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教育の民営化、商業化に反対する国際キャンペーン

2018/10/24

写真 SDG4「インクルーシブかつ無償で質の高い教育を万人に保障する」

写真 「教育市場」が拡大し公教育が危機に

写真 EIは世界的なとりくみを展開

写真 キャンペーンをけん引するEIのガブリエラトスさん

日本教職員組合は、国際的な教職員組合の連合体である教育インターナショナル(EI)に日本で唯一加盟しています。

EIでは、設立当時から「万人に質の高い教育を」という目標を掲げて運動しています。「持続可能な開発目標(SDGs)」が議論される過程においては、EIは教育を単独目標として設定させる運動を国連、各国政府に対してとりくみ、成功しました。その結果、SDG4として「インクルーシブかつ無償で質の高い教育を万人に保障する」が含まれることになりました。SDGsは日本を含む各国政府が賛成し、2015年9月の国連サミットにおいて採択されました。

これを受け、EIでは目標を達成するとりくみを強化しています。そのひとつに「教育の民営化・商業化に反対するグローバル・レスポンス」キャンペーンがあります。途上国においては公教育を教育産業に任せる事態が起きており、また、先進国においても、すべてを否定するわけではありませんが、ICT教育、学力テストなどにおいて教育産業が「公教育市場」に参入しています。一方で、教職員の長時間労働や、子どもの貧困など早急に解決すべき課題に対し予算が不十分です。日本でも全国学力・学習状況調査に約60億円、ICT教育に約3億円が使われています。さらに、大学入学共通テストの英語試験等にも教育産業が参入することが予測されます。

こういった状況をふまえ、9月14日にEIのA・ガブリエラトス プロジェクト・コーディネーターを招き、教育の民営化、商業化に反対する国際キャンペーンに関して講演していただきました。以下は、講演の概要です。

公教育より私学の教育のほうがよい、公教育に支出する予算はない、官民連携は教育にとって効果的な方法だ、等がいわれ、各国で教育の民営化が進められている。実際、世界的な教育市場は2015年の4兆9000億ドルから2020年には6兆3000億ドルに拡大する見込みである。世界銀行は「私立学校が公立学校よりも良い学習効果をもたらすという一貫したエビデンスはない」と認めているものの、教育の民営化を進める世界的な企業を支援している。しかしながら、安価な授業料で質の良い教育を、とする民営化ではあるが、実際は貧困層にとって負担が大きく、また、マニュアルを使用した授業など質にも問題がある。

これに対し、EIではネパール、フィリピン、ウガンダ、ケニア、アルゼンチン、ペルーなどにおいて民営化の実態を研究し、それに対抗する運動にとりくんできた。ウガンダでは、教育の民営化を進めるブリッジ・インターナショナルが運営する学校について問題点を指摘し、ついには同63校の閉鎖を裁判所が決定するなど一定の成功をおさめている。これからも同キャンペーンを継続し、教育の民営化、商業化に対抗し、すべての子どもに質の高い無償の教育を保障するとりくみをすすめていく。

日本教職員組合はEIとともに教育の民営化、商業化に対してとりくみ、国際的な課題と連動して国内のとりくみを強化していきます。

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