談話

「2017年度全国学力・学習状況調査」の結果公表に対する書記長談話

日本教職員組合 書記長 清水 秀行
2017年08月28日

本日、文科省は、2017年度「全国学力・学習状況調査」(4月18日実施)に関する調査結果および分析データを公表した。今年度より「都道府県別の平均正答数・正答率(公立)」に加え、政令指定都市別についても公表され、これまで以上に順位の変動に関心が集まり、子どもの実態を抜きにした点数学力の上昇のための論議が加熱することを強く懸念する。また、昨年度から平均正答率の整数値による公表がなされ、今年度からは全ての公表・提供資料を整数値に変更したものの、序列化・過度の競争は全く歯止めになっていない。

昨年4月、文科省は、「全国学力・学習状況調査に係る適切な取組の推進について」として、教委に対し過度の競争につながる事前対策を行わないよう通知した。しかし、日教組の実態調査では、前年度から実施日前日まで継続的に事前対策が行われていること、教委、管理職等の指示による事前対策が繰り返されていること、事前対策が教育過程に影響を及ぼしているなどの実態が明らかになっている。さらに、過度の事前対策などにより「学習への意欲をなくしていく子ども」や「劣等感を抱く子ども」など学びから逃避する子どもの実態が多数報告されている。また、「学力向上」の名目で導入されている独自の学力調査について、文科省は「都道府県で減少」しているとしているが、市町村では独自の学力調査などの実施が報告されている。

文科省は、次期学習指導要領を想定して「主体的・対話的で深い学びの視点による学習指導の改善」について調査しているが、課題として取り上げているものは、日々の授業の中ですでに認識されているものである。さらに、経年変化分析調査の結果についても「全体としては、おおよそ、前回調査時と同様の学力水準を維持している面がうかがえる」と分析しており、すでに悉皆で調査を行う必要性はない。また、部活動と中学校の平均正答率の関係については、科学的な根拠もなく、そもそも部活動の活動時間と学力調査の結果を比較する調査項目そのものが必要ではない。今、文科省がすべきことは、学校現場の多忙化の解消により、子ども・教職員ともにゆとりのある学校をめざすことである。

ゆたかな学びとは、点数や順位に振り回されることなく、学ぶ意欲や学びあう人間関係づくりなど、子どもが主体となる学びである。そのため日教組は、引き続き悉皆廃止を含む調査の目的・方法・内容等の抜本的見直しを求めてとりくんでいく。また各自治体に対しては、公表された結果の適切な取り扱いとともに、子どもたちのゆたかな学びの保障につながる教育条件整備を強く求める。

以上

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