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2021年度教育予算拡充に関する要請書を文科省へ提出

2020/07/03

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2020年7月3日

文部科学大臣
萩生田 光一 様

日本教職員組合
中央執行委員長 清水 秀行

2021年度 教育予算拡充に関する要請書

 日頃より、教育の発展にご尽力されていることに対し敬意を表します。
新型コロナウィルス感染症対策として3月には全国で一斉臨時休業の要請が行われました。また、4月以降も、再開する学校、休業が延長された学校、再休業に入る学校などがあり、学校現場では学びの保障や心のケア、感染症対策など教職員が不断の努力を続けています。今後は、感染症防止の観点からの「新しい生活様式」における学校教育が求められており、来年度以降も人的配置を含めた大幅な教育予算の拡充が必要です。
学校現場では、新学習指導要領への対応だけでなく、貧困・いじめ・不登校など解決すべき課題が山積しており、子どもたちのゆたかな学びを実現するための教材研究や授業準備の時間を十分に確保することが困難な状況となっています。ゆたかな学びの実現のためには教職員定数改善などの施策が最重要課題です。また、学校現場においては、長時間労働是正にむけて教職員の働き方改革がすすめられていますが、中でも教職員定数改善は欠かせません。
改正給特法によって「公立学校の勤務時間の上限に関するガイドライン」が文科大臣告示(指針)として法的に位置づけられ4月1日より施行されています。法令のもと「勤務時間」管理体制が整備されたことは一定の前進ですが、現場では、働き方改革が実感できる状況にまでは至っていません。TALIS調査においても日本の教員の1週間あたりの勤務時間は参加国中で最長であることが明らかとなっており、学校における働き方改革推進のためには、持ち時数軽減のための大幅加配や専科教員のさらなる配置拡大等の実効ある施策が必要です。
2021年度教育予算において、次の事項の実現をはかるよう要請いたします。

1. 全国的教育水準の確保に不可欠な義務教育費国庫負担制度の国負担率2分の1への復元を行うこと。

2. 子どもたちのゆたかな学びの実現にむけ政府全体で第8次教職員定数改善計画を策定して、以下の教職員定数改善を行うこと。
(1)基礎定数の改善
① 感染症対策ときめ細かな教育を実現する観点から20人以下学級にむけた計画的な少人数学級の実施
② 小学校外国語専科教員の全校配置など、小学校高学年の教科担任制のための教員配置改善
③ 学校の働き方改革推進にむけ、当面は小学校では20時間、中学校では18時間など持ち授業時数軽減をはかるための教員配置改善
(2)加配による定数改善
① 子どもの健康課題の多様化や保健室利用者増大に対応するために、養護教員の小学校複数配置基準を中学校同様の801人以上とするための加配措置
② 栄養教諭・学校栄養職員の定数配置基準を児童生徒数から学級数に変更及び大型学校給食センターの定数配置基準を改善するための加配措置
③ 中学校区ごとの事務職員加配及び省令事務長へのマネジメント加配の新設
(3)高等学校の定数改善
① 感染症対策ときめ細かな教育を実現する観点から30人以下学級を実現するための段階的な少人数学級の実施及び定時制における20人以下学級の実現
② 通級指導を実施するすべての高等学校への複数の教員加配
③ 事務長の基礎定数化
(4)法令・基準の改正
① 養護教諭、事務職員、栄養教諭・学校栄養職員の必置及び学校現業職員を位置づける学校教育法等の改正
② 「幼保連携型認定こども園の学級の編制、職員、設備及び運営に関する基準」をふまえた1学級の幼児数となるよう、幼稚園設置基準の見直し

3.感染症対策の観点から、少なくとも今年度補正予算で措置された人員については、来年度以降も継続して配置すること。

4.中教審答申の趣旨・事務次官通知を徹底し、学校現場における働き方改革等にむけ、必要な予算を確保すること。
(1)スクール・カウンセラー、スクール・ソーシャルワーカー、学習指導員、スクール・サポート・スタッフ、部活動指導員、ICT支援員、学校司書、特別支援教育支援員、看護師、介護職員などの配置拡充・処遇改善を行うこと。

5.国による教育予算の確保を行うこと。
(1)感染症対策の観点から、すべての学校における施設整備
(2)高校授業料について、国際人権A規約の趣旨をふまえ無償制に復元すること。当面は、就学支援制度の拡充、奨学のための給付金の増額をすること。また、大学授業料の軽減と授業料免除対象者の拡大と大学生に対する給付型奨学金の拡充等を行うこと。
(3)国立大学法人運営費交付金の増額と教育・研究の自由が確保される公平・公正な配分、ゆたかな私学教育のための私学助成を拡充すること。
(4)東日本大震災の「被災児童生徒就学支援等事業」について、引き続き全額国庫負担による支援及び義務教育以外の事業継続をはかること。また、熊本地震等の災害等の理由により就学・修学が困難な子ども対象の「被災児童生徒就学支援等事業」について引き続き継続すること。
(5)教職員の勤務実態と職務の複雑、困難及び責任の度の高まりに即した給与改善のための予算措置を行うこと。
(6)教職員の退職手当に係る調整額区分の適用改善をはかること。
(7)障害のある教職員対して合理的配慮が保障されるよう、施設・設備の改善充実をはじめ必要な予算措置を行うこと。
(8)学校給食衛生管理の基準を遵守するため、給食調理場の空調設備などの改善充実並びに人員配置のための予算措置を行うこと。
(9)定時制・通信制高校における就職支援員や日本語指導員などの人員配置を講ずること。

以上

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