談話

「核兵器禁止条約発効」に対する書記長談話

日本教職員組合書記長 瀧本 司
2020年10月27日

10月24日、核兵器禁止条約(TPNW)を批准した国や地域が条約の発効に必要な50に達し、90日後の21年1月22日に発効することとなった。核兵器廃絶へむけた歴史的節目であり、大きな一歩である。本条約の発効は、非保有国をはじめとする世界の国々から核兵器廃絶を求める強い意思が示された結果として、重く受け止めるべきである。今後は条約の実効性を高めていくことが重要になる。
 核兵器条約は、1996年4月に起草され、17年7月に国連で122カ国・地域の賛成で採択された核兵器の全廃と根絶を目的とする国際条約である。前文において、国際人道法と国際人権法の原則を再確認するとともに、被爆者の苦痛と非人道性を訴え、あらゆる核兵器の開発や実験、生産、保有、使用を許さず、核で威嚇することも禁じている。
 しかし、本条約には米国等核不拡散条約(NPT)が核保有国と定めた5ヶ国が反対し、北大西洋条約機構(NATO)加盟国も批准していない。世界の核兵器の9割以上を米ロが保有する中、中距離核戦力全廃条約(INF)は、本年8月に米国が離脱表明したことで失効し、21年2月に期限切れを迎える新戦略兵器削減条約(新START)も延長されるかどうか予断を許さない状況である。
日本政府は、米国の核の傘に守られている安全保障上の立場から本条約に批准どころか署名もしていない。この間の朝鮮民主主義人民共和国の核実験・ミサイル発射実験、また中国の南シナ海進出など日本をめぐる安全保障の脅威を主張した上で、核抑止力が必要だとしている。本条約の発効が決定した後も「条約は、わが国のアプローチとは異なるものであることから、署名は行わないという考え方に変わりはない」とした。批准した国は条約の発効から1年以内に締約国会議を開き、核兵器廃棄の期限や検証方法等を話し合う。国連は、日本にオブザーバーとして参加することを求めているが、政府は「検討中」としている。ヒロシマ・ナガサキを経験した「唯一の戦争被爆国」の日本は、核兵器廃絶を求める多くの声に背をむけず、本条約に署名、批准すべきである。
 日教組はこれまで原水禁や連合、KAKKINとともに「核兵器廃絶1000万人署名」にとりくみ、長崎において中満泉国連事務次長・軍縮担当上級代表に、823万筆(日教組約43万筆)を超える署名を提出した。このとりくみの成果をもとに日教組は引き続き政府に対し、核兵器保有国と非保有国の間に立って、核兵器廃絶にむけた対話をつくりだす役割や本条約への批准を求めていく。そして、被爆者の思いを受け止め、「非人道的兵器である核兵器の廃絶」という人類共通の目標実現のため、国際社会の一致した行動を求めて幅広い世論喚起等に継続的にとりくんでいく。
                    以上

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