談話

2016年度 文科省「全国学力・学習状況調査」の結果公表に対する書記長談話

2016年09月29日

2016年度 文科省「全国学力・学習状況調査」の結果公表に対する書記長談話

 2016年9月29日

 日本教職員組合書記長 清水 秀行

本日、文科省は、2016年度「全国学力・学習状況調査」(4月19日実施)に関する調査結果および分析データを公表した。今年度も「都道府県別の平均正答数・正答率(公立)」が公表されたことにより、子どもを置き去りにしたまま、順位の変動についてのみ一喜一憂する論議が行われることを強く懸念する。

文科省は、「都道府県の状況(公立)」について「引き続き、下位県の成績が全国平均に近づく状況が見られ、学力の底上げが図られている」「都道府県単位では、学力面において、ほとんど差が見られない」と分析している。この結果は、昨年度と同傾向であり、あえて毎年悉皆調査を行う必要性はすでに失われている。

今年4月、馳文科大臣が記者会見において「成績を上げるために2月ごろから生徒に過去の問題を解かせていた地域があった」とし、「学力テストは点数の競争ではなく指導改善につなげるためのもの。本末転倒だ」と発言した。そのことから文科省は、「全国学力・学習状況調査に係る適切な取組の推進について」として、教育委員会に対し過度の競争につながる事前対策を行わないよう通知した。

しかし、日本教職員組合の実態調査では、3、4月の授業内容が事前対策となっていること、県教委等の指示による過去問使用での事前練習が繰り返されていることなどが明らかになっている。また、順位や得点を上げなければならないという強いプレッシャーを感じる教職員の実態や「学習への意欲をなくしていく」「疲れ果ててぐったりしている」「自己肯定感が低くなっていく」等の子どもたちの姿が報告されている。

現在、文科省は、結果公表に関し都道府県別に加えて政令指定都市別についても検討をすすめている。さらなる詳細な結果公表は、学校間の序列化や過度な競争に拍車をかけ、所謂文科省が言う「数値データによる単純な比較が行われ、それを上昇させることが主たる関心事」を一層招くことに繋がることから、断じて認められない。また、今年度から都道府県別の平均正答率の整数値による公表がなされたが、序列化や過度な競争への懸念は払拭できない。

今、子どもたちにとって必要なのは、「平均正答数・正答率」の向上による平均点アップではなく、学ぶ意欲や学びあう人間関係づくりなど、子どもたちが主体となる学びである。

日本教職員組合は、子どもたちのゆたかな学びを保障するために、引き続き悉皆廃止を含む調査の目的・方法・内容等の抜本的見直しを求めてとりくんでいく。また各自治体に対しては、公表された結果の適切な取り扱いとともに、子どもたちのゆたかな学びの保障につながる教育条件整備を強く求める。

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