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学校現場の働き方改革に関する意識調査

2018/12/10

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中教審特別部会では現在、学校での働き方改革について議論が進んでいます。すでに2017年12月には「中間まとめ」が出され、文科省は「緊急対策」を公表しました。また、2018年3月にはスポーツ庁から「運動部活動に在り方に関するガイドライン」が出されました。こうした中、各都道府県でも学校における教職員の長時間労働是正に向けた方針等が示され、また、ICTによる勤務時間管理や夏休みの閉庁日設定などが行われました。それでは、このような動きや取り組みは、教職員の業務負担の軽減や、勤務時間、仕事時間の削減にどの程度寄与しているのでしょうか。日本教職員組合は、教職員の勤務状況の改善のために、学校現場の実態と、今後、とりくむべき課題の把握を目的に、本調査を実施しました。2018年7~9月にかけてWeb調査という形式で実施し、11,125人から回答を得ることができました。調査に回答、協力いただいた皆様に改めてお礼を申し上げます。

調査結果から、教職員は、何よりも教職員の増員、加配といった抜本的な対策なしには長時間労働の是正は実現しないということを考えていることがわかりました。
・文科省と教育委員会による業務削減
・定数改善、必要な教職員数の確保
・教職員の実労働時間を正確に捕捉し、それに抑制をかけるための勤務時間法制の整備(給特法の廃止もしくは一部削除)
教職員の働き方改革をすすめるため、日本教職員組合はこの3つの柱のベストミックスを求めていきます。

【調査の結果概要】
第1章 教職員の労働時間の実態
本章では、教職員の学校での勤務時間と、持ち帰り業務といえる自宅での仕事時間の実態について確認するとともに、教職員における働き方改革が注目される中において、教職員の勤務及び仕事時間がどのように減少したのかをみていくことにする。

1.教職員の労働時間:教職員の労働時間を2018年1学期における通常の1週間に限定して、学校内の勤務時間と自宅での仕事時間に分けて、勤務日(月~金)と週休日(土・日)について質問した。

(1)勤務日における1日平均の労働時間

①学校内の勤務時間
・ほぼ全員が時間外労働に従事(平均勤務時間は11時間1分)
・4割弱の人が1日4時間以上の時間外労働(<12時間以上>37.5%)
・勤務時間の最も長い中学校と運動部顧問、半数以上が学校内で<12時間以上>勤務

②自宅での仕事時間
・勤務日に自宅で仕事をしている人が約3分の2、平均仕事時間は49分
・学校内勤務時間と自宅仕事時間とを合わせると、勤務日に12時間近い労働時間(11時間50分)
・自宅で仕事をしている人が最も多い小学校(69.5%、平均52分)

(2)週休日における1日平均の労働時間

①学校内の勤務時間
・6割弱の教職員が週休日に出勤、平均勤務時間は1日2時間5分
・勤務日と同様に、週休日も勤務時間の長い中学校と運動部顧問、8割以上の人が出勤しており、1日の平均出勤時間は両者とも4時間近い

②自宅での仕事時間
・週休日に自宅で仕事をしている人が6割弱
・平均の仕事時間は勤務日の49分を27分上回る1時間16分
・自宅で仕事をしている人が最も多い小学校(66.4%、平均1時間23分)

2.昨年と比べた労働時間の変化

教職員の働き方改革が注目される中、次章でみるように、学校では教職員の勤務時間や仕事に対し様々な取り組みが行われた。それでは教職員の労働時間は昨年と比べ短くなったのだろうか。労働時間の変化について教職員に質問した。

(1)勤務日
・学校内の勤務時間も、自宅での仕事時間も「変わらなかった」が過半数
・逆に、学校内の勤務時間では<減少>どころか<増加した>人が3割弱を占める

(2)週休日における1日平均の労働時間
・週休日における学校内の勤務時間も「変わらなかった」が6割強、自宅での仕事時間も「変わらなかった」が7割
・<減少した>は学校内の勤務時間、自宅での仕事時間の双方とも1割台

第2章 教職員の勤務の把握状況と取り組み:本章では、学校管理職による教職員の勤務の把握状況を明らかにし、同時に、教職員の長時間労働是正のための取り組みについてみていくことにする。

1.管理職による教職員の勤務の把握状況
・「把握している」(65.9%)が「把握していない」(9.6%)を大幅に上回るものの、2割強を占める「把握しているかどうかわからない」(22.7%)

2.長時間労働是正のために勤務時間や仕事について学校で行なわれたこと
・長時間労働是正のための最優先課題である「教職員の増員や加配」はわずか8.3%
・優先して行われた出退勤時刻及び勤務時間の把握、「出・退勤時刻の把握」が60.6%、「土・日の勤務時間の把握」が27.7%

3.教職員の長時間労働是正のために管理職が行ったことへの評価
・管理職への評価は、<よくやっている>と<やっていない>で二分

4.勤務時間削減のために教職員が行っていること
・何も行っていない」人が15.3%みられる中、トップは「退勤時間を早める」(35.2%)
・しかし、「退勤時間を早めて仕事を自宅に持ち帰る」も16.8%と多い点に注意
・「土・日や祝日出勤を減らす」(21.0%)が多く、土・日・祝日出勤を控える人が増加
・部活動顧問の2割前後が「部活動指導の日数や時間を減らす」に取り組む

第3章 夏季休業中の業務負担:教職員の休暇取得の促進を図るために、文部科学省から夏休みなどにおける学校閉庁日の設置が求められている。その背景には、夏休みなど長期休業期間中にも、研修や部活動指導のため休暇を自由に取得できない業務環境にあることがある。
本章では、最初に夏季休業中の学校閉庁日の設置状況と連続休暇日数の実態、そして、休暇の取得状況を明らかにするとともに、夏季休業中の業務負担軽減の見通しと今後の取り組み課題についてみていくことにする。

1.夏季休業中の学校閉庁日
・学校閉庁日の「ある」人が約9割、しかし半数にとどまる高等学校
・閉庁日数は「3日」が6割強、特に、高等学校、特別支援学校では8割以上
・閉庁日が「5日」だった人は1割弱

2.夏季休業中に取得できる連続休暇日数
・「5日~9日」が65.8%で最も多い一方、「1日~4日」にとどまる人も16.5%
・「10日」取得できる人はわずか8.6%
・連続休暇日数の平均は6.1日
・小学校(6.4日)と特別支援学校(6.6日)が6日台、中学校(5.5日)と高等学校(5.4日)は5日台

3.夏季休業における計画通りの休暇取得の見通し
・夏季休業中の休暇取得の見通しは圧倒的多数の人が肯定的、9割近くが計画通りに<取得できる>(86.8%)
・部活動顧問でも<取得できる>が8割台

4.昨年と比べた夏季休業中の業務負担の変化
・業務負担の削減につながらない休暇取得、「変わらない」(61.8%)が6割強
・軽減されない夏期休業中の業務負担、「減少」(15.2%)を上回る「増加」(21.9%)

5.教職員の業務負担軽減のために、削減または簡素化など見直すべき業務
・「研修・研究会」(47.5%)を筆頭に、「出張」、「調査・報告」、「会議」が上位
・部活動顧問で多い「部活動指導」(6割強)と「大会や学外行事への引率」(3割前後)
・見直すべき業務として、小学校は「プールでの水泳指導」、中学校、高等学校は「部活動指導」(6割強)、「大会や学外行事への引率」(3割強)、高等学校は「補習授業」(25.3%)と「進学・進路に関する業務」(19.1%)

第4章 長時間労働の是正と部活動指導
学校運動部の活動時間や休養日の適正化のため、スポーツ庁から2018年3月、「運動部活動に在り方に関するガイドライン」が出された。本章では、こうした動きを踏まえて、教職員の長時間労働の大きな要因といわれる部活動指導改善に対する取り組みの現状と、今後の教員の指導のあり方についてみていく。

1.教職員の長時間労働是正と部活動指導への取り組み

(1)長時間労働是正のために部活動指導において実施したこと
・2割強で「特に何も行われなかった」、部活動の顧問では運動部顧問(19.9%)より文化部顧問(24.7%)で多い
・最優先に実施したことは勤務日及び土・日曜日・祝日における部活動日の削減、上位2項目は「ノー部活動デーの実施や拡大」(38.8%)と「土・日や祝日における部活動の制限」(35.0%)

(2)部活動指導において今後、実施すべきこと
・最優先に実施すべきことは、実施したことと同様に、部活動日の削減、上位2項目は「土・日や祝日における部活動の制限」(45.7%)と「ノー部活動デーの実施や拡大」(39.3%)
・早朝、放課後の活動制限への希望、実施率を上回った「朝練習の制限や禁止」と「放課後の部活動時間の短縮」(2割強)
・指導者の見直しを希望する人が多い、「部活動指導員等の配置」が36.5%、「指導教員の複数選出」も24.5%

2.今後の部活動における教員の役割
・約3分の1にとどまる教員中心の指導を希望する人、「教員が引き続き指導する」は10.5%と少数で、「地域活動経験者が協力」も25.2%
・これに対し教員中心の指導から、スポーツ・文化クラブや地域の活動経験者の指導への移行を支持する人が半数強、特に多い「地域のスポーツや文化クラブに移行する」(41.5%)

3.昨年と比べた部活動指導従事時間の変化
・3割弱の人が<減少した>ものの、<増加した>人も2割強と多い
・運動部で多い指導時間の減少した顧問、<減少した>は文化部顧問の21.4%に対し運動部顧問が29.7%

第5章 学校における働き方改革への評価と今後の課題:本章では、長時間労働是正に対する働き方改革への期待と、今後取り組むべき課題についてみていくことにする。

1.学校における働き方改革による教職員の長時間労働是正への期待
・学校における働き方改革を評価しない教職員が大多数、<期待できない>が約4分の3
・特に多い高等学校、<期待できない>が8割弱

2.教職員の多忙化解消のために必要な取り組み
・実現すべき最優先課題が「教職員の定数増」(83.5%)
・これに続く「持ち時間の削減」「少人数学級の推進」、「校務分掌」「学校事務」の負担軽減

調査報告書の全文は1812(第2版)調査報告:日教組「学校現場の働き方改革に関する意識調査」

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