談話

2019年度 文科省「全国学力・学習状況調査」の結果公表に対する書記長談話

日本教職員組合書記長 清水 秀行
2019年07月31日

 本日、文科省は、2019年度「全国学力・学習状況調査(以下、全国学力調査)」(4月18日実施)に関する調査結果および分析データを公表した。文科省は「結果公表の取り扱いについては、様々な機会を通じて各県の担当者に適切な対応をお願いしている」としているが、具体的な手立てが講じられない中、今年度も「都道府県別の平均正答数・正答率」が公表された。新聞等で順位の変動が大きく報道されることにより、競争・序列化に拍車がかけられることが懸念される。

 全国学力調査の目的は平均正答率を上げることではないとされているが、教委や管理職は学力調査の「目標値」を設定し、それにむけたとりくみを学校現場に強いている実態がある。日教組調査(7/31現在)では、事前対策を行っているのは小学校53.4%、中学校28.2%であり、そのうち約80%が4月当初やそれ以前からとりくんでいると回答した。つまり新年度はじめの多くの時間が事前対策に充てられ、学級づくりや子どもの学びにも影響が出ている。また、障害のある子どもを、一律にまたは点数によって対象から外しているという報告もある。順位を上げることが目的化され、学力向上の名のもとに子どもが排除されたり、学校現場の負担が強いられたりすることがあってはならない。

 今年度は中学校で英語調査が行われた。日教組調査では、予備調査で明らかになっていた「他の生徒の声が聞こえる」という問題は解消されないまま実施され、「本当に採点できるのか」と不安がる子どもの声があったと報告された。また、「事前の準備にかかる時間が膨大で、多忙化に拍車をかけている」といった声も多く寄せられた。様々な課題が指摘されているにもかかわらず、すでに3年ごとの実施を決めていることは大きな問題である。

 多忙な中で、教職員は子どもたちの学ぶ意欲を高め、学びあう楽しさを味わわせようと日々努力している。全国学力調査が悉皆で行われることで学校現場に競争的環境をもたらし、子どもたちにストレスを与えていることは明らかであり、調査の抜本的見直しが必要である。今求められるのは、学校の多忙化を解消し、教職員が十分な教育研究や授業準備ができ、子どもたちが主体的に学ぶことができる教育環境を整えることである。

 日教組は、引き続き悉皆調査廃止を含む調査の目的・方法・内容等の抜本的見直しと必要な条件整備を求めてとりくんでいく。また、各自治体に対しては、公表された結果の適切な取り扱いとともに、子どもたちのゆたかな学びの保障につながる教育条件整備を強く求める。

以上

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