談話

東京朝鮮中高級学校・大阪朝鮮学園「無償化」裁判の最高裁決定に対する書記長談話

日本教職員組合 書記長 清水 秀行
2019年09月02日

 8月27日、東京朝鮮中高級学校高等部の卒業生および大阪朝鮮学園が提訴した「無償化」裁判の訴訟で、最高裁第三小法廷(山崎敏充裁判長)は、卒業生らの上告を棄却し、国が朝鮮学校の高校授業料無償化を除外した処分について「適法」とした東京・大阪高裁判決が確定した。今回の最高裁決定は極めて不当であり、断じて容認できない。

 東京・大阪高裁判決は下村博文文部科学大臣(当時)の「『不指定処分』判断に裁量権の逸脱があったとは認められない、在日本朝鮮人総連合会が朝鮮学校の教育内容や人事などに影響を及ぼしている疑いがあるとの理由から学校運営が適正か十分な確証を得られず、指定対象として認められない」とした処分について、「就学支援金が確実に授業料に充てられるか十分な確証が得られず、学校運営が法令に従った適正なものであるか疑いが生じる状況にあり、不合理とは言えない」とし、文部科学大臣の判断に裁量権を認め、「政治的・外交的理由に基づく処分とは言えない」とする不当なものであった。

 今回最高裁は、国家賠償、指定処分取り消し、指定義務づけなど、国側の主張を追認し、何ら理由を述べることなく卒業生らの上告をすべて却下する決定を行った。名古屋・広島・福岡高裁で係属している同種の訴訟に大きな影響を及ぼすことも懸念される。

 そもそも、高校授業料無償化は日本に学ぶすべての子どもたちを対象に創設されたものである。朝鮮学校の子どもたちには、日本で民族教育を受ける権利が保障されなければならず、政治的理由で子どもたちを差別・分断することは、決して許されるものではない。「支援金が適正に管理されない可能性がある」とした国の主張は、それ自体が偏見と差別によるものである。その主張を最高裁が無批判に受け入れ、上告を退ける決定をしたことは、社会的な正義を守るべき司法の判断とは、到底言えない。

 国連社会権規約委員会、国連人種差別撤廃委員会、国連人権委員会等は、日本政府に対し、再三にわたって勧告を行い、「高校無償化制度から朝鮮学校のみを除外していることは差別であり、制度を朝鮮学校にも適用すること」を求めている。このような国際的な見解をもふまえ、司法は判断を行うべきである。

 日教組は、今回の最高裁の決定に強く抗議する。引き続き、すべての子どもに教育の機会を保障するために、平和フォーラム等とともにとりくみをすすめていく。

以上

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