわめて重大な変更をもたらします。臨時移転校への勤務は、繰り返しの人事交渉の成果もあって、多少無理をしてでも通勤が可能でした。しかし、臨時移転校が地元に戻ることによって、通勤が不可能になる教職員が出てしまいます。被災地には、教職員が住む住宅の確保もできない状況です。教員住宅があっても、やっと生活基盤が安定してきたときに、単身赴任を選択することは簡単ではありません。昨年度は、学校の復帰を控え、通勤困難となる教職員からの異動希望が多く出ました。しかし、被災地への勤務を希望する人も少なく、異動でいない状態が出ていました。今年度は、昨年度から引き続く人事課題の解決も含めて人事交渉を進め、一定の困難回避を行うことができましたが、この問題は今後も続きます。
さらに、現在臨時休業となっている学校が、休校、または廃校となった場合、それらの学校に所属する教職員の「兼務」が解除されます。その時には、また別の人事課題が出てきます。福島県教組は、その課題について今から対策を進めています。

5.被災地以外にも課題が残る教育現場
(1) 福島県内の子どもの生活圏の多くは、空間線量が0.23μSv/h(年間1mSv)を下回っています。近くにある「どんぐり」からも、放射線はほぼ検出されなくなりました。しかし、ホットスポット(一部の部分に放射性物質が溜まっているところ)はまだあります。屋外での遊びや活動の規制はなくなっていますが、子どもたちの健康に異変も起きているようです。
文部科学省が昨年12月に公表した17年度の学校保健統計調査(速報値)によると、原発事故の時点で小学校へ入学していなかった11歳以下の子どもたちに肥満傾向が強まっているということです。原発事故後に放射線の影響を避けるために、学校や幼稚園、保育所が屋外活動や外遊びを制限したり、家庭・地域でも自粛をしていました。幼児期に屋内で過ごすことが多かった子どもたちが、外遊びの楽しさを知らなかったり、体を動かす習慣が身につかなかったことが影響を示している可能性があるとの指摘もされています。
学校給食の食材検査は、かなり簡略化したところもありますが、今も続いています。食材についても、福島県産が使用される学校も多く、地産地消も原発事故前と同時くらいに行われてきています。「コープふくしま」が行った、県内の家庭の食事に含まれる放射性物質を測定した2017年度の調査結果では、4年連続して調査対象の全世帯で検出下限値未満となっています。今後も、安全性を確認するため検査を続けていく必要があります。
(2) 福島県での子どもの生活圏内の面的除染はほぼ終了しています。しかし学校や公園などの除染廃棄物も、校庭や施設の敷地内に埋められたり、フレコンバッグに入れて敷地内に保管されたままです。さらに、子どもたちが毎日生活している家庭でも、いまだに除染廃棄物が庭に埋められているか、シートをかけて敷地内に保管されているところも多くあります。中間貯蔵施設への運搬も徐々に行われていますが、各市町村では、中間貯蔵施設に運び出すために一時集積する仮置き場も十分に設置できていません。
最近、ある学校の校庭に、フレコンバッグが山済みされているという情報が入りました。福島県教組は、「子どもたちが遊び、活動する校庭を仮置き場にすることは問題である」として、県教委を通して即時撤去を求めました。その結果、家庭等の除染廃棄物の仮置きをするのに広い敷地が必要で、その仮置き場を学校の校庭に指定したことがわかりました。また、管轄が震災復興関連の部署で、教育委員会に相談もなく方針化され、一時仮置きが行われたということです。当該市では、大量の除染廃棄物を簡単に他に移すことができず、当面仮置きがされることとなります。即時撤去を求める一方、他の地域でも、子どもたちの生活の場に除染廃棄物を持ち込まないように強く要請しています。

県内の学校の校庭に一時保管されている除染廃棄物の撤去・移動が、18年度から本格化する方針が示されました。除染廃棄物が学校の敷地からなくなるのは好ましいことですが、どの時点で撤去作業が行われるかが問題です。どの学校も、夏休みなど子どものいない時期に撤去することを希望していますが、学校数も多く、夏休みに作業ができるのはわずかな学校です。「授業日に行うとなれば、校庭が使えず、体育の授業や部活動ができない。」「大型の機械や運搬車の出入りが激しく、子どもの安全確保に注意が必要。」「放射性物質が含まれる可能性のある粉塵や砂ぼこりの対策をどうするか。窓を閉め切りにしておくしかない。夏場だと大変だ。」・・・など様々な問題も出てきます。

こういった様々な課題を抱えながら、8年目の春を迎えます。
福島原発事故の影響はまだまだ残っています。そしてこれからも続きます。全国の皆さんに福島の現状を知っていただき、みんなで、原発のない社会、二度とこのような原発災害が起こらない社会を求めていきたいと思います。

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