談話
広島朝鮮学園「無償化」裁判の広島地裁判決に対する書記長談話
7月19日、広島朝鮮学園、生徒・卒業生が提訴した「無償化」裁判の判決が、広島地裁(小西洋裁判長)で言い渡された。裁判長は、「(高校無償化)除外によっても教育を受ける権利は何ら制限されない」とした。また、国側が主張する、学園と在日本朝鮮人総連合会、朝鮮民主主義人民共和国との密接な関係から、就学支援金が授業料に充当されないのではないかという懸念については、「根拠となる事実が証拠上認められる」とした。国家賠償、指定処分取り消し、指定義務づけなど原告側の請求をすべて却下し、国側の主張を追認する極めて不当な判決である。
10年4月に始まった高校授業料実質無償制は、日朝間の外交問題を理由に、朝鮮学校へ通学する生徒への適用が先送りされていた。文科省は13年2月、省令「改正」を行い、朝鮮学校を対象から除外し、無償化適用を申請していた10校に不指定を通知した。私立高校などで学ぶ生徒に支給される就学支援金は、学校が代理受給する制度であり、どこの学校で学ぶかによって支給の可否が問われるものではない。
外交問題などを理由に朝鮮学校の生徒を無償化の対象から除外することは、すべての子どもに教育の機会を保障した国際人権A規約(13条の1)に反し、日本国憲法第26条、教育基本法の理念に照らしても問題である。適用除外は「全ての意志ある高校生等が、安心して勉学に打ち込める社会をつくる」という制度の趣旨から外れているだけではなく、明らかな差別であり、人権侵害である。
国連社会権規約委員会は13年5月、「締約国の高校教育授業料無償化プログラムから朝鮮学校が除外されていることを懸念する。これは差別である。」とし、「差別の禁止は、教育のあらゆる側面に全面的かつ即時的に適用され、また国際的に定められたすべての差別禁止事由を包含していることを想起しつつ、高校教育授業料無償化プログラムが朝鮮学校に通う子どもたちにも適用されることを確保するよう」日本政府に求めている。また、国連人種差別撤廃委員会は14年8月、総括所見において同様の見解を示している。このような国際的な見解をふまえ、司法は判断を行うべきである。
日教組は、今回の広島地裁判決に強く抗議するとともに、引き続きすべての子どもに教育の機会を保障するために、平和フォーラム等とともにとりくみをすすめていく。
以上